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【5巻電子書籍&POD化】神様のドS!!~試練だらけのやり直しライフは今日もお嬢様に手厳しい~  作者: 藍上イオタ@天才魔導師の悪妻26/2/14発売
中等部二年

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61.悪役令嬢


 あの後から、葵先輩は見かけるごとに声をかけてくれるようになった。以前のガン無視が嘘のようである。

 葵先輩は、言葉自体は冷たいが、意外に情の深い人のようで仲良い人は可愛がってくれるのだ。

 

 今日は詩歌ちゃんのクラスへ行く。詩歌ちゃんのUクラスには八坂くんがいて、休み時間は混雑すると聞いていたから、近づくのを避けていた。詩歌ちゃんと話がしたければ、更衣室や部室前でも会えたからだ。


 今日は次の授業で使う資料を先生から預かって、Uクラスに届けに来たのだが。


 しかし……スゴイ……。


 Uクラスの周りには、青銅ブロンズカラーラインの一年生たちがワキャワキャとたむろしている。完全に八坂くん効果だ。去年は遠慮していた同級生の女子たちも、下級生に負けるわけにはいかないと思っているのか知らないが、めかし込んで来ている。

 私は教室に入りたいのに、なかなか入り口を開けてもらえない。不満げな男の子たちが陰口を叩いているけれど、注意する気はないようだ。文句があるなら本人に言え!


「恐れ入りますが、ここを通していただけますか?」


 出入口を塞ぐ女子生徒に、後ろから声をかけたら無視された。

 休み時間の終わりは刻々と迫っている。

 両手は資料でふさがっているし、声を大きくするしかない。


「恐れ入ります! 少し退いてくださらない?」


 ワキャワキャしている一年生の女子たちが振り返ったが、鼻で笑って「きたりゴリラ」と呟いたきり、背中を向けた。


 ……。カッチーン。ゴリラ、怒らせたな?


 私は、スゥと息を吸い込んだ。いくら内部生かどうか知らんけど! 知り合いでもない下級生ブロンズに見下されるいわれはない。


「道を開けなさい!! 学校を何だと思ってらして? 好意も度が過ぎれば迷惑ですわよ! 休み時間は控えなさい!」


 そう厳しく声をあげれば、騒めいていたUクラスがシンとなる。

 背中を向けていた女の子が忌々しそうに私を睨んで、十戒の海みたいに左右にわかれて道を開けた。


 ハナからそうしてればいいんだよっ!


 私はその中を悠々と進む。その後ろからは、教室内に戻れなかった人たちがぞろぞろとついてきた。

 ケっと内心悪態をつきながら教室に入って見知った人を探す。詩歌ちゃんはいないみたいだった。まぁ、でもこの空気で詩歌ちゃんに関わるのはまずい気がするので、良かったとも思う。


 ワザとらしい拍手が聞こえてきて、見れば一条くんだ。よし、一条くんに押し付けよう。

 私は一条くんの机に向かって行った。


「さすがだね、白山さん。悪役令嬢みたい」

「なにが悪役ですか。当たり前のことを言っただけです。そもそも下級生ブロンズへの指導は一条くんがなさいよ。何のための胸の花なの?」

「いやいや、女の子に注意は怖くて無理だよ~」


 ヘラヘラと答えるから、ドンと荷物を机の上に置く。

 

 芙蓉会のくせに、なにかわい子ぶってんだ。本当は強権持ってるくせに!


「なにこれ?」

「次の授業で使うのよ。皆さんに配って頂きたいの。先ほどの授業で使用したので、先生からそのまま持って行くように言われたの」

「そうなんだ、ありがとう」

「では、ごきげんよう」


 悪役令嬢といわれたからには、それらしく振る舞って見せれば、一条くんがクスクス笑うから、私もつられてクスリと笑う。

 クラスから出ようとすれば、大黒さんたちに囲まれた八坂くんと目が合った。すまなそうに眼だけで会釈する。


 まったくあの人は、気を使いすぎだ。王子様らしくない顔をしてる。


 おかしくなって思わず噴き出した。八坂くんが驚いたような顔をしたから、私は私の眉の間を指で伸ばして見せる。眉に皺がよってるよ、というジェスチャーだ。

 八坂くんは、苦笑いをして眉の間を指でこすった。



 Uクラスのドアまで行けば、頭の上に影がかかった。驚いて見上げれば長身の男の子だ。ツンツンした短髪は癖のついたこげ茶色。彫りの深い二重の瞳、まつげはくるんと天然なのだろうか。

 いつか廊下ですれ違った子だ。Uクラスだったのか。


「どうぞ。白山姫奈子さん」


 そう言って彼はドアを開けてくれた。

 声を聴いても、名前が思い出せない。


「……恐れ入ります。どこかでお会いしてましたか?」

「いいえ。今初めて話したよ」


 ますます意味がわからない。なんで私の名前を知っているのか。


「オレ、三峯みつみね恭介きょうすけ。よろしくね」

「はぁ……。ヨロシクオネガイシマス?」


 頭の中に疑問符をたくさん並べながら、とりあえずUクラスを後にした。 







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