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【5巻電子書籍&POD化】神様のドS!!~試練だらけのやり直しライフは今日もお嬢様に手厳しい~  作者: 藍上イオタ@お飾り側妃は糸を引く7/5発売
高等部三年

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270.高等部三年 プロムの準備


 本日の放課後はプロムの準備で芙蓉館にいる。

 綱を除いた執行部でプロムのスライドの確認をしているのだ。

 懐かしい写真がいっぱいだ。中等部の林間学校の写真には大黒さんが混ざっていて、それも遠い昔のことのようだ。

 紫ちゃんは二階堂くんの子供っぽい写真を見て目をハートにさせている。


「ゆかちゃんは、二階堂くんとダンスの練習してるの?」


 思わず尋ねる。


「風雅くんと姉が通った教室にお邪魔してるの」

「絶対、ダンス賞取ろうな!!」


 二階堂くんが紫ちゃんに言えば、紫ちゃんが頷いた。


「あ、そうだ、白山さん。やっぱ、プロム無理だから」


 三峯くんが作業をしながら適当にそう言えば、八坂くんと氷川くんが三峯くんをガン見した。


「え? なに? 姫奈ちゃん?」

「どういうことだ、三峯」


 八坂くんと氷川くんの顔が真剣で怖い。


「去年、パートナーが見つからなかったらお互い契約パートナーになろうって話をしたんだよね、白山さん」

「ね、って……。やっぱり、去年言った通りじゃないですか。絶対、三峯くんは裏切るって」


 私も作業を続けながら、フン、と鼻を鳴らす。


「それで、大丈夫なんですか? 相手の方、ちゃんと三峯くんのことわかってます? ロマンスのかけらもない感じ」

「わかってるわよ」


 答えたのが明香ちゃんでギョッとする。


「え!? まさか、さやちゃん!?」


 明香ちゃんがにっこりと笑った。


「さやちゃん、だまされてるわ! この人去年私に向かって、プロムの相手は錯覚に使えるとか言い放ってたんですからね!」

「ちょっとー、白山さん、それ守秘義務違反じゃない?」


 三峯くんはヘラヘラと笑っている。明香ちゃんもそれを聞いて笑った。


「守秘義務違反って、三峯くん、私にも同じこと言ったでしょう? でも、そういうところがいいじゃない」


 ニヤリと笑う明香ちゃん。


「そう……、さやちゃんもそういうタイプだったわね。選挙が終わるまでは相手を作らないって……」


 言いかけて明香ちゃんが圧のある笑顔を向けてきた。ゾクリとして口をつぐむ。そっちは本当の守秘義務違反に当たりそうだ。

 逆に三峯くんが騙されたのかもしれない。副会長として氷川くんを盛り立てるため、暗躍してきた二人だ。私の考えが及ぶところに彼らはいない。


「お、お似合いだと思いマス」


 思わずたどたどしく答えれば、二人がおかしそうに笑った。

 そして私ははたと気が付く。


「え!? ちょっとまって? まさか、うーちゃん、一条くんと?」


 詩歌ちゃんは静かにはにかむ。


「どうかしら? プロムのことはわからないわ」


 被害妄想かもしれないが、なんだか余裕の笑顔に見える。


「うっそ! みんな、みんな、私を置いてくのね!? やっぱり私アンチプロムするわ!!」

「姫奈ちゃん、なにそれー」


 にやにやと余裕の八坂晏司である。


「反プロム派でプロムを襲撃してやるのよ! 幸せなカップルなんて赤いリボンで結んでやるんだからぁ!!」

「それ面白そう! 僕もアンチプロムに参加しようかな」

「私も姫奈ちゃんと一緒のほうがいいわ」


 八坂くんと詩歌ちゃんが笑う。


 うう、モテモテの人たちはそもそもプロム参加にこだわらないのだ。く・や・し・い!!


「でも、姫奈ちゃんと八坂くんがアンチプロム企画したらみんなそっちに行っちゃうわ」


 紫ちゃんが不安そうな顔をしている。紫ちゃんにしたら、とても楽しみにしているプロムだ。水を差すのは心が痛む。


「それに執行部の中からプロムへの反対派がでたら、お怒りになるOBがいるかもね」


 明香ちゃんの言葉に淡島先輩のニコヤカな黒笑顔が浮かび身震いする。


「そ、そうね、悪ふざけで人生終わりたくないわ……。執行部席で大人しくしています」


 一時の気の迷いで人生を棒に振ってはいけない。一人でもちゃんとできるとこを見せなくてはいけない時期に、芙蓉会から追い出されたなんてことになれば、お母様の怒りは解けないだろう。


「いいじゃない、白山さんは生駒に頼めば」


 三峯くんが軽く言う。

 私はちょっと胸が痛みながら、それでも軽く答える。みんなにはまだ綱とのことは話していないのだ。


「こういうのはちょっと綱には頼めない感じなの」

「そうなの? 生駒は嫌がらないでしょ?」

「頼めば綱は聞いてくれると思うけど、家族の目がなんとなく?」


 紫ちゃんが心配そうに私を見る。紫ちゃんも、二階堂家との格差のために交際を親に反対されているのだ。だから、家柄の差で反対されていると知られたら、きっと紫ちゃんまで不安になる。それは嫌だった。

 

「プロムまで幼馴染に頼りっきりなんて情けない、自分で何とかしろ、ってそんな感じよ」


 茶化すように笑って、大げさに手を振って見せる。反対の理由は家柄ではなく、幼馴染だから、そう嘘をつく。紫ちゃんはホッと息をついた。


「白山家もなかなかキビシーねぇ」


 三峯くんがそう笑って、私も笑う。


「そんなわけで、裏方は任せてください!」

 

 ドンと胸をたたいて見せる。


 そもそも、二階堂くんだって弁護士の家系で今はベストだ。反対されるような人物ではない。

 どこの家でも娘の両親は理不尽なものだと思う。二階堂くんはともかくも紫ちゃんのことは全力で応援しているのだ。

 プロムは絶対成功させて、紫ちゃんにダンス賞を取ってほしい。そうすれば、二人の自信につながるはずだから。芙蓉学院全体でお似合いだと言われたカップルを、両親だってやすやすと引きはがしたりできないだろう。


「絶対良いプロムにしましょうね!」


 紫ちゃんに笑いかければ、紫ちゃんは嬉しそうに頷いた。




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