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全身全霊を賭けてオクダタエコをモノにしなさい!


「タエちゃんお待たせ。淹れたて美味しいコーヒーだよ」


良い香りの珈琲が提供される


「ああそれと。本日のケーキはシフォンケーキ旬のトチオトメサワークリーム添え。これタエちゃん目がないでしょ?」


うっ


チョビヒゲベレー帽の甘い誘惑に撃ち抜かれ、隠れ巨乳を押さえるタエコ。

シフォンケーキと甘酸っぱいイチゴのハーモニーの妄想が口内を潤す


「それ二つ下さい」


タエコのその様子を見ていたボンボンは、すかさず注文する。ご馳走させてくださいと言葉を添える


「まいど。ホントに美味しいよ。直ぐ持ってくるからね」


チョビ……マスターはカウンター奥に引っ込む。つかの間二人きりの空間


「いいの?ありがとー嬉しい。

わたし珈琲はブラック派なのですけど、甘いものと合うんですよねー」


とテーブル越しにタエコはボンボンの手を握る。

これは別に他意はない。家族で嬉しいことがあるとすぐこうやって互いに手を握り合う。その延長線上の行為に過ぎない。


でもボンボンは赤くなっている。

異常な位にね。


もうお分かりと思うが、ボンボンは初めてオクダタエコをみた日から一目惚れで、惚れに惚れて永久持続して今日(こんにち)まで至っている。


そして悲しいほどに知っている。目の前のオクダタエコは自分の想いや好意にもミジンコも気付いていないということ。

そしてあくまでも社長の息子としての認識や、仲間としてしか興味を持たれていないこと。

こうして手を握り合ってはいるが、ただの日常の行為でしかないであろうこと。

オクダタエコの顔がそう語っている……


「お待たせー。おや?。手を握っちゃってー。

やっぱりタエちゃん。この坊やの恋人なんじゃないの?」


デザートを持ったチョビが、ケーキをふたりの前にセットしながらにこやかに振る


「からかわないで下さいマスター。わたしのクセですよー。そんななら、マスターと浮気何度もしてる事になるじゃないですかー。

あっごめんなさい。迷惑でしたよね」


タエコに

『いえ……そんな……迷惑だなんて……と』

言葉が溢れそうになるボンボンであったが、流石に

『あら。嬉しい。ありがと』

なんて返されるのが落ちと分かり、自重した。


今ふたりの手は離ればなれになり、興味のほぼ全てをケーキに向けてトキメイテいるタエコを眺めている。

いつかこの表情を自分にも向けてほしい……胸の疼きを感じながら、ボンボンことコウサカジンはそう思うであった。




☆☆☆




コウサカジンは社長の息子ということもあるが、そこそこチヤホヤされてそこそこモテて今まできた。

そして高校時代までは普通の付き合いで恋人もいたが、手を繋いだりキスをする程度で、それ以上は踏み込みなかった。男女の行為に興味がない訳ではなく、その相手には失礼だか『この人じゃない』感じが半端なく、意識的に二の足を踏んだ。

なし崩し的に事故り、抜き差しならない関係に落ちるのを避けたのだ。


大学ではモテた。モテたというより、自分が会社の社長の息子だと知られるとアカラサマニ態度を変えた女子何人かに付きまとわれた。

結局。大学時代は恋人を作らず仲間と楽しく過ごした。

社長の息子じゃないコウサカジンに好意を向けてくれる娘も何人かいたが、もう年齢が年齢だし、付き合う=そういう関係に必然的になってしまうのでお付き合いは避けた。

『好きな人がいるので』

と嘘の断りを入れて。


家族ぐるみの身内みたいな関係で凄く綺麗な幼馴染の女子がいるので、その女子に頼み込んで大学の文化祭に来て貰って色々案内していたら、周りが勝手に察してくれた。


でも、女を知らない訳じゃない。


従兄弟に連れられて、何回かはその道の人と経験はした。

でもやはり満たされない感じがぬぐえず、その事にのめり込むことは全然なかった。


そして当たり前のように自分の会社に入って、父の方針で平社員から全ての部署を経験し、己を磨くよう諭された。


まずは母が異常なまでに気に入り常務にまでし、そして皆を説得し次期社長にしたという、オクダタエコを紹介された。



会った瞬間


雷が落ちた


それも特大の


ハリケーンの最中(さなか)黒々とした空を真っ二つに割る

あの常識ハズレなヤツ


ドドドドドッカーーーーン!!!!!


と落ちた!


恋にも一瞬で底の底まで落ちた!


もうこの人しかいない

もうこの人だけが全て

もうこの人だけしか見えない


もう人生の全てを賭ける価値がある




☆☆




ある日父の愛人という噂を聞いた。




噂を聞いて直ぐにタエさんに訊ねてしまった。


父と母に聞けといわれた。


思い返せば自分でもバカだと思った。

初めから父に聞けば良かった。

あの時は目の前が真っ白になり、噂を聞いた後にバッタリ会ったタエコさんに思わず訊ねてしまった。


嫌な思いをさせてしまった。


その日直ぐ、父と母のいる実家に行き、確認した。


そして愛人の話がただの噂に過ぎないと分かると、コウサカジンは父と母に自分のオクダタエコに対する想いを伝えた。

会社の為に有力な取引先の娘何人かとの縁談もあったが、全て断らせた。


人生を賭けて《オクダタエコを愛する》と宣言した。


父は


「そんなもんかねー」


と不思議そうな顔をしていたが、母は我が意を得たとばかりに父を説得した


「なぜわたくしがあなたの愛人にまでして、あの子を囲い込んだと思っているのですか?

あなたの浮気を避ける為ではありませんよ!

万が一にもオクダタエコに悪い虫がつかないように気を使ったのです!

見たところあの()(うぶ)でそういう事には疎そうでしたから、ああいうコに限ってろくでもない男の甘い言葉に乗せられてコロッと騙されることが多いわ。

だから守ったのです!

そして我が息子をどう説得してオクダタエコを娶らせるか思案したのよ。社長にさせて身内扱いして、オクダタエコにジンを預けて少しでも好意をもってほしいと願ったのです。

わたくしも息子コウサカジンと同じです。

会った瞬間オクダタエコに一目惚れしました!

女としてではありません!

人としてです。

あのオクダタエコは只者ではありません。

まだ目覚めたばかりですが、天性のカリスマ性があります。

あのコは化けます。

化けに化けておお化けします!

女の勘です!」


そして母ことコウサカレイは息子ジンに面と向かい言い放った


「全身全霊を賭けてオクダタエコをモノにしなさい。

わたくしも全身全霊を賭けてあなたを支援します!」


その顔は鬼気迫るものがあった。













コウサカジン

カッコいい名前だね。

タマゴワルゾウとかじゃなくて良かった(-.-)

もしそんな名前なら

テンションだだ下がりだよね


それにしてもすごかったねお母さん!

コウサカレイ!

なんかやり手で強そうな響き!



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