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【5巻電子書籍&POD化】神様のドS!!~試練だらけのやり直しライフは今日もお嬢様に手厳しい~  作者: 藍上イオタ@完全無欠の悪女です2月下旬発売
中等部二年

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51.かつうの祝い 2


「そういえば!」


 そう言って明香ちゃんがカバンから雑誌を取り出した。『アミケガールジャパン』だ。イタリアのハイティーン向けファッション雑誌の日本版である。


「さやちゃんは、アミケなの?」


 道理で大人っぽいと思った。私と詩歌ちゃんは、きゅう♡てぃぃぃん派なので、どちらかというと可愛い路線なのだ。


「ふふふ、これ見て!」


 明香ちゃんが広げたページには、ドーンと大きく八坂晏司である。

 しかし、私はその奥に小さく映っている人影に目を奪われた。これは、あの、憧れてやまない……。


「エレナさま……!」


 思わず感極まる。


「え? そっち?」


 明香ちゃんが噴き出した。


「エレナさまは」

「ちょ、ちょっとまって? ストップ! お願いそれ以上言わないで?」


 すごい勢いで明香ちゃんの言葉を遮ったら、みんなが不思議そうに私を見た。


 だって、だって、だって!


「あのね、お願い。エレナさまのことは私に話さないで欲しいの」

「あの、どうしてですか?」


 紫ちゃんが尋ねる。


「私、エレナさまが大好きで憧れていて。そのね、私すごく嫉妬深いの。多分、みんなエレナさまのこと詳しくご存知でしょう? 昔からお会いしたりしてるわよね? だから、みんなからエレナさまのプライベートを聞いたら、きっと嫉妬するわ」


 そうなのだ。私は根が深い同担拒否派。絶対に嫉妬する。嫌な気持ちで、友達を見る。


 特に詩歌ちゃんは、エレナさまと仲が良さそうだ。だから、話題にするのを避けてきた。聞けば色々なことを教えてくれるだろう。会わせてくれるかもしれないとも思う。だけど、私より仲の良い二人の姿を見てしまったら、私は感謝よりもきっと嫉妬をする。見せつけられた、と感じてしまう。


「きっと、嫌なこと、言ってしまいそう……」


 恥ずかしいけれど。

 こんな自分は嫌だけれど。


 氷川くん同担拒否の時にしたように、同じ轍を踏みたくはない。


 恥ずかしくて俯けば、紫ちゃんが頭を撫でてくれた。


「わかります」

「わかる?」


 思わず顔を上げる。


「私もわかるわ」


 詩歌ちゃんがほっぺを膨らまして言う。


「したくなくても、しちゃうのよね」


 明香ちゃんが笑った。


「完璧なお嬢様でも、そんなことあるの?」


 思わず尋ねる。

 家柄も血筋も良くて、小さな頃から躾られた立ち振舞いと、恵まれた人脈に囲まれたお嬢様たち。世が世ならお姫様だった彼女たち。

 そんな人が、なにかに嫉妬するなんて考えられなかった。脅かされることなんかないんだと、誰よりも自信があるのだと思っていた。

 

「私達をなんだと思ってるのよ。普通の人間よ」


 明香ちゃんが呆れたように笑う。


「完璧なんて……程遠い、です」


 紫ちゃんも笑った。

 詩歌ちゃんも頷く。


「私の方こそ、八坂くんに絡まれても動じないから、流石桜庭のお嬢様は違うわって思ってたのよ」


 明香ちゃんが笑った。


「なにそれ、そんなことないわよ」


 私も思わず笑った。


「ひな祭りのパーティーで、姫奈ちゃん、私に嫌な顔をしなかったでしょう?」


 詩歌ちゃんが言った。


「? え、ええ」

「私、大きなパーティーはあの時が初めてだったの。それなのに大失敗してしまって。しかも氷川くん主催の席、相手の方は知らない方、もう、どうしようって、絶対に大事になってしまうって思ったのよ」

「嘘、すごい堂々としてたのに?」

「だって、そう振る舞うようにしつけられているから……あれでも頑張って。それに、縁故のない方は『怖い』って聞かされていたし……失敗は許されないと思ってたの。それなのに、姫奈ちゃん全然責めないでいてくれたから、すごく助かったのよ」


 詩歌ちゃんに打ち明けられて動揺した。私は何もしていないし、正確には神様の罰を恐れて何もできなかっただけなのだ。

 それを恩に感じられても困ってしまう。


「八坂くんが来てもスッとどこかに行っちゃうしね。なんて高潔な人なんだろうって話題になったわよね」


 明香ちゃんが笑う。


「高潔って……ビックリしてテンパってただけよ? 着物なんて初めてだったし。エレナさまにフォローして頂いてどうにかなっただけで。……それから憧れているんだけど……。え? あの時、さやちゃんもいたの?」

「紫さんもいたでしょう? 見ていた?」


 明香ちゃんが笑って、紫ちゃんに問う。

 

「え、ええ……。私……どうなるんだろうって……怖くって……見ていただけですけれど……。橘の君……って……」

「ええ!? ちょ、ちょっと、それ恥ずかしいわ!」


 そうか、もうあれから見られていたのだ。前世で良家の女子たちに避けられていた理由が、今わかった。前世で嘘泣きを盛大にして氷川くんの気を引こうとした、私の強引なやり口に引いたのだ。


 当時は、『芙蓉の女子は皆敵!』だったから、平気であんなことをしたけれど、それが後々自分の首を絞めることになったらしい。


 軽率、短慮、横暴、強引。計算のつもりだった行為が、大きな誤算になっていた。恥ずかしすぎる。


「高潔な橘の君が、今ではバナナ姫だけどね」


 明香ちゃんが笑う。


「もう! 最近じゃ、ゴリラですからね! 女子としてどうなの?」


 抗議をすれば、皆くすくすと笑った。


「そうだ、エレナさまね、プライベートの話じゃないから、いいかしら?」


 明香ちゃんが伺うように私を見た。


「え、ええ」


 少しドキドキする。


「アミケに毎月載ってるわよ」

「え! 本当!? ありがとう!」


 やった! これでエレナさまを摂取できる! 


「でも、私が見て欲しかったのは、エレナさまじゃなくて八坂くんよ」


 明香ちゃんが広げたページには、八坂くんが色っぽい上目遣いで、強請るようにこちらを見ている。


 え、こっわ。これ中二? まじ、こっわ。


「格好いいでしょう? アミケ初登場でこれだけの大きさなんて異例なのよ。お仕事が忙しいのはその辺かもしれないわね」

「すごいわねぇ」


 詩歌ちゃんがのんびり答えれば、紫ちゃんも頷いた。


「さやちゃんは八坂くんが好きなの?」


 綱じゃないのかな?


 問えば、明香ちゃんは瞬きした。


「私は観賞用として愛でている感じかしら? 目の保養になるわよね」

「ああ、確かにわかります」

「ええ。格好いいです」


 詩歌ちゃんも紫ちゃんも賛同する。


「私も、口を開かなきゃ、とってもカッコイイと思います」


 そう答えれば、皆が笑った。


「最近、非公式のファンクラブが校内にできているみたいよ」


 情報通の明香ちゃんが教えてくれる。

 詩歌ちゃんは困ったようにため息をついた。


「休み時間にクラスにも来ています。体育や移動教室の時は少し困るわ。出入り口が混みあうし、八坂くんもなかなか移動できないし。一部の人と小競り合いもあるし……」


 私と紫ちゃんは顔を見合わせた。


「大変なことになってるのね」

「少し八坂くんが気の毒なくらい」


 詩歌ちゃんは心配そうな顔で、お茶碗を両手で包み込んだ。

 

 なかなか有名人の悩みは深そうだ。


 



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