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恐怖の大魔王



髪の毛が金色だから、黄色カテゴリーに入ったのだろうか?



ポヨポヨ殿下が、わたくしの事を好きだと言われた。



これがいい大人なら、愛の告白とトキメイタだろうが、いかんせん9歳のポヨポヨである。

ここは素直に、わたくしエリザベートのことが気に入ったと思えばいいでしょうね


「嬉しゅうございます殿下。わたくしも殿下のことをお慕い致しております」


わたくしもポヨポヨ気にいったよ。

おやおやポヨポヨ。そのぽよぽよな頬を赤らめておいでですな。さてはわたくしに惚れましたか?


ポヨポヨは良く良く考えてから、言葉を出すお方。

なら、好きは好きでも少しランクが上の好きかもしれない。

本当にただ気に入った以上の好きらしい。


エリザベートとしても、オクダタエコとしても余り人様に好意を向けられたことがないので、結構嬉しい。


それに……ひとつ気になることがある。

今のポヨポヨの熟考中に割り込むのは気がひけるが、わたくしのこの……


「殿下。ひとつお訊ねしてもよろしいでしょうか?」

「よ……よいぞ」


こういう返事は早いのね。

あれこれ考える必要のないことは、すぐさま返答しボールを投げ返してくるのを待つ。

この子。なかなかに優秀だわ。

見直したぞポヨポヨ!


おっと忘れてた。質問。質問


「殿下は、わたくしの目が怖くはないのですか?」

「な……なぜだ……なぜそう思う……そ……そちの目は……とても美しく……綺麗な目ではないか?」


最後の方。ほとんど言葉が淀みなくこぼれた。

これはエリザベートの一族の女子に目付きの悪い子が生まれやすいと聞かされたか?

エリザベートもご多分に漏れずいや一族の中でも一二を争う凶悪な顔をしているので、あらかじめ

『こう聞かれたら今のように返答をするように』

と仕込まれている可能性もある。

だが……違う。

このポヨポヨに限ってそれはないだろう。



肝心な出会い頭の挨拶すらまともに出来ないのだから……。



そしてほとんど淀みなく言葉が紡がれたということは、わたくしの目について聞かれる前からそう思っていたこと。

これは紛れもなくポヨポヨの本心


「殿下。そう言って戴けるとエリザベート。

天にも昇る心地でございます」


そうだ。やっとわかった。


小説ではこのやり取りはなかったが、ガキンチョエリザベートはこの言葉にほだされて、ポヨポヨに恋心を抱いたに違いない。


エリザベートのこの目付きの悪さに対するコンプレックスは相当なものだ。

その点。オクダタエコと引けを取らない。


両親や家族以外でこの目付きの悪さに恐れを抱かぬものがいなかった。メイドのメリッサほどではないにしろ、多くの者たちはまともに目を合わせてくれない。

使用人達はエリザベートの凶悪な目付きと制御不能な激情に、どうしよもなく怯えていた。


周りの者全てが敵に見えていた!


わたしもあの会社に長居出来たのは、社長夫妻がわたしの無駄な目力を恐れなかったこと。

一度も目付きの悪さで目を背けられはしなかった。


愛人の噂がたったとき、社長が気まずそうに目を合わせてくれなかったが、あれは目力とは関係ないだろう。

そう言えばボンボンが、この呪うらしいノロコの目付きを怖がる気配がなかったのも、遺伝か!



今気付いた!



気付いたところで、どうということはないが……。


とにかくエリザベートは、オクダタエコの記憶にだけある少女エリザベートは物心付く頃から孤独に苛まされていた。

その原因のほとんどがこの凶悪な目力だ。


お友達がほしくて、お茶会の同年代の輪にはいり、なんとか溶け込もうと優しい言葉をかけてみても、裏があると思われ。

ただ微笑ましく見ているつもりでも、ケンカを売ってると思われ。


使用人は誰も、呼ばれた時以外は近寄ろうとも、話をしようともしない。

目を合わせれば視線を反らされ。

話し掛ければ、畏れられ。


どうすればいいかわからず、どうしようもなく、いつしか癇癪持ちになり、怒鳴り散らして言うことを聞かせる外なかった。


そしてみんな離れていった。


大きな姿見の前で、オクダタエコという前世の記憶に目覚めたとき、周りに誰もいなかった。



ほんの9歳の女の子が、この大勢の使用人の中、たったひとりで放っておかれた。



公爵令嬢で専属の従者が三人もいるのに、誰も近くにいなかった。

それはエリザベートが遠ざけていたからでもあるが、それでも異常だ。


目を合わせるたびに、ビクッ、ビクッとされて、その度に自分の心もビクッ、ビクッと怯えた。


もう誰もわたくしを見てくれない。


家族以外。たったひとりの友人も理解者もいなかった。


そして頑なに意固地になっていった。


使用人が視界に入れば目がつり上がり、毒々しい赤い口を開き、喚きに喚く様は恐ろしく、周りの者はそんなエリザベートを影でこう呼んだ。



──恐怖の大魔王──




女の子だからせめて魔女だよね。



オクダタエコは思うのであった。


そして思い出した。







自分も恐怖の大魔王と呼ばれていたことに……。














ポヨポヨっていう響きかわいいね。


あと懐かしいでしょうバブリーな方々。

恐怖の大魔王ってアレですよ♪

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