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【6巻電子書籍&POD化7/25】神様のドS!!~試練だらけのやり直しライフは今日もお嬢様に手厳しい~  作者: 藍上イオタ@神様のドS!!完結6巻7/25配信
中等部一年

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40.バレンタインデー 1

 

 クリスマス、冬休みが過ぎて、後期再開だ。


 目前に控えるバレンタインデー。なんとなく学校中が浮ついている。

 今日も数人に八坂くんの登校日を聞かれたが、私は八坂くんのマネージャーではない、知らん。


 放課後、綱と一緒に百貨店のバレンタインのコーナーへ向かった。どうせ車で送り迎えがあるのだから、一人で大丈夫だと言ったけれど、お母様から許して貰えなかった。女子ばかりのバレンタインコーナーに連れてこられる綱が可哀そうだとは思わないのだろうか?


 バレンタインチョコを誰にあげるかだって? 聞いてない? 嘘、聞いて?


 実は、美佐ちゃんと友チョコ交換を約束したのだ。桜庭中等部にはそんな文化があったらしい。

 私はそれを知って、早速詩歌ちゃんや、明香ちゃん、紫ちゃんにも、それぞれ声をかけ、友チョコ交換の約束を取り付けた。


 友チョコだよ! 友チョコ!! 友達と交換するんだよ?


 大体の金額を約束し、お互いに何を選んだかは内緒でチョコレートを交換することにしたのだ。


 とりあえずバレンタインコーナーで可愛らしいチョコレートを見て歩く。

 美佐ちゃんにはあまり甘くないのが良いかな? カロリー高いのは良くないよね。ブラックにしようかな。

 詩歌ちゃんにはお花? でもたくさんもらいそうだよね。

 紫ちゃんには星にしようか。

 明香ちゃんは? うーん、明香ちゃんの好きなものよく知らなかったな、今度じっくりお話ししよう。


 ホクホクとしてご機嫌になれば、疲れた様子で綱がため息をついた。


 そうだよね、つまんないよね、ごめんなさいね、でも私、頼んでないからね!!


「こっちは誰の分なんです? 数が多いようですけれど」


 綱の声はいまいち不安定だ。お正月の声枯れは、どうやら変声期というものらしかった。たまにひっくり返ったりするのが、ちょっと可愛いと思う。


「光毅さまと修吾くんよ」 


 ついでに、光毅さまと修吾くんの分のチョコレートも選んだのだ。クリスマスパーティーのお礼もかねてだ。修吾くんは度々うちに来るので、その時にちょっとしたプレゼントみたいな形で渡そうと、はっきり義理とわかるやつにした。その方が受け取ってもらいやすいと思ったのだ。


「ご迷惑では?」

「バレンタインっていうか、パーティーでのお礼だからいいじゃない」

「……それでも数が合いませんが」

「あとは自分用をちょっとだけ」


 そう! 自分用である。なかなか日本では買えない海外ブランドのチョコレートをちょっとだけ買ってみた。だってやっぱり気になるじゃない? 気になるよね。


「ちょっとだけ、ですか?」

「ちょっとだけよ? これでも日本に無いブランドしか選んでないし、ブランドで一番小さな箱しか選んでないもの!!」


 おかげで小さな箱ばかりになってしまった。欲を言えば大きな箱で全種類!とやりたかったところを我慢したのだ。褒めて欲しい。


 自信満々で答えれば、綱は大きくため息をついた。


「ニキビできますよ」

「うっ!」


 指摘される。確かに、確かにそうかもしれないけれど。


「……ちょっとずつ、ちょっとずつ食べるもの……」


 綱は信じられないものを見るような眼で私を見た。

 まったくもって失礼なんである。





 迎えたバレンタインデー。

 修吾くんへは、家へ遊びに来た時に光毅さまの分と合わせて贈ったら、ちょこっと恥じらってもらってくれたので心が癒された。まじ天使。

 美佐ちゃんにも、前日のレッスンの時に渡すことができた。美佐ちゃんには、ブラックなチョコレートを選んだ。結構探すのに苦労した。嗜好品だけあって、シンプルなものは少ないようだ。

 美佐ちゃんからはゴリラのチョコレートだった。美佐ちゃんェ……。味はバナナ味で美味しかったけど!

 ちなみに美佐ちゃんからの感想は、苦かったでした。ら、来年こそリベンジだ!

 

 学校は朝から浮かれていた。八坂くんの下駄箱はすでにプレゼントであふれかえっている。

 それを横目に綱の下駄箱を見れば空っぽで、私はちょっとガッカリした。

 

 綱……ドンマイ!


 親指を立てて、優しい目で微笑めば、綱が不思議そうな顔で私を見た。


 教室に入る。早速、紫ちゃんとチョコレートを交換した。


「いいなぁ! オレも欲しい!」


 二階堂くんが、羨ましそうに紫ちゃんに言うから笑ってしまう。


 お前は友チョコじゃなく本命チョコをゆかちゃんから貰え!!


「あら、欲しかったら来月あげたらいいじゃない。来年にはお返しあるかもしれませんわよ?」


 意地悪く言えば、二階堂くんは唇を尖らせる。


「先にあげれば貰えるの? でも、返ってくるのは一年先なの?」

「さぁ、それは私にはわかりませんけど。お相手次第でしょうねぇ」


 ニヨニヨと紫ちゃんを見れば、モジモジと俯いてしまった。


 あー、あまずっぺー。あまずっぺー。わたしゃここから退散しますわよ。



 私は自分の席に戻り、明香ちゃんとチョコレートを交換した。うふうふとチョコレートのネタバレにならない程度のプレゼンをお互いにして盛り上がる。

 家に帰って開けるのが楽しみになった。


 休み時間ともなれば、八坂くんへの猛攻撃が始まった。もういっそ、ウォーウォーボールの籠でも借りて、学校中ねり歩いたらいいよ。

 私はそう思いながら、Fクラスへ行った。詩歌ちゃんに会うためである。


 Fクラスを覗き込めば、クラスの女の子たちから一斉に注目を浴びた。そう、このクラスには氷川くんがいる。氷川くんへの呼び出しで過敏になっているのだろう。

 私にも記憶にある。

 なんせ、私は氷川くん推し同担拒否だったのだから。


 でも、今は違うからね!


 前回はもちろん、氷川くんにあげた。有名パティシエの作った凝りに凝った特注チョコレートだ。それを学校ではなく、家に届けに行った。氷川家に私の存在をアピールするための魂胆だった。三月のパーティーから好きだ好きだ攻撃を繰り広げ、満を持してバレンタインで告白。ホワイトデーには、YESのお返事をもらい、そこからとんとん拍子で婚約者になった。計算では恋人になれればいいくらいに思っていたのだが、計算以上の成果を出した。

 計算高い? そうだよ、めっちゃ計算したんだよ。そこまでは良い子で頑張ったし、そりゃ、理想なお嬢様を演じたわけですよ。方向性は褒められたものじゃないかもしれないが、真面目に本気で頑張った。


 あまりに早い展開で少し驚いたけれど、あの頃の私はそれほど氷川くんに好かれていたのだ。たった十三歳で婚約を決めてしまうほどに望まれていたということだろう。白山姫奈子は、本当はやればできる子なのだ。持続しないだけで。


 当たり前だが、今回はそんなことしない。するわけない。してもしょうがないし。しても仕方がない努力をする気はない。


 だって氷川くんは、張りボテではない生粋のお嬢様とくっつくのだとわかっているのだから。

 そう、彼女みたいな。


「詩歌ちゃん!」


 声をかければ、詩歌ちゃんが駆け寄ってくる。


「姫奈子ちゃん」

「ちょっといいかしら?」

「ええ」


 廊下へ呼び出して、少し教室から離れた。Fクラスの廊下付近は、女子がいっぱいたむろしているのだ。


 廊下の角へ詩歌ちゃんを連れて行く。


「これ、もらってください!」


 ガバリと頭を下げて、チョコレートを突き出す。


「わぁ! ありがとう!」


 ニッコリと詩歌ちゃんが受け取ってくれて、私のもどうぞ、と小さな箱を差し出してくれた。

 二人で向かい合って、えへへと笑う。

 うん、なんだかちょっと照れ臭い。


「ねぇ、姫奈子ちゃん」

「なぁに?」

「私も姫奈ちゃんて呼んでもいいかしら? みなさん姫奈ちゃんて呼んでるのズルいなぁって思っていて……」


 詩歌ちゃんがそんなことを言う。


 詩歌ちゃんでもズルいとか思うんだ!


 そんな意外な一面を知って、私はとっても嬉しくなった。ああ、かわいい。


「もちろん! 私もうーちゃんって呼んでもいいかしら?」


 そう問えば、詩歌ちゃんは顔を真っ赤にして口元を抑えた。


 うわぁ、引かれた? さすがに馴れ馴れしすぎ?


「ご、ごめんなさい、嫌だったわよね」

「う、ううん! 私、家族にもそんなふうに呼ばれたことなかったから……」


 ああ、図々しかった……。


「うれしい」


 詩歌ちゃんに上目遣いで答えられて、鼻血をふきそうだ。


 なにこれ、かわいい。やばい。


 なぜか周りからパチパチと拍手をされて、二人で恥ずかしくなった。なんだこれ? 


 丁度チャイムが鳴りだして、私は慌ててクラスに戻った。


 なにこれ。あまずっぺー! ちょっとぉ、私、なに甘酸っぱくなってるのぉ!






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