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Ⅸ 天秤が傾く刻 35 メイ・ペリドッド 審判の刻①

 (あれは? 誰?)


 幼い子供が公園の砂場で遊んでいる。砂で出来たお城を固めるTシャツ短パン姿の男の子。お城が出来る光景をじっと見つめるワンピース姿の女の子。砂場の横で母親らしき二人が楽しそうに談笑している。


「よーし、出来た!」

「すごーい!」


 両眼を煌めかせ、砂のお城へ拍手をする黒髪の女の子。この頃は髪を長く伸ばしてしていたんだっけ? この頃まだ伸ばしていた腰までかかる黒髪。小学校の時、毎日綱引きの綱扱いされる事が嫌でバッサリ切った過去を思い出す。まだ、虐げられる前の私は、こうやって毎日を楽しんでいたのだろう。


「だろ、芽衣ちゃんと俺のお城だよっ! 俺が王子で、芽衣ちゃんがお姫様だ」

「本当に? 嬉しいな!」


 幼い頃の戯言だ。でも、眼前に映る私の瞳は輝いている。


「もう、ハルキったら。芽衣ちゃん大好きだもんね」

「芽衣、よかったわね。芽衣なら将来素敵なお嫁さんになるわよ」


 お母さん達も幼子達の遊戯を微笑ましい光景として眺めている。


「将来ぜったい芽衣ちゃんを迎えに来るからねっ! 約束だ!」

「うん、約束!」


 幼子は互いの小さい小指を絡め、ゆびきりげんまんをする。そして、視界は真っ白になり……。




「……最悪な寝覚めね……」


 自室で目が覚めた私は、思わず頭を抱える。転生前の完全に忘却していた筈の記憶。過去の夢を見るなんていつ振りだろう……。それもこれも私の眼前に突如現れた〝あいつ〟のせいだ。


「……完全に失念していたわ。橘悠希……そんな男も居たわね」


 幼い頃父親と母親、三人で住んでいた家。確か隣に住んでいた男の子だ。母親がマルチ商法へあいつの母親を誘った事で、隣人トラブルとなり、親が離婚し、あの家を離れた事で疎遠になった。高校でも同級生だったらしい。周囲との関係性を完全に遮断していた私にとってはどうでもいい情報だった。


「フッ……幼い頃の約束を果たしたつもりなんでしょうけど……」


 あの記憶が本当なら、そういう事なんだろう。子供の戯言なんてよく覚えているものだ。思い出す私もどうかと思うけど……。


「起キタノカメイ? ドウシタ、珍シク口元ガ緩ンデイルゾ?」

「なんでもないわ」


 ベットから身を起こし、黒いレースの入ったネグリジェから普段の服へと着替える私。着替えシーンを観察していたエロ猫は、部屋の外へ追い出しておく。


「守護者はいつでも姫を傍で見守っているものだ」

「エロマリンさん、殺されたいの?」


 着替え終わった瞬間を見計らったかのように青年姿で登場するトルマリン。耳元で囁こうとする死神の顔を指で静止し、冷笑する私。どいつもこいつも私を姫扱いしようとするのね。今の私は姫ではなく、魔女。誰からも干渉されるつもりはないわ。


「朝ご飯の準備をするわよ、エロマリン」

「呼び名を変えて照れ隠しするのは止めておけ、メイ」


 私の死神は相変わらずプラス思考だ。

 朝ご飯を食べ、嵐の前、日常のひと時を過ごした私は、審判の魔女として、私は死神と決戦の地へと赴くのであった。


 生誕祭当日。王都アルシューネは祝賀ムードで賑わっていた。パレードが開催される城へと続くメインストリートは色彩(いろどり)豊かな装飾が施され、お祭りの露店も沢山並んでいた。


生前(あっち)の露店をそのまま持って来たかのような並びね。まるで|誰かが模倣した$さて、誰でしょう?$かのようね」


 りんご飴のような紅宝(ルビップル)飴、野菜とお肉を小麦麺で絡めて炒めた炎熱麺(インカヌードル)、クレープに遊戯が出来る露店。極創星世界(ラピスワールド)でまさかこんな光景に遭遇するとは思えなかった。


「パレードハ昼カラノヨウダナ。ソレマデ祝賀ムードヲ堪能シテモイイダロウ」

「ええ、それもそうね」


 様々な種族が祭を楽しむ様子はまるで仮装祝祭コスプレフェスティバル。でもこの世界では仮装ではなく、正装だ。


『スピカ警備隊各隊員、各地点配備完了したっす~~。準備万端っすよ~~』


 私の脳裏へスピカ警備隊副隊長ヴェガの声が届く。彼が副隊長な所以、それは亜人としての強さだけではない。特定の者へ声を届ける伝令力――彼の場合は三キロ圏内に居るスピカ警備隊全員へと届ける事が出来る。彼が居るだけで隊員同士の連携及び、作戦の成功率は格段に上がるという訳だ。


「後は炙り出される瞬間を待つだけ……という事ね」


 作戦の前に、露店のクレープでも食べる事にしよう。甘い物には集中力を高める力があるの。甘酸っぱい魔法を体内へ取り込んで、後は刻が来るのを待つば……。


「いやぁ、メイちゃん。こんなところで奇遇だねぇ!」


 考えを遮られ、背後からの声へ振り返る。肩までかかる大海原のような蒼い髪。貴族が身に着けるようなシルクのシャツに瞳と同じ水色(アクアブルー)のベスト、細い脚が目立つ黒いズボンを穿いた青年が立っていた。


「……奇遇じゃないわ。どうせ意図があって来たんでしょう?」


 水瓶座の加護――クレイ・アクエリアスは端正な顔から貼り付けたかのような爽やかな笑顔を私へ向けて来る。


「つれないなぁメイちゃん。僕はお祭りを楽しんでいただけだよ? 人をそんな怪しい人扱いしてないで欲しいな」

「勝手に〝ちゃん〟付けしないで貰えるかしら? クレイ」


 その大袈裟な仕草が余計に疑わしく見える。私の肩で黒猫が彼を静かに威圧していたため、肩を竦めて見せるクレイ。


「そう敵視しないでくれよメイ。何かしようとしているんだろ? 僕は偶然(・・)見つけた君の事が心配で声をかけたんだからさ」

「結局全然偶然でも奇遇でもじゃないじゃない」


 しかし、彼からは悪意も感じられない。敵対する様子はないらしい。


「で、あの修道服の守護者はどうしたの?」

「嗚呼……今日彼女は忙しくなるだろうからね。今は別行動さ」


 こいつ、やはり知っているわね。


「分かったわ。私の邪魔をしないなら、あなたを裁くつもりはないわ。分かったらお祭りの続きを楽しんでいて頂戴」

「君と一緒にお祭デートでもしようかと思ったんだけど、その様子じゃあ無理そうだ。デートには今度改めて誘う事にするよ、メイちゃん」


 〝ちゃん〟付けへ文句を言う前に、クレイは人混みへ紛れ姿を消すのだった。


「どう思う? トルマリン」

「警戒スルニ越シタ事ハナイガ、今回裁ク相手デハナイ」


 黒猫と概ね同意見だ。さしずめ彼は、この一連の事件を知っているジョーカーといったところだろうか?


『隊員へ継ぐ。パレードが始まる。警戒を怠るな!』


 ヴェガの伝令力を通し、レオ隊長が隊員全員へ指示を出す。

 そう、私は私の使命を全うするのみ。運命の刻は刻々と近づいていた。


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