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館の中にいる人族も危ない連中だらけです

今回は全部三人称で進みます

「レイラ!最近のあなたは目に余ります!」


テネシーは滅多に怒らない。

ミスがあっても、皆でフォローしましょうね。という形をとり、一人を責めることなど殆どなかった。


「も、申し訳ありません」

レイラが謝る。


言いがかり、あら捜しは、見つけようと思えばいくらでも見つかる。

今回は龍族への配膳の最中にいなくなったことだ。

おそらく、龍族の会話を盗み聞きしていたのだろう。


「龍族の方の不興を買えばどうなるか、半年もいるあなたならわかるでしょう!?あなたが不興を買うならともかく、今回は、グレイやミカミが怒られるところでしたのよ!」

下手をすると、他の人間が大変な目にあっていた。

そう説明されると、テネシーの怒りの理由も皆は納得できていた。


もちろん、これはテネシーの演技。

だが、テネシーの怒り自体を見たことがないので、皆騙されていた。


「…はい」

「少し反省して謹慎なさい。3日間は出なくていいわ」

謹慎。めったにない処罰。

少なくともテネシーがリーダーになってからは一度もない。


めったにしないので、その処罰内容は誰も知らない。

だからでっちあげる。

それがテネシーの考えた作戦だった。


「グレイ、ミカミ、反省のお手伝いをしてあげて」

『かしこまりました』



ケラケラ笑い声と悲鳴、時折聞こえる叩く音。

謹慎部屋でなにが起こっているかはすぐわかる。

そして、テネシーはあからさまにそれを容認していた。


その状況を理解した、人族の何人かは、その謹慎部屋に入って、リンチの手伝いをした。


一方で、それが目に余ると思い、何人かはテネシーのところに止めるように進言するが


「彼女の件は、龍姫様と、フェルライン様に報告済みです」

とテネシーは事務的に返す。


「でも、あんなことをされたら」

「責任は私がとります。そもそも今回の件だけの処罰だけではありません。彼女の態度は和を乱します」

そう言って話を打ち切った。


それを見ていた何人かは、さらにまたリンチに加わる。

全員が全員ではないが、それなりな人数は参加した。


それでも半分以上は顔をしかめ参加はしなかった。

それでいいのだが


「参加しないのは良いことです。ですが邪魔はさせません」

テネシーは釘をさし邪魔はさせなかった。



レイラは三日間で酷い有様になっていた。


美しい顔は腫れ、服はもう原型をとどめていない。

テネシーは気絶しているレイラを運び、水で清める。

フェルラインから貰った治療薬で傷をいやしていた。


「…え?」

レイラが目覚める。

「お疲れさま、もう三日目よ」

「ひ、ひぃ」


テネシーを見て怯えたように後ろに下がる。

テネシーは直接リンチに参加していないが、彼女が実質指示したようなものなのは理解していたからだ。


「もう謹慎は終わり。今日一日は傷を癒して眠りなさい」

傷薬で裂傷をいやす。


「そ、そんな。あんな、ことをされたら」

「恨む?復讐でもする?やめておきなさい」

淡々と言う。


「いい。ここに長くいたければ耐えなさい。忘れなさい。復讐とか、恨みとか考える人はみなすぐいなくなったわ」


「…テネシーさんもやられたことがあるのですか…?」

怪訝な顔で問うレイラ。


「忘れたわ」

そう言ってテネシーは傷口に布を巻いた。



復讐と呼ぶには幼稚すぎる。

しかし、レイラのプライドはやられっぱなしは許せなかった。


テネシーの忠告を無視し、リンチの中心者ミカミへ攻撃をしたのだ。


ミカミへの小競り合いを確認すると、テネシーはレイラに対して、明らかに見捨てるような態度をとった。

レイラの性格を聞き込みで把握し、受けた侮辱は必ず返すと判断したのだ。


その通りにレイラは動いた。

これでテネシーがレイラを見捨てたとしても理由としては成り立つ。



それを契機にレイラへのいじめは一気に起こった。


レイラを擁護する人たちもいたのだが、テネシーが


「復讐に手を貸すな」

と圧をかけたため直接手を出せない。

そしてなにより

「巻き込まれたいの?」

と無表情で言ったテネシーの顔にビビったらしい。


いじめ容認から2か月。

テネシーは、その中で他の人族が巻き込まれないように、慎重に対応をするが、幸いターゲットはレイラだけに限定された。


そして、レイラはボロを出した。



「…どういうつもり?」

テネシーはその動きを把握していた。

遠距離会話装置を使おうとしたのだ。


震えているレイラ。

多分追い込まれて、耐えかねたのだろう。

義務を果たして、ここから逃げようとしたのだ。


「…見逃してあげるわ」テネシー。

「え?」

「ここから出ていくなら見逃してあげる。それとも無理やり龍族にされて、毎日チャズ様のおもちゃになりたい?悪いけど、チャズ様の拷問は、こんなものじゃないわよ」


「…あ、ああ…」

ガタガタと震えるレイラ。

「…で、出ていきます」


「一切しゃべるな。とは言わないけれども、クリティカルなことを漏らしたら…わかるわよね」

震えが大きくなるレイラ。


「お疲れ様。お元気で」

そう言ってテネシーは背を向けた。

襲われて殺されてもおかしくはない。

とテネシーは覚悟していたが、震えるだけで、レイラはなにもしなかった。



レイラは無事、表に出された。気まぐれで殺されるかと、テネシーは心配はしていたのだが。


テネシーもそろそろこの館から出ていく。

龍姫とフェルラインにあいさつをしようとしたのだが


「…龍姫様がことのほか、あなたを気に入ったみたいでね」

フェルラインが憂鬱気に語る。


「あなた一人だと断れないかもしれないから付き合うわ」

「は、はい。お願いします」


龍族になれ、と言われてしまうと断れないかもしれない。テネシーはそう考え、フェルラインと共に龍姫の元に行った。



怯えながら龍姫に挨拶に向かうと


「よくやったわ、テネシー。わたしは満足よ」

にこにこしている龍姫。


「あなたには、みっつ選択肢をあげる」

しなやかな指を掲げる。

「ひとつは龍族。あなたならいい龍族になれるわ」

「ふたつめ、このまま街へ戻る。慰労金として、金5000枚渡すわ。生活には生涯困らない額よ」

「みっつめ、人族の顧問として、ここに残る。もちろん慰労金は渡すわ。好きに使いなさい」


「…え?」


二つ目までは予想していたが、三つ目に驚くテネシー。


「例外を与えるのですか?」

フェルラインも驚きの声をあげる。


「こだわる規則ではないわ。優秀な人材にはそれなりの処遇が必要でしょう?」

予想外だが、テネシーにとっては一番魅力的な提案だった。


外に戻っても、テネシーは不安が多かったのだ。


テネシーは売り払らわれてここに来た。そんな家族と住みたくはないし、男性と結婚と言っても、その生活には不安がある。


龍族と違い、人族のまま戻った娘は、金目当ての結婚相手が多く、不満の手紙をテネシーは結構受け取っていたのだ。


また、この館での生活は長いので、身体としては慣れていた。

しかも心労の原因である、リーダーからは降りていいのなら万々歳だ。


「一度帰郷して考えてみれば?」

フェルラインが微笑む。

「そうします」



故郷への帰郷。

その前に引き継ぎなのだが


「ふふふ、お任せくださいな、テネシーさん」

テネシーはリーダーには今年17になるミカミを指名した。

あのリンチ劇の主動者。


そして、その副には

「頑張りますわ」

もっとも強硬にリンチに反対したカリミア。

この体制がメッセージとなる。


「あのリンチ劇は肯定するが、それを不特定多数にするな」


だ。それにこの二人は、リンチに対する態度は別れたが、基本は仲が良い。

うまくやるだろうとテネシーは判断した。



一方でテネシーの去就はまだ発表されておらず、同世代のグレイは

「あれ?なんでテネシーは発表されていないの?」

と不思議がっていた。



テネシーは帰郷した。

黄金を携えて。


全額は止めておき、1000金のみ持って帰った。

その金額に家族は驚喜したのだが、テネシーに対する態度は冷淡だった。


売り飛ばした娘が帰ってきても困る。そのような態度が、ありありとしていた。


しかも、龍族とか胡散臭いところにいたのだ、恐怖心もあった。


結婚の話もいくつかあったが、どれもろくでもない。

テネシーらため息をつきながら、館に戻るか、一人で生きるか悩んでいた。



街の宿に泊まる。家では居場所などない。

「…一人で生きるか」


それはそれでありだと思った。テネシーには有り余る金がある。


しかし、信頼する護衛は必要だろう。

そうでないと初日で取られそうだ、そう、今のように


「…高い宿屋なんだからさぁ…」

テネシーはため息。

部屋の外には明らかな盗賊の気配を感じていた。


「金ならもうないよ」

部屋の外に呼びかけるテネシー。

ドア越しでも動揺しているのを感じたテネシーは

「あのさ、わたしは確かに人族のまま帰ってきたけど、あの館に5年いれた意味ぐらいわかってくれない?」


盗賊達はドアの向こうで戸惑っているようだ。


「宿壊したくないの。わたしは女だけど、闘うのにためらいなんてないよ」

「この!黙って聞いていれば!」


激高したらしい盗賊の一人がドアを突破して入ってくる。が


「がっ!???」

恐ろしく大きいハンマーを振り上げたテネシーが思いっきり潰す。


「まだ来る?」

テネシーは平然とハンマーを構える。


「てめえ!?」

他の盗賊も入ってくるので、思いっきりハンマーを当てる。


「ぐお!!!!???」

ゴキッと壁に当たる音




「な、なんだ!?」

「なんの音だ!?」

宿は大騒ぎになった。




「侵入者が入ったので撃退したと」

「はい」

翌日、衛兵に取り調べを受けるテネシー。


「その…ハンマーで、攻撃したのか…」

「ええ」


「…なんでそんなバカでかいハンマーを振れるんだ」

「龍姫様のお住まいでは、これぐらいのことができないと生き抜けないのです」


あの館は龍族のエネルギーが満ちている。

いるだけで、活力がみなぎってくるのだ。

人族で年齢制限がある理由がこれ。


あまりいすぎると、不自然に強力な人族が生まれてしまう。

テネシーの5年は最長に近い。


そのため、腕力ならば相当のことができる。

街は大騒ぎである。

あーあ。これじゃ嫁なんて無理だし、一人で生きるのも辛そうだ。

好意に甘えて館に帰るか。

テネシーは取り調べの最中、天を仰いで考えていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 有能な上に苦労症で調整型でまとめられるのって、組織には得難い人材よね。 ……本大変なはずで面倒とは思うんだけど、そこでやらないという選択肢はないってなるのよねこういう人w テネシーとフェル…
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