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宴会

 ところが、その様子を見ていた父親がさすがに哀れに思ったのか、灰原に助け舟を出した。

「なあ、シンデレラだって年頃の娘だよ。お城の宴会に出たいのは当然の乙女心じゃないか……」

 実の娘への援護射撃としては些か頼りなかったが、継母も少し態度を軟化させた。

「……わかったわ。シンデレラ、あなたもお城の宴会に行きなさい」

 灰原は目を輝かせた。が、その途端に継母は意地の悪い笑みを浮かべた。

「このお鉢一杯のレンズ豆を灰の中にぶち撒けるわ。それを良いものと悪いものに分けなさい。一時間以内にそれが出来れば、お城に行ってもいいわよ」

 しかし父親は抗議した。

「そんな、まず不可能じゃないか」

「そうかしら? もし出来ないのならシンデレラ、お城へ行くのは諦めなさい。オッホッホッホ」

 継母はそういって鉢一杯のレンズ豆を灰の中にぶち撒けた。継母と父親が部屋を出ると、シンデレラは一人で灰の中に潜り込み、レンズ豆の選別を行った。それはとても辛い作業だった。静かに豆を拾わないと灰が巻き上がって咳込んでしまう。

「ゴホッゴホッ、これでは到底一時間で終わらないですわ……」

 灰原がひとりごちていると、窓をコンコンと叩く者がいた。白い鳩とキジバトだった。

「窓を開けてください。私共がお手伝いします!」

 灰原が窓を開けると、大勢の鳥たちが一斉に入ってきた。そして灰の中に潜り込み、レンズ豆の選別を行った。良いものは鉢の中に入れ、悪いものは自分で食べた。そうして、約束の一時間よりも早く作業を終えることが出来た。灰原は鳥たちに礼を言うと、良い豆の入った鉢を持って継母のところへ行った。

 ところが、それを見た継母はそれをひったくると、冷たく言い放った。

「ふん、これはテストで、これからが本題よ。二杯の豆をぶち撒けるから同じようになさい。制限時間は30分。出来なければこの話はなしよ!」

 継母が鉢二杯のレンズ豆を灰の中にぶち撒けて去って行くと、すぐさま鳥たちがやってきて、作業に取り掛かった。すると今度は30分もしないうちに選別が完了した。灰原はすぐに継母のところに鉢を持って行った。ところが……

「ごめんなさいね、あなたに着せるドレスを注文しようとしたら、仕立屋が完成までに十日はかかるって言うのよ。それじゃ宴会に間に合わないじゃない? だから今度のことは諦めてちょうだい。オッホッホッホ……」

 継母はそういうと、アナスタシアとドリゼラを連れてさっさとお城へと出かけてしまった。

 灰原は失意の中、ハシバミの木のところまでやってきて座り込んだ。やがて白い鳩がやって来たので話しかけた。

「色々やってくれたけど、無駄になってしまいましたわ。ごめんあそばせ」

 すると白い鳩が合図し、数羽の鳥がやって来た。彼らはなんときれいなドレスと金色の靴を持って来た。

「ポッポー、これを着て宴会に出席しなされ」

「……ありがとう!」

 灰原は早速着替えた。しかし、鏡を見てしょげてしまった。

「長い間の栄養不足でやつれてますわね……これではせっかくのドレスも台無しですわ」

「ポッポー、そのためにインコのメーキャップアーチストたちがおるぜよ。彼らの手にかかればハリウッド女優も真っ青じゃ。ただしメイクがもつのは宴会が終わるギリギリまでじゃ。終わったらスッピンが見られないように素早く退散するのじゃよ」

 白い鳩がそういうと、ふかふかの羽毛をしたインコたちが灰原に化粧を施した。鏡を見ると、これが私? と思うほど絶世の美女に仕上がっていた。


✴︎✴︎✴︎


 灰原が城に到着した頃には既に宴会が始まっていた。国中から集められた美女たちが会場にひしめいていたが、王子さまはその中に自分の目に叶う女性が見つけられずに、不機嫌そうにしていた。

 それを気づかって何とか王子さまの機嫌を取ろうと思った家臣が提案した。

「王子さま、舞踏などいかがでしょう。きっと楽しうございますよ」

「うむ……」

 王子さまはその提案を受け入れ、舞踏会が行われた。王子さまは色々な女性と組んで踊ってみたが、気にいる相手とはなかなか巡り合えなかった。

 一方、灰原はダンスのパートナーが見つからず、仕方なく一人で踊ることにした。ちなみに、社長令嬢である灰原は社交ダンスの心得があり、それなりに踊ることは出来た。

 灰原が踊り出すと、一気に注目を集めた。中世の人々の目には、灰原のモダンダンスは斬新で華麗だったのだ。しかも、灰原はインコのメイクにより絶世の美女に化けていた。招待客たちは突如現れたプリマドンナに目を見張った。

 当然、それは王子さまの目にとまることになった。王子さまは灰原の前までやってくると、ひざまずいて彼女の手に口づけしていった。

「お嬢さん、どうか、この僕と踊ってくれませんか?」

 灰原はあらためて王子さまの顔を見た。それは、彼女がこれまで見たことのないほどの美男子であった。

「光栄ですわ。こんなわたくしでよろしければ」

 すると王子さまは、灰原の手を取ってゆっくりと踊り出した。

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