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「好きだから追放する」と、同性の勇者から言われました。ボクは全力で逃げます!  作者: 椎名 富比路
第二章 男の娘ニンジャと、はじまりの村

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アタシが村役場の所長よ

「ったく、ヒヨッコ共がイキリやがって」


 ギターを肩に担ぎながら、父が吐き捨てる。格好は同じ。だが、いつものオネエ口調をやめている。本気を出したときは、いつもこんなカンジだ。


「あーあ、やっちゃった……」


 ボクは、唖然とする。


「あらサヴちゃん、おかえりなさい」

 

 ボクの顔を確認し、父が元の調子に戻った。


「やっぱり、やられてなんかいなかったわね」


「ただいま。父がまた派手にやらかしたと思って」

「はい。ワタシも実に一〇年ぶりですよ。ヴァラの戦いぶりを見るのは」


 ヘルマさんが、草原に修復魔法をかける。戦場になった土地を元に戻してているのだ。


 まったく訳がわかっていない様子で、キュアノは立ち尽くしている。


「あら、キュアノちゃん。お見苦しいところを見せたわねっ」


 いつものオネエ口調に戻したが、父の言葉にはキレがない。


「一万の軍勢が襲ってくると聞いて、飛んで帰ってきた」

「ああ、あの消し炭のこと?」


 父が指差す方角には、真っ黒な炭が転がっていた。かろうじて、魔族の姿を伺える。


「じゃあ、さっきの爆発は……」

「アタシがやったわ。アタシ、魔法少女なの」


 信じられないといった顔を、キュアノがした。


 呆然とした顔を向けられたので、ボクは首を振って肯定する。


 この男なら、やりかねない。指先一つできのこ雲が生じるほどの特大ファイアーボールで。いつも「村に被害が出るから、やりすぎないように」って注意しているのに。 


「村の人たちは」

「畑に行った」 


 バルログの死骸は父の攻撃魔法によって炭化し、村の肥料として畑に撒かれていた。


「これをすべて、あなたが」

「そのとおりだ。これがアタシたち【役場】の仕事だから」


 ボクは、土下座しているバルログに歩み寄る。


「キミがネームドのバルログ?」 


 首を振りながら、バルログは怯えている。どうも、コイツはさっきのネームととは別の個体らしい。だが、その口元はつり上がっていた。


「まだ終わっちゃいねえ! バルデル様の軍勢は、まだ八〇〇〇ほど残っているぜ! 今度は小出しなんてしねえ! まとめて食らい付くしてやるぜ!」


 ブランケンハイムに、暗雲が立ち込める。

 雲の中央が、赤く輝き出す。どうもあれは、別の世界に通じているようだ。


「空間が裂けて、魔王の軍勢が降下してくる」


 キュアノが、血の色に染まった空を見上げる。


「ギャハハァ! 地獄の門が開いたぜえええええ!」


 別個体のバルログが、新手を率いて空から襲いかかってきた。空間の裂け目を通って。


「あらぁ、また『森のエサ』になりそうな化け物たちが来たわ」


「ささ、作業は中断。みんな家に入ってちょうだい」


 ヘルマさんが先導して、村民を誘導する。


「こいつを見ていてちょうだい、ヘルマ」


 父がギターを、銃でも撃つように構えた。ギターの先を、降下してくる魔物の群れに向ける。

 

「もうひと仕事、あるみたいだから」


 ジャラン、と父が曲を奏でた。


 ギターの先端から、火球が発射される。その大きさは、まるで彗星のような。


「ぎゃああああ!」


 およそ二〇〇〇体のモンスターが、父のファイアーボール一発で消し炭になった。先頭にいたバルログ族も巻き込んで。

  

 父は引き続き灼熱のギター演奏を行う。今度は、ギターからは散弾のような火球が連続で射出されていく。


 降下が完了した魔物たちも、父の曲に合わせたファイアーボール連撃でハチの巣に。反撃の機会すらもらえず。

 

 ボクも、負けていられない。

 魔物たちが村を襲う暇さえ与えず、クナイでモンスターの頭部を打ち抜き続ける。


 ゴブリンが、キュアノに矢を放つ。


 父の戦いぶりに見とれて、キュアノは放心状態になっていた。


「キュアノ!」

「ん? あっ、そっか」


 敵の矢が接近してきて、ようやくキュアノも我に返った。矢を鞘で弾き、ゴブリンに切り込んだ。

 息を吹き返したキュアノは、サーベルで魔物たちを切り刻んていく。キメラを合成した動物ごとに分断し、ナーガの魔法を跳ね返す。 


 ボクも、これくらいの魔物を相手したのは、久しぶりだ。

 ゴブリンやオークを切り裂き、カエル顔の兵隊などを両断する。


 どれくらい経っただろう。魔物たちの数も、ようやく目に見えて減ってきた。


「キュアノ、どれくらい倒した?」

 

 背中合わせになって、戦況を報告し合う。

 

「二、三〇〇〇ちょっと」

「同じくらいだね。でも」


 ボクたちも一応戦っているが、仕留めている数は父が圧倒的だった。

 疲労の色さえ見せない。それどころか、父はどんどんと敵を倒す精密さが増している。


「まさに怪物」


「うん。この村が誇る守護神だからね、父は」


 守護神のオンパレードも、終わりが見えてきた。


 ジャカジャカジャカと締めのようにギターを掻き鳴らす。


 踊り子のように回転しながら、散弾火球を撒き散らした。

 

 焚き火に焼かれる小虫のように、魔物たちは塵となっていく。


 ギターが鳴り終わる頃には、モンスターは全滅していた。


「テメエは、何者だ?」


 仲間が殺されていく様を見留めさせられたバルログが、父に問いかける。


「アタシは、この村役場の所長よ」

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