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盤面支配の暗殺者  作者: 神木ユウ
第1章 班結成
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第7話 休日

 5日学園に通い、2日休みで一週間だ。今日は入学から6日目、つまり初めての休日だ。

 とはいえ、特別やることもない。学園の図書室に行くか。まだまだ読みたい本がいくらでもある。




 図書室の扉を開く。人が全然いないな。生徒はともかく、一般は休日の方が入りやすいように思えるが。まあ人がいない方が集中出来て良い。

 唯一、昨日もいた本を山ほど並べている女子生徒が、今日も同様に大量の本に埋まっている。よほど本が好きなんだな。


 魔法関連の本棚から、魔法陣の模様の意味という本を取り出し、椅子に座ってパラパラと流し読みして概要を掴む。

 これはかなり重要そうだ。全てしっかり読んだ方が良いだろう。最初からじっくり読み進めることにする。


 魔法陣の模様は、一見意味が分からない単なる模様にしか見えないが、形状によって意味がある。

 つまり、全く知らない魔法陣でも、この意味を理解していればその効果を読み取ることも可能だということだ。逆に魔法陣を知らない魔法でも、新たに魔法陣を生み出すことも出来る。

 ここまでは教科書にも書かれていることだ。この本は、更に具体的に、どのような模様がどのような意味を持つのか、膨大な知識が記されている。

 これであらゆる魔法を網羅出来る訳ではない。だが、これを応用すれば、相当幅広く魔法陣を扱えるようになる。昨日読んだ図鑑をもう一度読み直してみても面白いだろう。しっかり見なかった魔法陣も、今日新たに得た知識を基に見れば、その意味を読み取ることが可能なはずだ。


 面白い。戦いに使うために読んでいたはずなんだが、普通に楽しんで読めてしまう。奥が深いものだ。



「問題。これは?」



 急に目の前に魔法陣が描かれた紙が差し出された。


「風が噴き出す」


「これは?」


「重さを増す」


「これは?」


「火花が出て霧を噴き出し風で霧を散らす」


 何だこの意味のない魔法陣は。というかそもそも、


「何がしたいんだ」


 目の前に立って紙を差し出しているのは、大量の本を並べて読みふけっていた女子生徒だ。

 青っぽく見える長い黒髪の、身長155センチくらいと思われる色白の女子。何となく人間離れした雰囲気を感じる。


「気になっただけ」


 それだけ言ってさっきまで座っていた場所に戻っていく。本当に何がしたいんだ。

 しばらく見ていても、本当にただ本を読んでいるだけ。何かする様子はない。気になっただけ? 何が?


 訳が分からんな。


 何もしないなら良いか。俺も本を読むとしよう。







 休みの日、クレイさんを訪ねたら、もういなかった。また置いていかれた……。

 仕方ない。友達作りをしよう。寮ならいっぱい人がいる。きっと誰か話しかけられるはず。


「じー……」


「えっ、何あの子」


「柱の陰からめっちゃ見てくる……」


 談話室を覗いていたら、なぜかどんどん人がいなくなってしまった。これでは話しかけられない。

 仕方ない。これは仕方ないから、外に出ることにする。そういえば部屋に何もないから飾れる小物でも探そうと思ってたんだった。今日は買い物の日だから、友達が出来ないのは仕方ない。


 と、思ってたんだけど、



「フッ! ハァッ!」


 通りかかった公園で、素振りをしているカレンさんを見つけた。剣のことはよく分からないけど、スゴイ速度で振り下ろしてピタッと止まって、やっぱりスゴイ。

 見ていればカレンさんのことが分かるかも。剣の鍛練をするカレンさんを、ベンチに座って見ていることにする。


 それから1時間、ひたすら剣を振り続けるカレンさんを、ただ見続ける。


 スゴイ。全く休憩しないで振り続けてる。流石に息が上がってきてるけど、フォームが崩れたりもしない。これが強者っていうのかな。

 あ、素振り終わったのかな。タオルで汗を拭いて、こっちにって……


「何か用か?」


「あ、あわわわわっ!? えっと、えっと……」


 気づかれてた!? どうしよう、絶対変な奴だと思われてる……。


「? 用がないなら、わたしは行くぞ」


 あ、行っちゃう。えっと、何か、何か……



「あたしたちの班に入りませんかっ!!」



「は?」


「あれ?」


 今、あたし何て言った? 何か勢いで唐突に意味不明なこと言わなかった?


「班? そういえば見覚えが……。そうだ、クレイ・ティクライズの班の」


「は、はいっ! ティール・ロウリューゼです!」


「奴に言われたのか? 勧誘してこいと」


「い、いえ! あたしが勝手に……」



「ふん、どっちでも良いがな。わたしは奴の班には入らん」



「え?」


 奴っていうのはクレイさんのことだよね? どうしてそんなに……。クレイさんはカレンさんとそんなに交流がないはずなのに。


「成績は悪くともティクライズだ。きっと騎士らしく堂々と戦うのだろうと思い、お前たちの模擬戦を見ていた。そうしたら、奴は見ているだけだっただろう。あんなものは騎士の戦いではない。騎士とは、己の命を懸けて守るべきを守る者だ。あのような腰抜けの下になどついてたまるか」


 ティクライズとかファレイオルとか、そういう家のことはよく分からない。あたしは故郷の村のことしか知らない。でも、



「クレイさんをバカにしないでっ!!」



「っ!」


「クレイさんはスゴく頭が良くて、ダメダメなあたしでも戦えるように作戦を考えてくれて、その通りにしたらホントに勝てて、だから、えっと、ヒドイこと言わないで!!」


 きっとクレイさんは約束を守ってくれる。あたしでも上を目指せるって、そう言った。信じてついてこいって。他の人だったらきっと投げ出されてた。あたしは臆病で、きっとクレイさんも苦労してる。でも、本当に勝たせてくれたんだ。


 だから、あたしも頑張らないとって!


「……そう睨むな。悪かった。確かにわたしは奴のことをよく知らん」


「あ、えっと、すいません……」


「だが、やはり奴の下につく気にはなれないのも事実。他を当たってくれ」


 カレンさんが行ってしまった。あたしが感情的になって怒ったせいで勧誘が失敗しちゃった。きっとクレイさんへの印象も悪くなっちゃったんだろうな……。


「あ、友達になりたいって言えなかった……」


 そんな空気じゃなかったし、仕方ないんだけど、友達作りって難しいよ……。

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