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12 栗林芽衣④ 転生者★

挿絵(By みてみん)

クレイ・アクエリアス イメージ

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「で、どうして私達を殺しに来た相手と普通に紅茶を飲んでいる訳?」

「まぁそう言わないでよメイちゃん(・・・・・)。僕と君は似た者同士(・・・・・)なんだからさ」


 アルシューン公国の一角にある小さな屋敷。月下にて繰り広げられた激しい戦闘の後、私――メイ・ペリドッドとその守護者、トルマリンが住んでいる屋敷に、何故か月下の来訪者――クレイ・アクエリアスと守護者、アメジストは転がり込んで来た。


「貴方にちゃん(・・・)付けされる道理はないわ」

「僕の事は親し気にクレイって呼んでくれよ!」


 こいつ……人の話を全く聞かない我が道を行くタイプだ。トルマリンは興味無さそうに猫姿で銀皿に注がれた|温めの$猫舌仕様$ホットミルクをペロペロしている。


「メイちゃん、この子の話も聞いてあげてぇ~。私達が此処に来た理由をお伝えするわぁ~」

「はぁ、貴女もちゃん(・・・)付ですか……」


 そう私に告げるは水瓶座の守護者(アメジスト)。それにしても彼女、土砂降りの雨に打たれたかのように濡れていた修道服は一日天日干ししたかように乾いている。あの濡れ具合は(わざ)とだったのだろうか?


「細かい事は気にしない~~。自己紹介をするわねぇ。私はアメジスト。水瓶座の守護者ってのはもちろん隠しているわ。表向きは、此処アルシューン公国、王都アルシューネに点在するラピス教会の中央(セントレア)支部に所属する修道女(シスター)ジス(・・)よ」


 以前トルマリンから聞いた話だが、極創星世界(ラピスワールド)に創星の守護者はたった十二名しか存在しない。その強大な力により、国家権力や闇の眷属に利用される、もしくは狙われる事も必至。よって、素性を隠して生活している者がほとんどらしい。恐らくアメジストも然りなのであろう。


「んで、何処にも所属していない僕がクレイ・アクエリアス。水瓶座の加護を与えられし転生者(・・・)だ」

「ん? 転生者?」


 思わず私は反応してしまう。私と同じ転生者が目の前に居る。転生者との相対。極創星世界(こちらの世界)に来て初めての出来事だった。


「そうだよ、ただね、僕の場合は、君の住んでいた和国と違って紛争の多い国に生まれたのさ」


 クレイは昔語りを始める。子供が自身の背丈よりも大きな銃を抱え、明日食事に有りつけるかどうかも分からない世界。親は紛争に巻き込まれ死に、妹は敵の組織に目の前で殺された。生きるために生前から戦い方を叩き込まれた彼は、仲間に裏切られ、最後は爆死したという。私の虐めや狂った母に振り回された人生がちっぽけに見えた。


「クレイ、貴方を誤解していたようね。ごめんなさい」

「やっと僕の事呼んでくれたね、メイちゃん!」

「だからちゃん付けはやめて。メイでいいわ」


 素直に謝罪する私の両手を握るクレイに対し、苦笑するしかない私。


「もう五年になるわねぇ~。魂が消滅する前、私は転生の儀式にて彼の御霊を呼び寄せた。そして、水瓶座の加護を与えたの」


 アメジストが補足をする。そして、彼女が教会で市民の懺悔を聞く中で、悩める子羊の人助けをしていたらしい。


「王都の貴族達も腐敗しきってるが、魔族と繋がっている商人や奴隷制度。貧困層が住むならず者の街だってある。そういう奴等を見ると反吐が出る」

「まぁ、その意見には賛同するわ」


 私が罪人の善悪を問い、審判を下す行為と同様、彼も彼の信念の下、この世界を生きていたらしい。


「そんな中でここ最近、突如現れた〝漆黒の魔女〟の噂。びっくりするわよねぇ~。昨日まで苦しんでいた子が『女神様のお蔭で救われた』って教会へお礼に来るのよぉ~?」


 なるほど、確かに極創星世界の女神信仰を考えると、創星の女神様が救ってくれたと信じて疑わないだろう。


「創星ノ加護ヲウケタメイガ裁ク訳ダカラ、強チ間違イデハナイ」

「そうねぇ~トルマリンちゃん。そして、漆黒の鎌や黒猫の噂で貴方の事を思い出したのよ~? だからこうして会いに来たって訳」


 ホットミルクを飲み終わった黒猫は私の肩に飛び乗る。


「あなた達の言い分は分かったわ。でも、クレイ、私は誰とも組む気はないわよ?」


 私は彼の水色(アクアブルー)の瞳を真っ直ぐ見据える。彼は笑顔でこう返す。


「理由は?」

「元々私は一人だったの。それは今もこれからも変わらない。貴方は貴方が思うまま信念の下、行動すればいいわ。私は私の道を行く」


 私は立ち上がり、皆が飲み終えたカップを下げていく。


「メイちゃんが人間だろうが悪魔だろうが、僕は全てを受け入れるよ?」

「気安く〝ちゃん付〟しないでくれる?」


 今日出逢ったばかりの人間に心を開ける程、私は人間が出来ていない。最も今の私は悪魔だ。心を開く事自体が滑稽であると言える。


「今日はお話出来てよかったわ、メイちゃん。行きましょう、クレイ」

「もっと話したかったんだけど、残念だなぁ。また来るよ、メイちゃん」


 交渉を諦めたのか、端からそのつもりはなかったのか。アメジストとクレイが立ち上がり、帰り支度をする。


「今後は執行現場で逢う事もあるでしょうから、よろしくねぇ、メイちゃん」

「執行の邪魔をしなければ特に危害は加えないわ」


 軽く挨拶を交わし、二人を玄関先まで見送る。そして、帰り際、黒猫(トルマリン)が青年姿となり、アメジストへこう告げる。


「アメジスト、メイは我を蝕んでいた毒、既に解析(・・)していたぞ?」

「あら~。知っていたわよ? 駆け引きはお互い様でしょう?」


 守護者たる者、あの程度で死ぬ筈がない。トルマリンは私が血清を使わずとも、漆黒の鎌で打ち消す事をせずとも恐らく……。


「フッ、まぁいい。せいぜいその加護持ちと仲良くするんだな」

「御機嫌よう、月下の来訪者さん」


 スカートの裾を掴み、私は軽くお辞儀をする。


「加護持ちって……その言い方気に障るなぁ。ま、いいや。また会おう、メイちゃん。天秤座の守護者」

「あ、そうそう。最後に忠告しておくわ~? 上級魔族には気をつけてねぇ~~」


 そう言い残し、水瓶座の守護者と契約者は常闇へと消えていったのである。


挿絵(By みてみん)

水瓶座の守護者アメジスト イメージ

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