265.高等部三年 クリスマスパーティー 3
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氷川くんのお母様と目が合って、軽く会釈する。お母様は氷川くんと連れ立って歩く私を見て、にこやかに微笑んだ。お父様は相変わらずのちょっと怖い顔でチラリと私を見ただけだ。
彰仁は来年度の生徒会執行部のグループと混ざって挨拶や歓談に忙しそうだ。
紫ちゃん、明香ちゃんを見つけて合流すると、一条くんと一緒に詩歌ちゃんが合流した。
ふーん、と思うが何も言わない。ふーん、って思うけど!
そこへ、綱がやってきて、さらに八坂くんも合流する。
氷川くんが苦虫をかみつぶしたような顔をして、八坂くんに話しかけた。
「悔しいが、良いドレスだと思う。とても姫奈子さんの美しさを引き立てているな」
私は氷川くんの言葉に恐縮してしまうが、八坂くんは自信満々だ。
「当たり前でしょ? 姫奈ちゃんのために作ったんだから」
「私のため?」
「そう。姫奈ちゃんは僕のミューズだからね」
八坂くんの飛ばしてきたウインクを手で払えば、氷川くんが苦々しげな顔を八坂くんに向けた。
「勝手に姫奈子さんを巻き込むな」
「和親に人のこと言える?」
バチリ、二人の視線がぶつかり合って、思わず綱を見れば恐ろしいほど無表情で彼らと私の間に立った。
「二人がどう思おうと、姫奈の将来は姫奈が決めます」
ビリリ、三人の間に見えない何かが爆ぜた気がした。
私を守る綱の背中がたくましくてかっこいい。
それに、綱のいう通り。
「そうね、自分のことは自分で決めるわ」
前世みたいに、お母様の価値観に流されるのではなく。
みんなの憧れだからだとか、みんなが勧めるからだとか、他人の評価を自分の価値観にするのではなくて。
今度は、自分がどう思っているかを大切にしたい。
みんながどう思おうが、親に反対されようが、自分が好きなものは好きだと胸を張って言いたいのだ。
ハッとした顔で、氷川くんと八坂くんが私を見た。
隣にいた詩歌ちゃんが、コテンと頭を私のほうに傾けた。
「私、姫奈ちゃんのそういうところ好きよ」
穏やかに微笑めば、明香ちゃんも笑う。
「そうそう、口に出して言えちゃうところ」
「私も、ちゃんと言えるようになりたい……。ううん、なるわ」
紫ちゃんがギュッと握りこぶしを作る。なかなか二階堂くんの件も難しいのだろう。今日も二階堂くんは招待されていない。生徒会執行部になったとはいえ、それだけでは氷川家のパーティーには呼ばれないのだ。
高校卒業まであと少し。その先の未来はみんなバラバラだ。私とは違って、旧家の彼女たちは親からのプレッシャーも大きいに違いない。選択の自由なんて言ったって、選ぶべきだと示されるルートは広く明るく大きいのだ。その大きな道を無視して、いばらの道を選ぶなんてきっと馬鹿だと叱られる。修吾くんのように、だれもが覚悟を持てるわけではない。
「ゆかちゃん、一人で頑張らなくてもいいのよ?」
ニカッと笑えば、紫ちゃんがウルっとした目を私に向けた。
「……うんっ!」
「俺だって二階堂が有能なことは知っている」
氷川くんが当たり前のように言うから、みんなで微笑んで頷きあう。
「ちゃんと、見ている人は見ているものよ」
明香ちゃんの言葉に紫ちゃんは大きく頷いた。
今年もみんなで写真を撮る。
いつもと違うのは一条くんがいることくらいか。
いつか二階堂くんとも一緒の写真が撮れたらいいな、なんて思いながら紫ちゃんを見る。
目が合って二人で思わず笑いあう。
大きな窓ガラスに黒い空。
ふわふわと大きな雪が舞いだした。
どうりでさっきは寒かったわけだ。
「雪よ!」
思わず駆けだそうとすれば、手首をひかれて振り返る。
綱がびっくりしたように、手首を離した。
「どうしたの?」
「……いえ」
綱が目をそらせば、その肩を八坂くんが組んでにやにや笑う。
「ほら、姫奈ちゃん天使みたいだから、天に帰っちゃいそうだと思っちゃったんじゃない?」
プレイボーイの発想に思わず吹き出してしまう。
「そんな心配ないわよ。だって、天国よりここがいいわ!」
答えれば、八坂くんがいつもの通りおなかを抱えて笑い出し、みんなつられて笑いだす。
「確かに、今が楽しいものね」
詩歌ちゃんが笑うから、私は大きく頷いた。
皆様に応援していただいたおかげで、別作品ですが
「私、転生悪役令嬢なので、メリバエンドは阻止させていただきます!!」の書籍化が決定いたしました。
ベリーズファンタジー様より、2020年11月5日発売予定となっています。
異世界転生とジャンル違いではありますが、興味があったら読んでやってください。







