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「好きだから追放する」と、同性の勇者から言われました。ボクは全力で逃げます!  作者: 椎名 富比路
第二章 男の娘ニンジャと、はじまりの村

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幕間 報告「勇者たちが、一晩で片付けたから」

 ファウルハーバー王国の第一王女エイダは、愛するホルストと逢瀬にくれる夢を見ている。いよいよ唇が重なり合うというシーンを、ドアのノックオンに阻まれた。


 中年メイドが、若いメイドを数名連れて入室してくる。


 ボサボサの姿など、メイドたちには見せられない。


「支度をするので、出ていなさい」

「ですから、その支度を我々が」

「出なさい!」


 きつい口調でメイドにそう告げて、ドアを閉めさせる。 


「ああもう」


 誰も見ていないのをいいことに、エイダは金髪の髪をかきむしった。ただでさえ、こちらは寝起きが悪いというのに。


 着替えの時間が惜しい。【召し替え・メイクの魔法】で、ナイトドレスから正装へ。寝間着が正装のプリンセスドレスと入れ替わって、ハンガーに掛けられる。乱れた髪もやつれた顔も、バッチリだ。

 ただでさえ常時無気力な自分に活を入れる魔法のため、膨大な魔力を消耗するのが、この魔法の弱点である。


 勇者でも帰ってきた? でも、王と席巻してとっとと帰ってしまったと聞く。どうして、自分は街へ買い物になど出てしまったのだろう? どうしてホルストは、自分の留守を狙って毎回顔を出すのか?


 メイドに聞けば、「自分はプリンセスに嫌われている」と思っているらしい。


 まさか。化粧もしていない自分をキレイだと言ってくれて、王族相手にも物怖じしない性格にエイダは惚れたのである。


 この魔法を習得したのだって、ホルストに寝起きスッピンを見られてしまったからだ。あのときは、完全に油断をしていた。まさか、殿方がロイヤルプリンセスの寝室にまで顔を出すなんて思わなかったから。


「何事ですか?」


 姫用の玉座に座って、兵士に尋ねた。


「王国近辺の村に、魔族が襲来しました!」


 ブランケンハイムの村に、魔族が襲撃に来たという。


「敵兵は、バルログ族一万を自称しております! ただちに出発せねば、我が国への侵攻は免れません!」

「急いで派兵を!」

「ははっ!」


 騎士たちが魔族討伐に向かうそのときだった。


「その必要はないわ」


 一人の人物が、王室に突然現れる。

 これは、瞬間移動の魔法だ。高難易度で、魔族でも扱えるものは少ない。

 

 それを、ただの人間が……彼は人間なのか?


「あなたは、ヴァレンティーヌ・フォン・ブランケンジハイム?」


 その男性の姿を見たとき、エイダは新手の魔物が王城へ侵入したのだと思った。しかし、すぐに彼のことを思い出す。彼は、ブランケンハイム村役場の所長だ。


「ヴァラで結構。こんな夜遅くにごめんなさい。それと、格好も許してね。急いで通達しないと、って思ったから」


 謝罪の言葉はあるが、ヴァラは腰に手を当てている。礼儀正しいのか無礼なのか。


「何をです? ヴァラ所長」

「バルログ族一万の軍勢なら、倒したわ」

「なんですって!?」

「勇者たちが、一晩でやってくれたから」


 バカな。

 たしかに、ホルストの戦力ならバルログ程度など壊滅させられるだろう。

 だが、ホルストの一行は王都を出たと。別大陸へ船で移動中との報告があったばかりだ。すぐに応援の手配をせねばと思っていたのだが。


「引き返してくれたのよ。『魔物の気配がするから』って。バルログ族どもを退治したら、また旅に出ていったわ」


 兵士たちが、ヒソヒソと話し合っている。にわかには信じがたいと。


 一万の軍勢が、一瞬にして消滅したとは。

 詳しく事情を聞かねばなるまい。


 そのために、適当に人払いをせねば。


「ご報告ありがとうございました。疲れたでしょう。お茶などいかがです? 王を交えて、お話がしたいわ」

「ご一緒いたします。姫」


 エイダの側に近衛兵が近づく。


「いいわ。彼はこんな姿ですが、信用できる方です」


 姫の指示ならばと、近衛兵たちは下がった。



 大広間には、お茶が用意されている。王の姿もあった。


「お父様」


 ファウルハーバー王に、エイダはあいさつをする。オネエが娘のすぐ隣にいるというのに、顔色ひとつ変えない。


「早く座りなさい。これ、お茶のおかわりが欲しかったら呼ぶから、席を外しなさい」


 人払いをしてすぐ、王はヴァラに頭を下げる。

 娘からすれば、信じられない光景だった。


「此度の働き感謝する、我が友よ」

「あーらっ、やっぱりバレちゃった?」


 アハハと、王とオネエは二人で笑い合う。


「わかるっつーの。どうせファイアーボール一発でふっ飛ばしたんだろーが?」

「やだぁ。王様には隠しごとができないわっ。アハーッ!」


 まるで夜の店だ。王が、夜の店で語らっている。


 娘なのに、こんなリラックスした父を見たのは初めてだった。


 しかし、それ以上に信じられなかったのは、ヴァラの話である。


「バルログ族って、ファイアーボール程度で死ぬのですか!? 洗剤で死ぬGじゃないんですのよ!?」

「コイツのファイアーボールは、ちょっとした島なら沈められるぜ」


 聞けば、ヴァラはこの村の役員をする前は冒険者で、父の元相棒だったという。魔導に関しては、その辺の魔術学校では太刀打ちできないらしい。


 だが、この話は他言無用と言われた。


 下手に口に出すと、周囲がヴァラを当てにしてしまう。そうなれば、冒険者たちが立ち寄らなくなるからと。


「いっとくけれど、ウチのサミュエルちゃんの方が、アタシよりもっと強いわよ」


 彼が、あのサヴことサミュエルの父親か。


 ホルストの親友で、つい最近仲間から追い出されたと聞いたが。


「あの、サヴ……ご子息が追放された理由というのは聞いても?」

「一身上の都合よ」


 ウインクで、ヴァラがはぐらかした。

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