だっちゅーの♪てへ♪
いきなり踞りガタガタ震え怯えるデイドに、周り者はどうしていいのかわからない
「ほれ!さっさとこの筋肉達磨を片付けんか?
おい。聞こえんのか?早くせい!
二度と我の視界にこの達磨の姿を見せるでないぞ!」
もはやエリザの小間使いと化した国王護衛騎士は、デイドを《白蓮の間》より連れ出した。
国王はエリザを見て
「いまのはいったい……どういう……」
「ん?気になるかえ?
エリザベートは中に面白い者を飼っておってな!
丁度よい。皆にもみてもろうた方が良いかもな」
そして深々と座り頬杖を付き、足を組み替える。
筋肉達磨を連れ出した護衛騎士が帰って来ると
「エリザベートはの。
心の中にペットを飼っておっての。
言葉で通じぬどうしようもない輩にそのペットを見せつけるのじゃ!
今から披露したる故、驚かぬように。
特にそこの女子共。座りや。
それと粗相せんよう、お股の詮をしっかりと締めておくのじゃぞ」
侍女のお姉さま方を座らせ、ついでにお互いに抱きつかせた。
そしてエリザは左手を高々とあげ
「ノ・ロ・コちゃん。発動じゃ♪」
パチンと鳴らした
ひぃ!
ひぃ~~~~~~~~~~~
むふふ♪
皆が驚く様を楽しそうに眺めるエリザ。
そのエリザベートの姿に被るように天井まで届きそうな、宙に浮く巨体の悪魔がいた!
視界を埋め尽くす赤黒いオーラ!
深紅のドレスに身を包む美少女!
抜けるような白い肌。
闇夜の如く黒々とした巻き毛。
先端の複数のドリドリルが宙を漂い蛇のようにうねっている。
血のような唇。
そして紅き瞳。
瞳から発する赤赤とした光に白目も朱に染まる。
そしてその紅き瞳の光が揺らぎゆらゆらとしていた!
間近で見る国王と王妃は口をあんぐりあけ、目をこれでもか!と見開いている。
他の者達も皆一応に同じような表情!
驚きおののいている。
もし事前の忠告がなければ侍女たちは粗相していたに違いない。
「どうじゃ?可愛いものじゃろう?」
嬉しそうに恐ろしき目付きで悦に入るエリザ。
もう一分以上も固まったままの皆の衆
「こんなことも出来るのじゃ!」
エリザは立ち上がり、手を広げた。
するとノロコも同じポーズをした。
手を振れは、ノロコも手を振り。
右手をあげれば、連動して右手を上げる!
おもむろに
「だっちゅーの♪」
と前屈みになり両手を合わせて太ももに挟み、二の腕でほんのりペタパイを寄せる。
寄ってはいないけどね……。
それから右手を頭の上にのせ、パーにして
「てへ♪」
ペロッと舌を出しニコッと笑う
ガタン!
ガタイのいいローレンス公爵が椅子ごとひっくり返る
アッハハハハハハアあはっ!
それを見て腹を抱えて笑うエリザとノロコ。
皆の表情が青ざめる
「あーもう良き頃合いじゃな」
エリザはノロコを引っ込める
──静寂──
「どうじゃった?オチャメじゃろう?
心配するでないぞ!
名前はノロコじゃが、呪ったりはせんからの。
ただの虚仮威しじゃ!
おい!そこの筋肉達磨の親分!
いつまで醜態を晒しておる。
軍事を司どる者がそれでは示しがつかんじゃろうて!」
ローレンス公爵はようやく我に返り、椅子に座り直す。
立ちんぼのエリザもちょっと腕を拡げる。
すかさず国王が立ち上がり、エリザベートの細い腰を掴み椅子に座らせた
「やれば出来るではないかフォラリス。見直したぞ。
で、どうじゃった?ノロコ。
ええじゃろ?可愛ええじゃろ?」
ニコニコ凶悪な笑みで発言を促すエリザ
「いやはやなんとも……世にも恐ろしき姿であった」
国王はため息混じりに吐息をはいた。
「ほれ。金豚!なんじゃったかのぉ名前。
エアリスについておった」
「エドモントでしょうか?」
と王妃。
「そうじゃ!そのブタモントじゃ!
そやつお主らに何か言っておらなんだか?」
「悪魔……そしてエリザベートの事を『魔女』と申しておりました」
「そうじゃろなぁ~。そう見えるじゃろうなあぁ~。
よいか?皆の者。
あれはノロコという名じゃ。
見てくれはあれじゃが、大人しい可愛いおぼこじゃ。
何もせんし、何もできない。
ああやって脅かすくらいが関の山じゃ。
エリザベートのペットじゃな。
でな。
なぜ我が皆に見せたかといえば、エリザベートのやつ。どこでどうノロコを見せつけるかわからんのでな、ブタモントのように悪魔だ魔女だと騒ぐ輩が出るかもしれぬ。そうなった時、エリザベートを庇ってほしいのじゃ。
わかっておるとは思うが、魔女だなんだと火炙りにでもしてみろ。
その瞬間、このフォラリス王国は大いなる滅びの坂を転げ落ちることとなる。
我はエリザベートにしか降臨できぬ。
エリザベートが唯一の依り代じゃ。
エリザベートが消えれば、我もそなたらを助けたくとも何も出来ぬのじゃ。
そこのところよくその胸に刻み込んでおくが良い」
そしてエリザは頬杖を付き足を組み直した。
なんだか昭和の香りがしてきた。
イロイロ古くて懐かしい……
遥か彼方の青い春だね




