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スズメの恩返し

 継母による灰原(=シンデレラ)への食料規制は厳しく、家人の食べ残しはおろか、家畜の餌をつまみ食いすることさえ許さなかった。

 灰原は外に出て、食べられそうな果実や草、キノコなどを探して食べた。何の知識もなく手当たり次第に試し食いしていったので、毒性のものに当たってお腹を壊したり、吐き気を催すこともあった。そうやってだましだまし食いつないできた灰原であったが、だんだんと意識も朦朧とし始め、目に見えて弱ってきた。

(こんなわけのわからない世界で生涯を閉じるなんて……まっぴらごめんですわ!)

 ある日、井戸に水汲みに行った灰原は、突然ふらふらと目眩がして、地面に倒れてしまった。もうこれでおしまいか……そう思って耳をすますと、何やらチュンチュンと弱々しい鳴き声が聞こえてきた。ふと見ると、一羽のスズメが茂みの中でうずくまっていた。なぜ飛び出さないのだろうかと思ってよく見ると、そのスズメは足に怪我をしていた。

「まあ、お気の毒に。これでは飛べなくても当然ですわね」

 群れからはぐれた小鳥が怪我をしてうずくまっていては、死を迎えるのも時間の問題だ。灰原にもそれくらいは察しがつく。とりあえず、慎重にスズメを手のひらに載せて、自分の部屋に運びこんだ。そして台所から出来るだけ度数の強そうなぶどう酒を失敬して傷口に塗り消毒した。そして灰原が食べられなかった木の実などを与えて養生した。

「とりあえずこんなことしか出来ないけど、こうして休んでいればいつか飛べるようになりましてよ」

 スズメは人間の言葉を話せなかったが、精一杯謝意を伝えようとしているように思えた。


 数日経った。灰原は相変わらずだましだましの食生活で、生ける屍となりつつあったが、スズメの方は徐々に回復していった。そしてある日、部屋の中で少しずつ飛ぶことが出来るようになり、完全に回復すると灰原はスズメを外に運び出した。スズメは大空へと舞い上がって行った。

(よかった……小スズメちゃんよくなったわ。でも、わたくしはもう限界……)

 灰原は衰弱のあまり、家の中に戻る気力さえ失ってその場に寝そべった。自分自身、生きているのか死んでいるのかさえわからなかった。

 とその時、空から黒いモヤモヤとした塊が近づいて来た。よく見るとそれは鳥の大群であった。彼らは次々に灰原の目の前に食べ物を置いていった。極度の空腹のせいか、灰原の目にはこれまでないほど美味しそうに見えた。そして夢中になってそれらに食らいついた。灰原が満腹になった頃を見計らってキジバトが言った。

貴女様(あなたさま)のおかげでスズメの子が命拾いしたと、私共一同感謝しております。この御恩は一生忘れません。どうかお困りの際は何なりとお申し付け下さい」

 こうして、灰原は鳥たちの信頼を取り戻し、再び食料にありつけるようになった。栄養が充分に行き渡り、元気を取り戻した頃、この世界での父親が帰るなり大はしゃぎで言った。

「きいてくれ! 王子さまがお嫁さん探しのための宴会をお城で開くことになった! 国中の年頃の娘はみな招かれる! さあ娘たち、存分に着飾りなさい!」

 アナスタシアとドリゼラは大喜び。タンスからドレスを出してはどれが似合うかと見せ合いっこをした。

 しかし灰原は顔を曇らせた。爪先から頭のてっぺんまでとても汚れていた上、ここしばらくの栄養失調で顔色はいかにも不健康だった。それでも、姉たちが嬉々としているのを見ると、どうしても灰原自身も王子さまの宴会に出てみたくなった。そこで、継母に尋ねてみた。すると……

「ばかおっしゃい。あなたのような汚らしい下女を宴会に参加させたら、我が家の恥だわ!」

 その言葉に灰原はいたく傷つき、失望した。

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