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盤面支配の暗殺者  作者: 神木ユウ
第2章 頂点を取りに
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第51話 頂点へ向けて

『アーサ・ナインフェールが粘る! しかし他の班員は既に落とされてしまい、いつでも決着をつけられる状態です!』


『前回大会でレオン王子とアーサさんが戦った時と状況は同じだね。違うのは、レオン班の班員が敬意を持って見ているだけってことかな』


『レオン・ヴォルスグラン対アーサ・ナインフェールの一騎打ちの邪魔をしないようにしているということですね』


『レオン王子の希望かな。今回に関しては仮にレオン王子が落とされても負けはないって信頼出来る仲間が集まってるからねぇ』



「奥義、九浄閃(くじょうせん)っ!!」



『アーサ・ナインフェールの剣が増えたかのように見えるほどの連撃! 一瞬の間に数え切れない剣閃を繰り出します! しかし……』


『届かない、ね。ゆらゆらと流れるような受け流し。前の大会でも思ったけど、やはりこれは……』


『決着! アーサ・ナインフェールついに落ちる! 優勝はレオン・ヴォルスグラン班です!』


 大会5日目、決勝戦。レオン・ヴォルスグラン班対アーサ・ナインフェール班の戦いは、レオン班の圧勝により決着した。大会を通して、レオン班の誰一人としてわずかな傷さえ受けない完全勝利。結局ハイラスは最後まで全く動かず、その能力の確認は出来なかった。






 大会も終了し、再び俺の部屋に集まる。といっても、作戦を固めるための話し合いではない。学期末の対抗戦までは半月以上ある。今から作戦を決定しても仕方がない。


「前回大会でレオンと戦った時にも思ったんだが、あいつが使う剣技、あれはティクライズの剣だな」


 前回大会でレオンが使った豪炎の型、疾風の型。そして今日の決勝で使った流水の型。あとは大地の型の4種が存在する。2本の剣を使い、相手に合わせた有効な型を切り替えながら戦うのがティクライズ式剣術だ。


「む、何故王子がティクライズの剣を使うのだ?」


「恐らく城で近衛騎士隊長をしているレイド・ティクライズから教わったのだろう」


 通常そういった各家特有の技を外の人間に教えたりはしないものなのだが、合理性の擬人化みたいな奴のことだ。そのような枠組みに縛られたりはしないだろう。


「そういえばレオンが剣を教わっているところを見たような気がするわね。わたしは教わったことないけれど」


「クレイさんなら、その剣技の弱点もご存知なのでは?」


 俺がわざわざこの話を始めたのも、それを伝えるためだ。ここで問題になるのが、ティクライズの剣が何故多種の型を持っているのか、ということだ。


「この剣の特徴は、相手や状況に合わせて有効な型を切り替えるところにある。つまり、各型には弱点があるが、それぞれが補い合うことで完全な戦術を完成させているということだ」


「弱点なんてないってこと?」


「いや、そうではない。クレイが言いたいのはつまり、各型の弱点を突けということだろう」


 戦闘におけるセンスは抜群だな、相変わらず。これが目の前の相手数人だけでなく、全体に発揮出来れば班長を任せられるのだが。


「そうだ。状況に合わせて型を切り替えてくるということは、こちらが特定の型に誘導することも出来るということだ。そして型を切り替えた瞬間、弱点を突いて崩す」


 これもそう簡単なことではないがな。要するにレオンを相手に戦法を切り替えながら戦えと言っているのだから。超高速で後出しじゃんけんをするようなイメージだろうか。型の切り替えを見切る目と、その瞬間自分も戦法を変える判断速度が要求される。


「うむ、理解した。各型の弱点を教えてくれ。本番までに仕上げよう」


 何も言わずとも、自分がレオンの相手をすることを理解しているカレン。そして今度は1人で抑えきって見せると、そう目が語っている。


「ああ、頼む」


 カレンがいてくれて良かった。強大な相手に対し、こちらも正面からぶつかるという選択肢があるのは本当にありがたい。これだけでどれだけ突破口が広がることか。


「では他のメンバーについても、それぞれ対策していくか」


 レオンほどではないが、他も放置は出来ない。どれだけ対策してもやり過ぎということはないのだから、やれる限りを準備していくとしよう。






 敵はレオン班だけではない。他学年の出場班も各学年で優秀な成績を収めている訳で、決して油断出来る相手ではない。

 その上、レオン班以外はほとんど情報を持っていない。出場者すら知らないのだから、情報収集をすることも難しい。実際に戦いながら、もしくは2日目以降は前の試合から、情報を集めつつ勝ち進まなければならない。


 やることになるだろう。久しぶりに。


 体を慣らしておかなければ。






 レオンたちが優勝した大会から3週間、調整を続けた。

 クルへの指示出しの最適化、カレンのティクライズ対策、ティールのハンマーの扱い、フォンの魔法の使い方をより幅広く、アイリスにも攻撃一辺倒ではない新魔法を考案して。



 そしてあっという間にその日がやってきた。



『やあ皆、聞こえているかな? 理事長のキレア・ディルガドールだ。今日からの4日間、激闘が繰り広げられるだろう。出場出来なかった者も含めて、その全てから学び、今後に活かしてほしい。ではここに、全学年合同の班対抗戦の開幕を宣言するよ。出場16班は、』



 1年クレイ・ティクライズ班


 1年レオン・ヴォルスグラン班


 2年ニーリス・カレッジ班


 2年ウェルシー・ノルズ班


 2年エトル・ダライル班


 2年イゴス・レイター班


 2年ダイム・レスドガルン班


 3年ディアン・プランズ班


 3年グルスド・カース班


 3年ピラル・チェアード班


 3年オーグ・ギンデガル班


 3年タプト・ナーソルファ班


 3年ズマリー・フィヤール班


 3年ケーム・フズモルク班


 3年リベル・クレット班


 3年フルーム・アクリレイン班



『以上だ。各々の奮戦に期待するよ。では第一試合、3年ピラル・チェアード班と2年エトル・ダライル班は準備をしてくれ』



 それから始まる試合は、どれもレベルの高い物ばかり。1年大会のように、何も出来ずに負ける班などほぼ存在しない。その中でも一際強く感じたのは、レオン班と生徒会長ダイム・レスドガルンの班の2つだ。



 レオン班はやはりそれぞれの実力が高い。中でもレオンは飛びぬけていて、3年のリベル・クレット班を相手に2人を蹴散らして見せた。

 だが、流石に相手も強者だ。やっとハイラスが動くところを確認出来た。武器は腰に差していたから分かっていたが、短剣2本。動きは特別速い訳でもなく、俺とそう変わらない程度に見える。それでも3年の槍使いの攻撃を捌き切ったことから、相手の攻撃の軌道を先読みしていたのではないかと考えられる。

 やはり俺と同様、実力を思考で補うタイプと見て間違いないだろう。攻撃を避け、逸らし、回避し続けて時間を稼ぎ、自分では撃破せずに仲間の応援を待っていたことからも、それが読み取れる。



 生徒会長の班は基本に忠実。1対1を6つ作り、各々の実力で勝利する。しかし、その戦いはとても基本とは言えない物だった。

 生徒会長ダイム・レスドガルンが何をしたのか、観客席から見ていても全く分からなかった。自分が担当する相手に近づいたと思った次の瞬間、いつの間にか剣が振り抜かれており、相手は倒れていた。

 そうなってしまえばあとは数的有利を押し付けるだけ。仲間が戦っている1対1の相手を背後から1人ずつ落としていき、無傷での勝利を収めた。



『では本日の最終戦第八試合、1年クレイ・ティクライズ班、3年タプト・ナーソルファ班は準備をしてくれ』


 もう最終戦か。各試合の内容が劇的過ぎて、異常に時間が早く感じるな。


「さて、行くか。油断はするなよ。相手は最上級生だ。6人全員が挌上だと思ってかかれ」


「うむ、我が剣が上級生にも通じるということを示そう」


「油断はないわ。最強最速で撃ち抜く」


「指示はお願いします。完璧に応えて見せますので」


「が、ががが頑張ります……!」


「今日の戦法は?」


 どうするか。相手の情報はないに等しい。ならばこちらの得意戦術を押し付けていくのが勝ち筋だ。ここは、以前から使っている戦い方が良いだろうか。


「フォンの魔法で決めるぞ」


 この大会は障害物の多い野外フィールドだ。搦め手が得意な俺には有利に働く。


「まずは一勝、取るぞ」


 仲間たちの返事を聞きながら、フィールドへ歩を進めた。

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