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盤面支配の暗殺者  作者: 神木ユウ
第1章 班結成
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第28話 真意

 観客席に戻って来た。そこで話すのはもちろん先ほどの試合についてだ。


「まさか本当に1人手を出さなかったのに負けるとはね。流石に悔しいわ」


「彼らは強かったです。アイリス様がカレン・ファレイオルを抑えていてくれれば、残りはわたしだけで殲滅出来ると思ったのですが」


「ええ、そのつもりで指示を出した。でも、想定を上回られたわね」


 負けたのだから、確かに想定を上回っていたということなのだろう。だが、本当にそうだろうか。だって、ティール・ロウリューゼはほとんどただ逃げているだけだった。あれで想定より実力が上? そんなことがあるだろうか。むしろ実力で言うのなら、想定を下回っていたようにすら思う。

 全てはあの男の掌の上だったという、それだけの話なのではないか?


 素直に凄いと思う。ティールは戦闘向きの性格ではない。それなのにしっかり貢献しているように見える。手札を完璧に使いこなす彼の手腕か。

 言っては悪いが、彼女は本来明らかに足手まといにしかならない。それくらい戦いに向いていない。だが、そんな彼女にわたしは傷一つつけることが出来ずに負けたのだ。


 ん? 足手まとい?


 そうだ。彼女は明らかに弱みを抱えている。それも小さな物ではない。まともに戦えないほどの巨大な弱みだ。

 自分で言うのは憚られるが、彼女に比べればわたしが抱える弱みなど小さい物なのでは?


 つまり、フォン・リークライトが言う歩み寄れというのは……!


「分かった……!」


「え? 何が?」


「フォン・リークライトが言っていたことがです!」


 正面から戦ったことで見えた、ティール・ロウリューゼの弱点をアイリス様にも伝える。


「ええ、何となく気づいていたわ。だからクルに吼えさせて怯えてくれることに賭けたのだし。最初から分かっていればもっと戦い方があったのにね。そもそもクルに狙わせるのはクレイ・ティクライズにするべきだったわ」


「そうかもしれませんが、今重要なのはそこではなく。つまり、彼はそれほどの弱点も気にせず作戦を練ることが出来る天才だということです」


 思い返せば、フォンも魔法を一発撃つ度に魔力切れになっていた。あれは毎回規模が大きい魔法を使っているから仕方がないと思っていたが、そうではなく、規模が大きい魔法しか使えないのではないだろうか。

 クレイは班員の弱点を理解した上で、各々が最大限力を発揮出来るように指示を出しているんだ。


「もとはと言えば、わたしの弱点を知られると班から追い出される可能性が高いというのが問題だったはず。つまり……」


「え、クルには逐一命令しなければならないってことを正直に彼に伝えれば、それだけで解決だったってこと?」


「そうです! アイリス様が班長に拘る必要もない! 彼ならきっとわたしを使いこなしてくれます!」


「そんな……簡単なことで……? は、はは、今までの苦労は何だったのかしら……」


「申し訳ありません、苦労を掛けてしまって……」


「ああ、違うのよ。あなたのせいじゃないわ。無駄に班長に拘って、無意味に2人で対抗戦に出場して、無謀な勝負に挑んで、当然の敗北をもらって。何の価値もない時間を過ごしたわね……」


 自嘲するように笑うアイリス様。そんな顔をしないで欲しい。あなたにはずっと前を向いていて欲しい。自信満々に、誇り高く。


「…………」


「もう、そんな悔しそうな顔しないの。確かに無駄な時間を過ごしたけれど、これからそれを取り返していきましょう」


「はい……」


 そうだ。彼の班に入ればきっと上を目指せる。そうすればアイリス様への恩返しにもなるはずだ。もっと強く。弱点など気にならないくらいに、強く。


「……そういえば、どうしてフォン・リークライトはクルの弱点を知っているの?」


「え? ……確かに」


 もちろん自分で話してなどいない。アイリス様が教えた訳もないし、わたしの弱点を知っているのは城で日常的に接していた一部の人だけだ。そちらから漏れたというのもあり得ないだろう。


「え、本当にどこから知られたの……? 怖すぎない……?」


「く、クラスメイトですから、知らない間に話してしまっていたのではないですかねー?」


 自分でも無理があると分かっている妄想を口に出す。


「あ、あははは、そうかもしれないわねー」


 なんて、2人で顔を見合わせて、引きつった笑いを漏らすのだった。







「そろそろ教えてくれても良いんじゃないのか? 何故手を出さないなんて言い出したんだ」


「む、そうだ。結局理由を聞けていなかった。勝てたから良かったが、もしかしたら手を出さずに突っ立っている班員がいるのに負けるという無様を晒したかもしれんのだぞ」


「勝てると信じてた」


「そうかそうか! そうだよな、我々がそうそう負ける訳がないよな!」


「おい、単純馬鹿。納得するな」


 それは理由ではない。確かにフォンがいなくても勝算はあっただろうが、フォンがいた方が勝率が高いことなど言うまでもない。


「この先、4人では大変そうだから」


「フォンさんが試合に手を出さないと、班員が増えるんですか?」


「多分?」


「そんな曖昧な……」


「班員が増えたら分かるよ」


 この大会中は班の変更は出来ないから、もし王女たちが班に入ってくれるとしても、来週になるか。それまで理由は教えないと。


「まあ良い、勝ったんだからな。今後は協力してくれるんだよな?」


「うん。何でも言って」


「無論、わたしも指示に従うぞ!」


「あ、あたしも、頑張ります!」


 最悪人数合わせばかりで班を構成し、後で班員を入れ替える必要すらあるかと思っていたんだが、ずいぶんと頼りになる仲間が集まったものだ。


「ああ、頼りにしてる。優勝、取るぞ」


 3人が声を合わせて返事をするのを聞きながら、観戦のためにフィールドに目を戻した。

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