跡継ぎ問題って本当に大変ですね
龍姫様、犯人分かっちゃいました。
「一刻も早く聖女を暗殺するのだ!既に混乱に乗じ攻め込める軍勢は準備をしている!」
こんな短期間に兵を揃えられる訳はない。
そもそも陛下は聖女との全面対決に慎重だったのだ。
どう考えても犯人は皇太子。
しかし、親殺しな上に、せっかくの帝位を失いかねない。
正直有り得ない。
皇太子は馬鹿ではない。
だが、この準備の良さは考えられない。
「知りうる人間か…」
私の使命は、知りうる人間を攫うことだ。
チャズの拷問で全てを吐かせる。
皇太子が犯人と確定した今、犯行を指示した人間を直接痛めつける意味はない。
それよりも実行犯との繋がりだ。
皇太子が直接犯人と連絡とったわけはない。
絶対に間がある。
となれば
「秘書官のディメイド・アレス・コトレフね」
第一秘書官。
こいつが知らないわけはない。
攫う人間が決まった。
龍姫様に犯人の目処と攫う相手を報告。
「速やかに準備するように」
と命じられた。
チャズと打ち合わせして
「ディメイドは男。龍族化は無理。人のまま、人として吐かせる。大丈夫?」
「フェル、心配してくれて嬉しいわ。もちろんよ。龍姫様のご期待には確実に応えるわ」
「ええ」
チャズは悪趣味だが、拷問のプロだ。
信じよう。
投影装置というのは凄い高いし、魔法エネルギー使うので、付けっぱなしなんて有り得ないのだが、今龍姫様の部屋では付けっぱなしだった。
『ジュブグラン!!!ちょこちょこ動くな!!!殺してやるからさ!!!』
『カレンバレー!人族と互角で恥か!!!???この聖女様の隷、ジュブグランが、龍族の貴様に敗北を味合わせてやる!!!』
予想通り、カレンバレーとジュブグランは互角。
だが、戦慣れしているジュブグラン有利
『ガジャロブ!!!どう殺されたい!!!???部下の前で八つ裂きがいい?ふふふ!安心して!大丈夫!目の前で部下を殺すまで生かしてあげる!!!』
『アリスウル!聖女様の敵!覚悟しろ!!!』
こちらも互角だが、ウルが若干押している。
そして最後
『アハハハハハハハ!!!!!私相手に5人ですか!?過分な評価に震えますわ!』
そう、ユレミツレには5人がかり。
暗殺部隊残り全部vsユレミツレである。
ヒルハレイズは早々に「1対1で勝てるわけがない」と投げて、集団戦にしたのだ。
しかし、ユレミツレの脚力は異常だ。
かすっただけで人は死ぬ。
囲って戦うのもかなり辛い。
膠着状態だった。
「ふむ。まあまあね、ジュブグランはまあ仕方ないわ」
「追加の支援は必要ありませんか?サウザントはいつでも行けます」
「ユレミツレが辛そうなら派遣しましょう」
私は私の仕事をしよう。
誘拐である。
ディメイドの誘拐自体は簡単だ。
深夜、忍び込んで浚えばいい。
龍族の身体能力をもってすれば容易い。
忍び込めば転移で移動すればいい。
本当に簡単に済んだ。
そして
「チャズお願い」
「ええ。龍姫様の御命令、必ず果たすわ」
それよりも大切なこと。
皇太子が犯人ならば、色々困るのだ。
皇太子を告発しても国が混乱するだけだ。
それは困る。
なので
「そ!そんな!信じられません!」
皇后様に会った。
陛下の殺害に手を貸したのは皇太子と伝えた。
「もちろん、我々も信じがたいです。しかし、証拠は既に揃いつつあります」
実際、状況証拠はどんどん集まっていた。
あとはディメイドという証人に吐かせればいい。
「皇后様にお願いしたいのは、その先です。皇太子殿下が、陛下殺害に手を貸したとなれば、当然帝位は流れます。その先ですが…」
「…待ってください。第2皇子も第3皇子も帝国を継ぐ器とは思えません」
そうなんだよね。
だから、皇太子は無理が出来たと思う。
第2皇子は、精神に弊害があるし、第3皇子は筋肉馬鹿である。
誰もが有り得ないと思う組み合わせ。
なので
「陛下のお孫さんにするしか…」
「し、しかし。幼さすぎますし、皇太子殿下に罪があるとすれば、その子も当然…」
まだ9歳だ。
「皇太子殿下は、警備に隙を作っただけ。微細なミスという話にしましょう。それでも帝位を継ぐのには困りますから」
困惑したまま、皇后様は
「分かりました。明らかな証拠が出ればそうしましょう」
ディメイドは吐いた。
口が堅くないと秘書官などできない。
その常識をぶち壊すほど、チャズの拷問は悲惨だった。
即座に証言を元に証拠を揃え、皇后様に説明。
「…信じられない…ですが、全ての証拠はそれを示しています」
目を閉じて
「心を整理します。1日時間をください」
その1日
聖女から連絡が来た。
「もう知ってるわ、馬鹿」口頭一番がこれ
『じゃあ引き上げなさいな』
「皇后様が1日心を整理したいって」
『はあ?その為にうちの子たちは死にそうになるんだけど?』
「こっちは一人投入やめてるんだけど」
『あたり前でしょう。化け物ばかりだし』
罵詈雑言
そして
『んで、皇后が動いたってことは』
「幼少の皇帝ね。満足?」
『いいえ。あなたの影響は、皇后を通じて発揮されるでしょう?最悪よ』
「帝政には口出ししないわ」
龍姫様と聖女の話し合いは終わった。
そして
「皇后様から連絡きたわよ!皇太子を告発するわ!」
それはクーデターと呼ばれた。
皇太子追放。
その子の即位。
皇后が考えられるストーリーではない。
では誰が?
となると、すぐ龍姫様の名前が上がった。
しかし、表立っては動かない。
淡々と命じられたことをしていた。
聖女との争いは停戦となった。
国内の混乱を収めるのが先だ。
幸い、内乱は起きなかった。
皇后が龍姫様と繋がっている事実と、後継者は、幼い以外は問題がなかったこと。
一年、緊張状態だった帝国だったが、なんとか凌ぎきった。
一方で、聖女との関係は改善とはいかなかった。
停戦状態である。
そして、なんとか関係改善に向かって使者が出ることになったのだが。
それが私だった。




