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「好きだから追放する」と、同性の勇者から言われました。ボクは全力で逃げます!  作者: 椎名 富比路
第三章 男の娘ニンジャと、神待ち竜幼女

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シュータとルティア

 ダンセイニ卿なじみのお店で、夕食をごちそうになる。


 夕食後、ボクは卿のお屋敷にあるオフロへ。戦闘の疲れを癒やすため、薬効のある浴場に入らせてもらった。


「ふああああ」


 ここの入浴施設は、冒険者用に作られた特殊な成分が配合されている。エリクサーだけでは回復できない、精神的な疲労も癒せるらしい。そのおかげか、肩がほぐれてきた。


 本当は、もっと敵の情報を集めたりしたほうがいいのだろう。しかし、身体が想像以上に疲れ果てていた。キュアノの持っていたエリクサーでさえ、完全に治癒できなかったレベルである。今日は、おとなしくすることに。


「気持ちいい。それと、私も想像以上に弱っていた」


 隣には、当たり前のようにキュアノがいる。彼女には、羞恥心ってないのかなぁ。


「今日はごめんね。その……」


 ボクは、自分の唇を指で撫でる。


「エリクサーは、また作ればいい」

「そうじゃなくて、飲ませてくれて」


 キスしたことを、咎められるんじゃと思った。


「気にしていない。サヴと、ファーストキスができた」

「え、初めてだったの? だったら、なおさらごめんなさいだよ」

「どうして?」


 お湯を胸でかき分けて、キュアノが迫ってくる。


「なんでって、その。ボクみたいなのと」

「私は、サヴがよかった」


 ボクは、胸がドキリとした。


「サヴは、私が初めてじゃ、嫌だった?」


 ブンブンと、ボクは首を振り回す。


「うれしいよ。だけれど、本当にボクでよかったの?」

「最初も最後も、サヴがいい。サヴと共にいたい」


 こんなに思ってくれるなんて。 


「今日も目一杯、サヴの背中を流す」

「いやいやおかしいでしょ! 自分で流すから!」


 ボクは慌てて、湯船から上がる。


 すると、ルティアと鉢合わせた。バスタオル一枚の姿で、浴室に入ってくるではないか。


「え、ルティア?」


 前かがみになって、ボクは身体を縮めた。


「お、おい、お前、男だったのか?」


 今頃!? 驚くところそこなの!?


 ようやくルティアも、自分の姿に気づいて湯の中へ急ぐ。薬草の色がお湯についていなかったら、ルティアの肢体が丸見えだった。


「おおおおお、お前らヘンタイか!? キュアノと一緒に入っているからてっきり」


 自分の体を抱きしめながら、ボクらを批難する。


「ボクは一人でも入れるんだけれど、キュアノがどうしてもついてくるんだよぉ!」


 いつの間にか、キュアノに背後を取られていた。逃げられない。シャンプーで頭をワシワシと洗われる。


 ボクは、ジッとしているしかない。身体を泡まみれにして、ボクはどうにか身体を隠す。


「こういうわけなんだ」

「大変だな、色々と」


 なぜか、ルティアに同情された。


「ごめんね。なんか迷惑かけちゃって」

「いいって。それより、こっちこそ悪かったな」


 逃げようとせず、ルティアは湯船でくるろぐ。


「え、このままでいいの?」

「お前は異性って気がしない。それに、公私ともにできるパートナーもいるみたいだし」


 なぜか、ルティアは悲しげな顔をした。


『でも、危ないことは、しないでほしいのです。あなたは強いかもしれませんです。ルティアのバスター・ストームに、耐えたくらいですから。しかし、邪竜には』


 ルティアの髪留めが、言葉を話す。よく見ると、シュータが角にくくりつけられていた。


「ボクは、勇者パーティにいたこともあるんだ。負けるもんか」


 その言葉が効いたのか、シュータは少し安心したように思える。


「危険だろうけれど、それはキミたちだって一緒でしょ? 手を貸すよ」

「私も、一緒に戦う。守る優先順位対象は、サヴになるけれど」


 シュータは、『わかりました』と、半ば呆れ気味に言う。


『手を借りましょう、ルティア。ぼくだけじゃどうにもならなかったけれど、この二人がいれば』


 シュータはそう言って励ますが、ルティアは首を振った。


「だからって、お前の身体だって取り戻せるとは限らねえ!」

「えっ、どういう意味!?」


 ボクが聞くと、シュータが代わりに教えてくれた。


『実はぼくの肉体は、アナンターシャとの戦いで消滅してしまったのです』


 アナンターシャの攻撃からルティアを守り、シュータは倒されてしまったらしい。ルティアはシュータが死ぬ間際、魂を竜族の宝である赤い宝石に閉じ込めた。


『アナンターシャはルティアに悪事をさせる代わりに、ぼくの肉体組成をするのを約束しました。ぼくは、信じてはいけないといったのですが』

「しかし、可能性があるなら!」


 シュータは、自虐気味に笑う。


『これでもう、ルティアは悪事をしなくなるです。根は優しい子でした。ぼくは満足なのです。あのまま悪事を繰り返すルティアを見るくらいなら、消えたって構わないと』


 話し方を聞いていると、シュータは本当に感謝しているように思えた。


『でも、今は使い魔にすぎないのです』

「違うって。お前はアタシの……」


 それだけ言って、ルティアは黙り込む。


『あきらめるですよ、ルティア。きっと肉体再生もウソ。ぼくはこれで満足なのです。この状態も、結構気に入っているのですよ』

「シュータ。それじゃあアタシは、なんのために」


 ルティアの瞳には、切なさがにじみ出ていた。

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