イレーネの青春(2)
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次回は4月6日(水)です。
水日──23:00投稿
ペーペーなので、前のどこぞの時間帯に手動投稿してます。
表示予定時間には投稿されています
☆
3月3日から新連載
[毒を盛られ続けて3年間。今日も私は生きています]
が始まりました。
毒を盛らづけながら屋根裏部屋に三年間も監禁された少女が、二つの王国で恋に揺れ動きながらも聖女に成って国を救う?物語です。
毎日投稿(玉切れまで、120話までは確定)致しますので
どうぞ覗いて見てください。
三人の王子殿下訪問の為に、エリザベート公女様はサプライズを用意したの。
何でもエルフという妖精をモデルに、狩人から女神のような姿に変身するというもの。
わたしイレーネはその衣裳を任された。
でもとても一人じゃ準備出来ないし途方に暮れていたら、わたしと良く似た名前の第二夫人のシレーネ様が助け船を出してくれた。
シレーネ様担当の侍女から衣裳のアドバイスを貰い、シレーネ様からも直接助言して貰った。わたしと名前が似ていることもあり良く可愛がっていただいた。
シレーネ様の実家の伯爵家が王都にあり、お茶会に招かれた時にシレーネ様の付き人として訪問した。わたし自身はお茶会には参加しないで、シレーネ様のご厚意で屋敷に秘蔵してあるドレスのコレクションを見せて頂いたの。
それから時の経つのも忘れてドレスを眺めていたら、屋敷のメイドの方から休憩がてらお茶に誘われたの。断る理由もないから受けてメイドさんに付いて行ったら、実はお茶ではなくてランチだった。
そこには当主であるブルボン伯爵……シレーネ様のお兄様と奥様のブルボン伯爵夫人、そしてシレーネ様と年の離れた弟のカイル卿が同席していたの。
カイル卿はシレーネ様と顔立ちが良く似ているけど、母親は別で一番若い側室の子みたい。
その当時はわたしと同い年の19歳で、学園を卒業して王宮の騎士に成ったばかり。
わたしは紹介されると、何故かカイル卿は顔を赤らめ挙動不審になった。その様子を見ていた伯爵夫人がわたしに
「イレーネ様は婚約者とか居られますか?」
そう聞いてきた。19歳で行き遅れたわたしは少しバツが悪く
「いえ。恥ずかしながら婚約者はいません」
今まで殿方から何度と無く口説かれたりしたけど、それは今に思えば婚姻を結びたいのではなくて、あわよくば一夜の相手として望まれたに過ぎないと分かっていた。
同僚の話から、わたしの見た目が遊んでいそうな……何と表現して良いのか……性に奔放な、軽そうな女性のように見えるらしくて、注意された事があった。
ただエリザベート様に鍛えられてからは、不思議とそういう輩は寄って来なくなった。
エリザベート公女専属侍女頭のイライザ姉様が言うには、以前のわたしは場末の酒場にいる娼婦のような雰囲気を持っていたらしくて、甘い言葉や金次第で身を売る女性の感じがしたという。
だから下心ある連中が寄ってきて、わたしを誘っていたらしい。
でもイライザ姉様達はわたしが優柔不断で自分自身で決断出来ない女で、しかも遊び人とは真逆の世間知らずのお嬢様だって知っていたから、そんな危ない輩から守ってくれていたらしいの。
イライザ姉様は使用人や街の人に声を掛けて、わたしがホイホイ変な輩に付いて行ったら、助けて欲しいとお願いしてくれたみたい。
それでわたしの貞淑が守られていたのね。
でもエリザベート様に自我をしっかり持ち、決断出来るように訓練されてからは、見違えるように素敵なレディに成ったと褒めてくれた。
けれど、どういう訳かわたしには縁談の一つもなく、行き遅れてしまった。
公女様の侍女といえば優良物件で、公爵家や次期王太子妃との繋がりが欲しい貴族家からの婚姻の誘いが絶えないと聞いていたけど、そんな事は無く寂しいものだった。
後から聞いた話によると、本当は実家に大量にわたしとの婚姻話が舞い込んでいたけど、エリザベート公女様が
「わたくしが良き殿方を選びますから、お任せいただきますか?」とのゴリ押しで、全て断ってたと聞いた。
ともかくお茶会という名の昼食会を終えたわたしは、伯爵夫妻のご厚意で御屋敷を案内して貰える事になった。弟のカイル卿がエスコートしてくれた。
ただわたしがまだ未婚の女性ということもあり、護衛騎士が一人付いて、少し離れて見守ってくれていた。カイル卿は終始顔を赤く染めて、わたしと微妙な距離を保っていた
──嫌われているのかな?
いきなり現れた行き遅れの女のエスコートを任されて、気分を害してしまったのかも知れない。わたしはそれ以上気分を悪くしないように、常に微笑みを浮かべて探るように接していた。
カイル卿に屋敷を案内されたけど、実際は当たり障りのない会話をして何事も無く終えた。
わたしはシレーネ様と一緒に公爵邸へ帰った。
後日。エリザベート様に呼び出しを受けて向かってみれば、そこにエリザベート様と共にシレーネ様も同席していた。わたしは侍女ではなく、客人のような扱いでティータイムを共にした。その席でシレーネ様が
「カイルの事をどう思いますか?」
「お優しく誠実な方とお見受けしました」
わたしは正直に答えた。わたしと同い年で背もそれなりに高く、騎士として鍛えてあるから逞しくもある。顔もシレーネ様の家系だけにあって、美形の部類に入ると思う。ただシレーネ様の弟にしては、目付きは悪くない。
シレーネ様のお母様が先代テイラム公爵夫人の妹にあたり、マリアンネ公爵夫人とシレーネ様は従姉妹同士になる。だからテイラム家の血筋特有の目付きの悪さを共有している。
けれど目付きの悪さは欠点ではなくて、なんとも言えない威厳と魅力を醸し出していた。
でも男性にはその目付きの悪さは受け継がれないらしく、弟のカイル卿もキリリとした目付きだが、怖くはない。
それにしても何故わたしは呼ばれたのだろう?
衣裳関係の話ならば侍女として扱う筈なのに、今はイレーネ・プロッサム子爵令嬢として招かれている。
エリザベート様がわたしに凶悪なまなざしを向け
「実は貴女に縁談があります。
相手はカイル・ブルボン卿です。
知っての通りシレーネ夫人の弟君にあたります。
わたくしは貴女に良き縁談だと思い、シレーネ母様と相談の上で貴女にお話を伝えたのよ。
どうかしらシレーネ。このまま進めても宜しいかしら?」
──えっ?カイル様との縁談?
わたしは呆気に囚われていると、シレーネ様が
「如何ですかイレーネ。
わたくしは貴女をとても気にいっているし、身内になるのなら同じ趣味を持っている者同士、気兼ね無く仲良く出来ると思うの。
カイルは間もなく男爵位を賜りますし、貴女との縁談がまとまれば公爵様が子爵に任じて下さるそうよ。
御屋敷も既に用意してあるし、貴女のご両親も異存はないわ」
貴族の結婚は家と家との政略結婚が普通。もう決定事項だろうけど、こうしてわたしに意見を聞いてくれるのは有難い。でも……わたしは……。
言葉が出ないわたしにエリザベート様は
「何か懸念が有るようですねイレーネ。
この縁談が不服なの?
それともカイル卿が気に入らないとか?」
断れないのは分かっている。
この前のブルボン伯爵邸へのお茶会に招かれたのも、面通しの意味もあるのだろう。
それなら尚更、腑に落ちない事がある
「以前お会いした時。カイル様は終始顔を赤らめ不機嫌なようでした。きっとわたしは嫌われたのだと思います。行き遅れのわたしなど押し付けられて、きっと不快な想いを無さっているに違いありません。
わたしには過分なご縁だとは思いますが、カイル様の気持ちを考えれば、わたしはこの縁談の相手には相応しくないのでは無いでしょうか?」
傷は浅いうちに塞ぐのがいいと思う。
政略結婚にはいくらでも応じる覚悟はあるけれど、あの優しく誠実なカイル様の幸せを壊したくない
「イーレネさん。貴女……馬鹿なの?」
シレーネ様が眉をしかめて、わたしを睨んだ。