世界中が戦争に巻き込まれました、なんとかしましょう
始まりはなんだったのか。
そもそもは先帝の暗殺がキッカケかもしれない。
だが、直接はザディア狂乱による先代聖女の死。
混乱を収めるために、外部に敵を作り、その間に内を固めようとした。
敵とも連携をとり、出来るだけ被害の少ないヤラセをやろうとした。
人外の2人なら出来ると思ったのだ。
ところが事態は思わぬ方向に転がった。
皇帝が、聖女を信仰する国々が、戦争に夢中になった。
仇討ち、名誉欲、領土争い。
戦争をする理由なら盛り沢山。
そして、止まらない。一度始まった戦争は、簡単には止まらない。
「最終手段よ。止められるとしたら、大皇后様」
「はい。私がお会いします」
「ええ。そうして。そして、エールミケアは陛下から離れないように命じて」
「畏まりました」
監禁の最中の大皇后様に会う。
龍族以外は不可能だ。
とにかくこの戦乱を収めないといけない。
皮肉な事に、世界を巻き込んだ大戦でもっとも優位に戦いを進めていたのが、二国から攻め込まれた筈の帝国だった。
アラニアを滅ぼし、大陸に残った二国へ逆に攻め込んだ。
聖女側は、自分達の大陸に被害は無いが、多くの将軍と兵士を失っていた。
大問題なのはオーディルビス王国。
野心的で、優秀な国王に率いられたからこそ、貧しくとも一枚岩で耐えていた。
その頭がいなくなったらどうなるか?
今、オーディルビス王国には地獄が顕在化していた。
国としての統治は失われた。
兵士自らが、自国民を略奪して周り、弱者は殺され、犯された。
無秩序が国を覆っていた。
そして、龍姫様と聖女は
「とにかくオーディルビスをなんとかしよう」
という事で一致団結した。
とにかく帝国の前進を止める。
その間に聖女は力をふるい、オーディルビスに祝福を与える。
2人とも「自分たちがこの事態を招いた原因」として、本来は無関係なオーディルビスの民を守ることにしたのだ。
その為の最初の一手。
大皇后様の解放。
私の肩に、和平がかかっていた。
大皇后様に会う前に、各国の状況を確認する。
一番すごかったのはアラニア。
逆レ○プで敵国の王子を娶る。国を半分に割るとか好き放題していたソレイユ様。
この「敵国の王子と結婚する」という意味の分からない行動は、恐ろしい結果を生んだ。
抵抗勢力が勝手に瓦解したのだ。
一番血統の良い長男が王として、国名もアラニアのままで引き継いだ。
もちろん、実権はソレイユ様。
だが、立場は妃だ。
王の方が上である。
内乱で国力を削るよりも、ここは長男をたて、然るべき時の為に力を蓄えるべき。
そんな意見が続出した。
なにより、実際長男は優秀だったのだ。
愚かな戦争も最後まで反対していた。
逃げ遅れたのも、他の王族を逃がすことを最優先にし、国を守りきれなかった自分は、王と心中するつもりだったのだ。
平和な時には優れた王にはなれるかもしれない。だが、戦乱の王というタイプではない。
そう自覚していたからこそであった。
その結果、ソレイユ様に見つかり逆レイプ。
セッ○スの相性で、無理矢理娶らされた王子様。
王子様は国内復興を第一にした。
兵士がいなさすぎるのだ。
殺され過ぎた。
龍姫様からもたらされた黄金で、食糧を買い込み、とにかく民衆の食糧確保に全力を注いだ。
兵士と言っても、ほとんどの兵士は常に戦場にいるわけではない。
殆どは普段は農作業をしたりしている。
特に今回は全力で攻め込んだため、その農民の兵士達が犠牲になった。
つまり、耕す人達がいなくなってしまったのだ。
待っているのは飢饉である。
アラニアの新王になったソレイユ様の旦那さんは、その民衆を落ち着かされるために、食糧庫を開け放った。
そして、
五年分の食糧は備蓄してある。
心配しないように。
戦争は終わった。
生き残った兵士達は家族の元に帰り、家族を守りなさい。
と全土に通達。
その結果、ゲリラは崩壊した。
ゲリラ参加者の元兵士達は、我先へと家族の元に帰ったのだ。
そこまで新王は狙ったわけではないだろう。
だが、結果的に、ゲリラは大量の兵の流出を招いた。
そしてなによりも
「わたしは城に帰りたい。お兄様と戦うなんて有り得ない」
と新王の姉妹は城へ帰還。
残りは次男と四男。
姉妹が離れるのを見た次男は
「もはや戦う意義はない。俺は聖女様の大陸にいく」
そして四男だけになった。
四男は徹底抗戦を指示。
戦う事になったが、瞬殺だった。
ソレイユ様が襲いかかり全滅。
こうして、アラニアは平定されてしまった。
しかし、問題は宗教。アラニアは聖女。帝国は神教。
ソレイユ様は大の聖女嫌い。
しかし、そこで新王は
「国は神教信仰に変わるが、国民は自由にするように」
と通達した。
そして、アラニアは公国となり、帝国の一領土となった。
次、ラマルド公国。
エルメルダ王国からの兵は、カレンバレーとサウザントで防いでいた。
ジュブグランとダリスグレアが頭のため、兵の損害を最小限にする陣列をとり、ひたすらに耐えていた。
ここは当初の計画通りだ。双方もっとも被害が少ない。
ダリスグレアの肉の壁の犠牲者ぐらい。
次、ディマンド公国。
ここは双方被害が甚大だった。
攻め込んだアディグル王国は、当初は優位に進め、前線を押し込んだ。
だが、ヘイルカリ様率いる援軍が到着した頃には勢いは止まり、乱戦となった。
そして、その乱戦でマディアクリアがキレた。
敵味方関係無しの大暴れを乱戦の最中に発動。
ヘイルカリ様が慌てて味方を引き上げさせたが、それでも被害は甚大になり、双方ボロボロになった。
途中からディマンド公国の指揮はヘイルカリ様がとるようになり、戦線を立て直したものの、前線を荒らされ、ディマンド公国はかなりのダメージを受けた。
アディグルも悲惨だ。
聖女の大陸からの援軍込みの連合軍だったのだが、今や、その援軍がいなければ軍として成り立たない程のダメージを受けた。
一刻も早い聖女の祝福待ちの状況。
もはや攻め込むどころか、攻められても守れない状況に追い込まれていた。
続いて海。
ユレミツレに帰ってこいと指令を出しても帰って来ない。
海に浮かぶ船を燃やす快感に目覚めてしまったらしい。
結局、聖女の大陸から来た軍船は殆どが沈められた。
ついでにオーディルビス王国の船も全部燃やしていた。
あとなんか、南群島の商船まで沈めたみたいです。ああ、大変なことに。
聖女の大陸には戦争はない。が大変になっていた。
聖女の力は信仰エネルギーと、大地や海の生命力を吸い取り力とする。
その力を祝福として与えるのだが、祝福の儀式には時間がかかる。
こんな世界中に兵士が散らばっていたら、祝福やっている間にどっかが死ぬ。
そうこうしている間に、聖女の大陸の祝福の効力が失われつつあった。
他に集中しすぎたのだ。
豊かな土地は、貧しくなり、元砂漠の場所には渇きが戻りつつあった。
こうなれば、信仰エネルギーも減る。
聖女はジリ貧に陥っていた。
この惨状をどうにかしないといけない。
私は幽閉中の大皇后様に会うことができた。
そこらへんは龍族ですから、なんとでもなります。
すると
「ああ!フェルライン!噂はこの幽閉の身にも聞こえています。世界中が戦乱に巻き込まれたと」大皇后様の嘆き。
「はい。大きな戦乱です。もはや戦をしていない国はありません。この帝国内の公国も全て兵士を出しています」
「あの子の焦燥も分かります。しかし、このような事態を防ぐためだったのです。フェルライン、どうすれば、戦乱は止められますか?」
「大皇后様、よくお聞きください。一度火がついた戦乱は簡単には止まりません。とにかく民の犠牲を防ぐことを第一に考えます。その上で問題があります。オーディルビス王国の国王が亡くなりました」
「な!?なんですって!?」
「その結果、オーディルビス王国は地獄と化しています。略奪につぐ略奪。あの王だからこそ、貧しくともオーディルビスは成り立っていたのです」
「そう思います。オーディルビスは、統一した先代、そして、あの王が優秀だからこそ保っていた」
「大皇后様、龍姫様は既に聖女と、この戦を止めるべく話合いを進めています。双方ともこのような事態は望んでいません。その前に、とにかく、オーディルビスの混乱を止めないといけない」
「そう思います。無辜の民が犠牲になるなど耐えられません」
「オーディルビスの貧しさは、聖女の祝福で挽回が出来ます。聖女に力を奮わせる。そのためには、まず帝国の進軍を止める必要があります」
「現状攻め込んでいるのはどこですか?」
「アラニアは滅びましたが、王子をたてて公国として復興させました。こちらはもう戦は終わっています。次にディマンド。こちらは双方戦争が継続できる状況ではありません。被害が激しく、実質的な休戦状態です」
「なんと痛ましい……」大皇后様は悲しそうな顔をする。そうだ、大皇后様はディマンド公国出身だ。
「残る一国、ラマルド公国。ここに陛下が向かわれています。兵士達の損害もほとんどなく志気も高い。ここは龍族と、聖女の直属部隊が指揮を取っていたので、被害を抑えていたのです。ここが荒れると、聖女も力を奮えません」
「なるほど。陛下を止めることが目的ですね」
「はい。大皇后様。陛下をとにかく、この新都に戻す必要があります。その間にオーディルビスの混乱を収めます」
「分かりました。一度は幽閉された身。怖いものなどありません。次男を立て陛下を弾劾します。流石に引き上げてくるでしょう」
「大皇后様、それは最後の手段です。まずは解放と、弾劾だけで……」
「フェルライン、皇室の礼儀は私の方が詳しい。そこまでやらないと、誰もついて来ません。私は陛下の手の者に殺されます。戦乱を止める為です。出し惜しみなど出来ません」
大皇后様は決意された顔で
「龍姫に命じます。一刻も早い戦争の終結を目指すようにと」
「畏まりました」




