プロローグ
「ふむ。なかなか面白い新入生がいるようだね」
ここ、ディルガドール学園は、学問と併せて戦闘能力も教育、評価される学園だ。
近年はモンスターによる人域襲撃や、武装集団による破壊行為など、大規模な戦力が必要となる事態が増えてきている。それに対応するため各教育機関では、若者の戦闘能力を鍛え、人々の生活を守る活動が推進されている。
この学園もその一環で創られた。
創立から20年、多くの優秀な人員を輩出している我が校は、学問、戦闘の両面に力を入れ、更なる実績を積み上げられるように、積極的な広報活動を行っている。
『学問のみならず、戦闘のみならず、文武両道こそ定めなり』
そのモットーの通りに、毎年各地から、両面で優秀な成績を収める者が入学してくる。
だが、これは……
「エリート校であるこの学園の入学試験問題は、相応の難易度で作られているはずなんだがね」
手元の試験結果を見れば、その異常がよく分かる。
クレイ・ティクライズ
学科 1000/1000
実技 530/1000
計 1530/2000
順位 145位/322人
例年の合格者の平均的な試験結果は、学科、実技共に700点程度で合計1400点程度。
今年の合格者322人の中に、どちらかでも満点を取ることが出来た者など、このクレイという少年を除いて一人もいない。
いや、今までの20年でも一人もいないはずだ
理事長兼学園長であるわたし、キレア・ディルガドールですら知らないのだから。
最近は実技に重きを置く者が多く、どちらかと言えば実技の点が上がり気味、学科は下がり気味だったのだが。
「とはいえ、実技が全く出来ないようでは話にならない。さてさて、この子はどうだろう」
最近の実技の平均点から見れば、530点はかなり低い。今年の合格者の中では最低だ。
だが、新しいタイプの子は歓迎だ。卒業生にも多様性は欲しい。様々な場所で活躍する者を輩出すれば、それだけ我が校の評判も上がるというもの。
「期待させてもらうよ、クレイ・ティクライズ」