物語のヒロインなのですから!
『オーギュスト?』
何故に突如帝国の名が出てくる?
余は国王ルーメンス。
先ほどからのアイリス・ユークラリス伯爵令嬢の恐ろしさに正直肝を冷やしている。
未来のフォラリス王国に現れるという、頭のおかしなピンク女。
その者の目覚めはエリザ神曰く
『滅びを告げるラッパ』らしい。
正にその通り!
エリザベートの言っていることが本当なら……いや間違いないだろう。あのエリザベートの悔しそうな口惜しそうな顔を見る限り。
もし本気となったアイリスは、フォラリス王国の王太子をも誑かし国を我が物のように扱うという。
さらには第二王子を誘惑し、その伴侶たるエリザベス擁す鉄の絆たるテイラム家を完膚なき程に叩き潰すなど!
しかも王国に不満のある下級貴族や平民。そして一部上級貴族までも引き入れ味方を増やし……そして聞かなくても分かる。
フォラリス王国は、そのアイリス・ユークラリスを旗頭とした反乱軍に攻め滅ぼされるのであろう。
エリザ神は申していた。
アイリス・ユークラリスの胸先三寸で
《滅びの坂の角度》が決まるらしい。
盟主となったアイリスがフォラリス王国を滅ぼせば、その末路は悪魔のようなそのピンク女が決めるのだろう。
只の内乱で、王国の名前が変わるだけなのか?
それとも王族がことごとく殺されるのか?
甘く見ない方がいい。何故ならエリザベートの孫のエリザベス。エリザ神の生まれ変わりすら太刀打ち出来ずに殺され、首を晒されるのだから。
エリザ神は申しておった。
アイリス・ユークラリスはエリザ神よりも格が上の神のワケミタマであると……。
そして生きながらにして神の世界をも垣間見る者と……。
もはや、抗う術なし。
エリザ神が申しエリザベートが肯定したように、王家は出来るだけ関わらない方がいいのだろう。
下手に干渉して恨みでも持たれたら、余の子孫達も命の危険が増すであろう。
王家の家訓として徹底させなければならない!
【アイリスという女には絶対絶対ぜーったい関わるな】
と!
なら殺せばいいのではないか?
アイリスとやらを殺せば滅びは免れるのではないか?
誰もがそう考える。
でもエリザ神は『絶対殺すな』と殺せば滅びの坂は最悪になる。
その答えの核がオーギュスト帝国だろう。
オーギュスト帝国は海を挟んだ大陸の覇権国家だ。
一時内乱で疲弊していたが数十年前に持ち直し、今は復興途上だ。国の大きさは余のフォラリス王国に匹敵するが、その国力は遥かに劣る。
だが、帝国は中央集権の覇権国家だ。エリザベートの孫の代には驚くべき成長を遂げておるやもしれぬ。
まずは聞いてみねば
「エリザベートよ。なぜオーギュスト帝国の未来の皇帝とやらがアイリスと関係するのだ?」
エリザベートはようやく落ち着きを取り戻し、座り直した
「デュークはアイリスに一目惚れするのです。
アイリスが王子や他の者を誘惑し虜にするのを悉く邪魔して、拐っていくのです。
むしろ拐ってもらって帝国に行かせるのが一番平和でしょう」
「拐う?拐われてそのアイリスとやらは妾にでもなるのか?」
その問いにエリザベートはキョトンと不思議そうな顔をして
「何をおっしゃっておられるのでしょう?
正妃になるに決まっているではありませんか?」
本当に本当に当たり前のように言った
「だが、アイリス・ユークラリスは伯爵の出だぞ。
帝国にも王族や親族もおろう。それを差し置いて他国の伯爵令嬢が正妃になるなどあり得ない。
それになぜエリザベートはさも当たり前のように、アイリスが正妃になると思うのだ?」
エリザベートはまた立ち上がり宣言した
「当たり前です!あの世界はアイリスの世界!
アイリス・ユークラリスはあの物語のヒロイン!
……そして物語の主人公なのですから!」
「なんだその主人公だのヒロインだのいうのは!」
余は思わず声を荒げた。国王としてはあるまじきことだが……
「あの世界はアイリス・ユークラリスのために作られた世界。最終的にはヒロインの彼女の全て都合のいいようになるでしょう!
王太子やエリザベスも含めて全て脇役に過ぎないのですから……。
本気のアイリスには誰も何者も太刀打ちできません!」
そして余が新たに質問しようとすれば、またぞろ急にエリザ神がエリザベートを依り代に降臨成されて、この話はこれまでとはぐらかされた。
そしてエリザベートは【白蓮の間】を去り、余と王妃は深々と椅子に座りため息をついた
「あなた。エリザベートは必ず王妃にせねばなりませんね」
「ああ。そうだな……」
そしてしばらくふたりして脱力していた。
☆
☆☆
☆☆☆
あのね。
エリザベート。
肝心な事言ってませんからね。
あれみんな乙女ゲームの話ですから!
バーチャルバーチャルぅ♪
ただの勘違いのお話しでした。
【伯爵令嬢アイリス・ユークラリスは
乙女ゲームのボッチなヒロインから
成り上がります】
65部〈アイリスには手を出すな〉と
連動しています。
宜しかったらそちらもご覧ください
また次回から本筋に戻ります。




