08 パテギア・トルクメニアン 王女の憂鬱③
ハルキ様を思う長い長い一日が終わり、翌日、運命の日――
世界の希望をいっぱい携えて、朝の光が私を出迎えてくれます。
そう、新しい朝が来た。希望の朝なのですね。
喜びに胸を広げ、私はゆっくりと深呼吸。黄金のティアラと海色のドレスを身につけ、いつもよりおめかし。王宮のバルコニーにて、ハルキ様の到着を待ちます。
スミスによると、ハルキ様は今回の依頼主であるエルフのルルシィさんのところへ立ち寄った後、こちらの城へと来て下さるそうです。この後、エルフの国での出来事の報告も兼ねて、お母様であるエリス・トルクメニアンとハルキ様との謁見が控えています。
「あ、あれは……!」
遠くの空に、キラリと煌めく白銀の翼。あれは、紛れもなくハルキ様を背中に乗せた白銀鷲です。彼の姿が少しずつ見えて来ました。
「ハ~~ル~~キ~~さ~~ま~~!」
白銀鷲の背に乗った王子様 (注:ハルキです) とその横の人 (注:ガーネットです……) へバルコニーから思い切り手を振る私。
だんだんと彼の姿が大きくなって来て、胸の高鳴りを感じる私です。白銀鷲の背より飛び降りた王子様が満面の笑みで私の前へやって来ます。
「ハルキ様、ガーネットさん、お帰りなさいませ! 本当に無事でよかった!」
ハルキ様なら絶対悪意を倒してくれると思っていたけれど……本当に……帰って来てくれてよかった。
「パフェ、出迎えありがとう。元気そうで何より」
「パフェちゃんただいま。無事に還って来たわよ」
そのままバルコニーから部屋の中へ入ると、思わず私は彼の胸に飛び込みます。
「ハルキ様。私、本当ハルキ様の事が心配で心配で……本当無事でよかったです……」
「パフェ、心配してくれてありがとう。まぁ、俺はそう簡単に負けないさ」
彼の体温が温かい。私……今、彼の胸へ顔を埋める事が出来て幸せです。
「ハルキの胸を借りていいのは今日だけですからね、王女様」
「もう、ガーネットさんのいじわる♡」
彼の胸から顔を離した状態でお姉さんの言葉へ返答する私。もう、ガーネットさんが此処に居なかったら、ハルキ様を独り占め出来たのに……まぁ、それは叶わないか。暫くハルキ様の余韻に浸っていると、女執事ブレアと最強執事のスミスが扉をノックし、入室して来ます。
「失礼します。ハルキ様、ガーネット様、ご無事で何よりです。こちらも昨日アルシューン公国より戻りました」
「ハルキ殿、ガーネット。女王様がお待ちですぞ。謁見の間へお越し下され!」
ブレアとスミスへ促され、皆で謁見の間へ向かいます。
女王の玉座へ私のお母様、エリス・トルクメニアン。そして、隣の玉座へ私。女王の横にスミス、私の横にブレアが立っています。ハルキ様とガーネットさんが謁見する形でお母様へ傅きます。
私のお母様である女王エリスは二人の活躍を称賛し、今迄なんでも屋としてトルクメニア国の悪を倒して来た事、エルフの国を悪意から救ってくれた功績を讃えてくれました。私もなんだか鼻高々です。
「ハルキ・アーレス。通常ならば身分相応しか入る事が赦されない我が国自慢の騎士団へ入る気はありませんか? 貴方の力ならば特例で認めてあげてもいいですよ?」
身分を重んじるお母様からは考えられない発言です。少しはハルキ様を認めてくれたという事でしょうか?
「女王様、大変光栄に思います。ですが、私には身に余る大役、まだまだ私の力で務まるとは到底思えません。私は私の出来る事を今後もなんでも屋として行う所存でございます」
「そう……ですか。いいでしょう。考えが改まった際は、いつでも王宮へ来なさい。歓迎します」
「女王様、ありがとうございます」
お母様も、ハルキ様もガーネットさんも皆、終始笑顔で謁見は終了となりました。
そして……。
「嗚呼~~、緊張したぁああああ!」
「ハルキ、顔が笑っていなかったわよ?」
用意された客間へと戻ったハルキ様とガーネットさん。ハルキ様が椅子へ思い切り背中を預け、両手を広げてだらんとなっています。どうやら緊張の糸が切れたようです。そんなハルキ様も可愛くて素敵ですね。
「だって、女王様だよ? なかなか謁見出来るもんじゃないしさ」
「でも、それを言うなら、そこのパフェとはいつも話しているじゃない」
名前を呼ばれた私は笑顔でハルキ様へ手を振ります。
「パフェは特別だろう? 王族っぽくないしさ」
「私が特別な存在だなんてそんな、ありがとうございます、ハルキ様♡」
うっとりした表情でハルキ様を見つめる私です。
「各国へ迫る悪意も退いた事で、平和な日々が続くといいですなぁ~~フォーフォッフォッフォ!」
スミスの高笑いが部屋へと響きます。皆が笑顔になります。やはり、平穏な日々が一番ですよね。
「スミスの言う通りね。最近大変な依頼ばかりで少し疲れたわねぇ。ねぇ、ハルキ。少し休みを取って、どこかへ行きましょうよ? 報酬もいただいた事だし」
「どこかってどこへ行くんだよ、ガーネット」
ガーネットさんのその言葉に閃いたのは私です。
「ガーネットさん! それなら、南のサウスドリームなんてどうですか? あそこなら観光名所もいっぱいですし、カジノもありますよ!」
「パテギア王女様、いけませんぞ!」
私の思惑にスミスが気づきますが、予想通り、ガーネットさんの双眸が輝き始めます。
「パフェ! それ良いわね、グットアイデアよ! ハルキ、行きましょうよ、サウスドリーム」
「そうだな……まぁ最近戦い続きだったしな……たまにはいいかもだね」
心の中で私がガッツポーズしたのは言うまでもありません。
「ハルキ様! ガーネットさん! わ、私もサウスドリームへ連れてって下さい!」
「なりませんぞ、王女様!」
「え、パフェも一緒に?」
「ハハーン、成程ね」
こうして私のサウスドリーム×ハルキドリーム計画が幕を上げるのです。




