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盤面支配の暗殺者  作者: 神木ユウ
第10章 反逆の強襲
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第256話 作戦会議

 公爵が集めた戦力が揃っていく。が、その数は思ったより大したことはない。騎士団の隊2つ分の人数がいるかどうかといったところか。

 所詮はこの程度か。そもそも現王は民衆からの支持が厚い。それに表立って逆らおうと思うような者は、逆らわなくてはならない立場にいる者くらいだ。つまり、イーヴィッド伯爵のような違法行為を行っている者たち。


 こうして集まった光景を見て、やっと理解出来た。反王家派閥の思想と公爵の意思がかみ合っていなかったのは、そうでもしなければ人数が集められなかったからだ。

 正義感で反王家としての活動が出来るほどの人数は集まらなかったので、不満を持つ者を引き込んだのだろう。


 こんな状態で仮に勝ったとして、その後の国の運営はどうしていく気なのか。まさかこんなクズ共を重鎮として据える訳ではあるまいな。


「良く集まってくれた。いよいよ行動の時だ」


 会議室に集まった貴族たちの前で、公爵が宣言する。礼儀として貴族たちの視線は公爵へと向いているものの、彼らの注意が公爵の隣に立つ俺へと向いているのは明らかだ。

 ここに集まっているのは、兵を従えてきた貴族の当主たちだけ。その中で、平民と思われる見知らぬ子供が偉そうに前に立っていれば気になるだろう。


「あの、よろしいでしょうか」


「分かっている。この者のことであろう。この者は此度の作戦の要。近衛騎士隊長や騎士団長といった強力な個人戦力と戦うために用意した人員だ」


「お初にお目にかかります。クレイ・ティクライズと申します」


「このクレイとその仲間には、先ほど述べたような強力な敵との戦闘を担当してもらう」


「チッ、ティクライズか。貴族でもないくせに偉そうに我々の行動に口出ししてくる身の程知らずではないか」


「閣下! そのような者がおらずとも、我々だけで」




「勝てるか?」




「っ」


 ティクライズという家への不満から勢いで吐いてしまったのだろう文句が、公爵の静かな一言に遮られ消えていく。


 当然だ。勝てる訳がない。


 騎士団の各隊長はその全てが一騎当千。その中でも、近衛騎士隊長レイド・ティクライズ、騎士団長シュデロ・ファレイオルの2名は格が違う。

 彼らの剣の一振りが、雑兵の五十や百を軽く蹴散らす絶望の一撃。まともな戦いがしたいのなら、数ではなく質で対抗しなければ話にならない。


 王本人や、第二王子レオン・ヴォルスグラン、第一王女アイリス・ヴォルスグランも雑魚ではない。数で戦うとなればかなりの犠牲を覚悟する必要がある。


 しかも、それだけではない。



「現在、第一王子フルズ・ヴォルスグランが城に帰ってきていることを確認している」



「なっ!? あの第一王子が!?」


 前線送りにしたはずの最強王子が帰ってきている。その情報を掴んでいなかった貴族たちに動揺が走った。

 ……いや、何でその程度のことを把握してないんだこいつら。本当に貴族か? 世間の動きに無関心過ぎるだろう。


「お、お待ちください! それでは勝ち目が非常に薄くなってしまう! ここは日を改めて……」


 は? 本気で言っているのか、この無能は。動くなら今しかないに決まっているだろう。何故公爵が今行動を開始したと思っているんだ。


「違うな。だからこそ、動くなら今なのだ」


「どういうことです……?」


「クレイ・ティクライズ、説明せよ」


「はい」


 という訳で、いつものごとくこちらに飛んできたので解説していこう。といっても、何も難しいことはない。


「第一王子は前線を支える要です。その王子が帰ってきているということは、その代わりが前線には必要となります」


「何を言っている。あの王子の代わりなどいる訳があるまい」


「はい、もちろん。ですから、数でそれを補おうとします。お分かりでしょうか。つまり現在、王子が抜けた穴を埋めるために、かなりの数の騎士が前線へ行っています」


「ふん、そういうことか」


「かの第一王子と戦う必要があるのは大きな障害ではありますが、その代わり、手薄になっている城へと攻め込むことが出来る。王子は我々が抑えますので、作戦の遂行は普段と比較して容易になっているかと」


 ここまで細々と説明してやってようやく理解した一部の貴族連中への呆れを内に押し込んで無表情を貫く。これくらいのこと、人の上に立つのなら自分で理解していて欲しいものだ。


「ご苦労。それを加味し、作戦は単純。全戦力で以て城へと乗り込み、数によって制圧。速やかに王への道を切り開く」


「その時間、王はどこにいるのかはご存知なのですか?」


「我らの動きはあちらにも把握されているだろう。ここまでの人員を集めたのだ。これを掴めぬほど無能ではない」


「で、では既に奴らは逃亡しているのでは」


「あり得ぬ。奴らは間違いなく迎え撃つ準備をしている。謁見の間だ。そこに戦力を集めて待ち構えている」


「は、はぁ……?」


 貴族たちの顔に疑問が浮かぶ。が、公爵があまりにも自信満々で宣言するので尋ねることが出来ないようだ。

 正直、この辺りは俺にも分からん。恐らくは長い付き合いだからこそ分かる陛下の性格を加味した読みだろう。


 無理矢理理由を考えるなら、実力に優れる面子が揃っているところにまとめて攻め込んできてくれるなら、この機会にうっとうしい反王家派閥を一掃してやろうという腹積もりか。


「謁見の間の制圧は、クレイ、お前たちに任せる」


「畏まりました」


 敵戦力は、近衛騎士隊長レイド・ティクライズ、騎士団長シュデロ・ファレイオル、国王ガルゾ・ヴォルスグラン、第一王子フルズ・ヴォルスグランが主か。

 アイリス、クル、レオンは恐らく戦えない。敵が俺たちだからな。最初から覚悟していたならともかく、いきなり俺たちが現れて戦えと言われても動けないだろう。


 後は、恐らく近衛騎士がそれなりの数いるはずだ。近衛騎士隊は他の騎士とは練度が違う。こちらで多くを受け持つ必要があるだろう。


 第三王子、第二王女はまだ幼い。戦場には連れてこない。もしかしたら既に城から逃がされているかもな。攻め込む道中で発見したら人質に使えるだろうが、そこまであちらが愚かとも思えん。


 ……大体、整ったか。



 問題は一つ。第一王子の戦力。



 俺は、最強と言われるあの王子を見たことがない。その戦闘能力はどれほどだ。


 勝てるならそれで良し。勝てないまでも、抑え込める程度なら時間を稼いで加勢が来るのを待てば良い。



 もし、抑え込むどころか時間を稼ぐことすら難しく、瞬殺されるのなら。



 ……その時は、無理だな。



「では、解散。2時間後、出発する。各自準備を開始せよ」








 仲間たちが待つ部屋へ戻る。そこで、ティール、フォン、カレン、ルー、マーチ、ハイラス、フォグルが待機している。


「まず、ハイラス、フォグル。お前たちは露払いだ。一般騎士を貴族たちの私兵と協力して薙ぎ払え。隊長ほどではないと言っても、近衛の精鋭が集まっているだろう。油断するなよ」


「はいよ」


「おう」


「次に、フォン。担当は国王ガルゾ・ヴォルスグラン。制圧はしなくて良い。恐らく公爵もそこだろう。軽く足止めしておいてくれ」


「ん」


「ティール、ルー。お前たちは騎士団長シュデロ・ファレイオルだ。ティールが力で対抗し、ルーがティールも使って戦え」


「はい!」


「分かりました」


「カレン、マーチ。お前たちで近衛騎士隊長レイド・ティクライズを頼む。無理はするな。危険そうなら足止めに徹して構わない」


「任せろ! 今度こそ完勝して見せよう!」


「ふん、舐めんじゃないわよ。軽く捻ってあげるわ」




「俺が第一王子フルズ・ヴォルスグランをやる」




 第一目標は全員生存。第二目標は敵味方共に死人を出さずに完全制圧。無理そうならとにかく時間稼ぎだ。




 さて、行くか。

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