第四十二章
「奈々、今日、君は一体何をしていたんだ?」
「え?」
「今日は、家に香織ちゃんが来て、彼女のお薦めの映画のDVDを見て、丸一日過ごすのだと言っていたじゃないか。それなのに何故出掛けていたんだ?」
「……」
「調布に行ったんだろ?」
「どうしてそれを……」
「奈々の後を付けたんだ」
「どうして!?」
「何故杉下とのことを黙っていたんだ」
「……」
「あのとき、杉下には久しぶりに会ったと言ってたじゃないか」
「それは本当の話なのよ。手紙を入れに行ったことは何度もあるけど、彼には一度も会っていない」
僕は奈々子と会話していて、手紙には送り主の名前がなかったことを思い出していた。そして、僕は持っていた手紙を彼女に差し出した。
「中を読んだの?」
僕は頷いた。
「どうして! どうしてそんなことをするの!」
奈々子は大声で叫んだ。
「奈々、お願いだ。教えてくれ! 奈々が罪を犯したのか?」
奈々子は返事をしなかった。ずっと俯いたままだった。
「……やっぱりか、……やっぱり僕なんだな」
「……」
「僕がしたことなら、僕は知らなきゃいけないんだよ」
「……」
「……僕のことなんだろ?」
奈々子は涙を流しながら漸く頷いた。
「なんで今まで黙っていたんだ……」
「どうしても言えなかった。忘れているなら、忘れたままのほうがいいと思ってた」
「……」
「それに、あのとき約束したの」
「……何を?」
「小さい頃、私はいつもみんなにいじめられていた。凄く辛かった。でも、亮ちゃんが助けてくれるようになって、私はそのことをとてもありがたく思ってた。だから、いつも亮ちゃんにそのことを言ってたの。そしたら、いつか僕が困ったら、奈々ちゃんが僕を助けてくれたらいい、それをお返しにしてくれたらいいって、亮ちゃんが言ったのよ」
ただ、そんなことのためだけに、奈々子は何年も僕の罪を償い、庇ってきたというのか……。僕は奈々子のその言葉を聞いて、その場に崩れ落ちた。
第四十三章に続く




