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二人でいたから  作者: 早瀬 薫
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第十一章

 あれは一体いつの話だったんだろう? 私が幼稚園に通っていたころのことだと思うから、多分五歳くらいのことだと思う。一つ年下の弟の保志はいつも私にくっついてきて、私はずっと鬱陶しいと思っていた。別に仲が悪いわけでもなく、むしろ人がいないところじゃ私は保志を可愛がってたんだけど、他人の目があると、どうしても無碍にしてしまう。年子の弟のことなんて、みんなそんな扱いをしているものだと思うけど……。

 でもうちの近所には私と同じ年頃の女の子がいなくて、私はいつも男の子たちに苛められる羽目になっていた。公園でブランコに乗って遊んでいると突然、「どけ!」と言われたり、ジャングルジムに登っていると、下からスカートの中を覗かれてからかわれたり、今考えると笑える話のような気もするけど、とにかく当時はそれが嫌で嫌でたまらなかった。そんな時、いつも私を助けてくれたのが亮ちゃんだった。

 亮ちゃんは他の子と違って優しかった。でも、いつも優しいわけじゃなくて、普段はそっけないのに、私が苛められてると、どこかから飛んできて、いつも助けてくれた。なんで優しくしてくれたんだろう? 私は亮ちゃんが好きだったけど、亮ちゃんもきっとあの頃から、私のことが好きだったのかな? なんだかそんな気がする。

 亮ちゃん、覚えているかな? 亮ちゃんが家からキャラメルの箱をとってきて、自分と私と保志に分けてくれるんだけど、十個しか入ってないから、三人で分けるといつも一個余った。その余った一個を自分のものにすればいいのに、亮ちゃんはいつも私か保志にくれた。前に誰にあげたかちゃんと律儀に覚えていて、「この間は、やっちゃんにあげたから、今日は、ななちゃんだね」と言いながらくれた。亮ちゃんはいつも優しかった。ごめん、亮ちゃん、覚えてないんだったね。こんな素敵な思い出を覚えてないなんて、悲しいよ……。


第十二章に続く

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