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【5巻電子書籍&POD化】神様のドS!!~試練だらけのやり直しライフは今日もお嬢様に手厳しい~  作者: 藍上イオタ@天才魔導師の悪妻26/2/14発売
高等部三年

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253/289

253.高等部三年 選挙の準備が始まります


 学園祭が終われば、もう来年の選挙の準備だ。

 氷川くんの後任は五木くんに決まっているらしく、その周りを固めるために悪知恵を働かせているのは、明香ちゃんと三峯くんの副会長コンビである。

 氷川くんは正面突破、真っ向勝負系の王道まっしぐらの帝王なので、根回しに向いていないし、させてはいけない、そういう雰囲気がある。

 来年の会長候補は五木くんで、一・二年生からサポートできる人たちを探している。


「せっかく姫奈子さんのおかげで、内部生と外部生が上手くいっているのだから、この環境を守りたい」


 とは氷川くんの談で、外部生に顔が利く綱と私も選挙の下準備に駆り出されていてなかなかに忙しい。外部生の憧れでもある綱は、外部生系のスカウトを任されているのだ。私もそれをフォローしている。

 そんな理由もあって、昼休みは芙蓉館で皆で食べることが多い今日この頃である。



「姫奈ちゃんのお弁当、いつも美味しそうよね」


 明香ちゃんが嬉しいことを言ってくれる。


「ありがとう!」

「そのハートの玉子ってどうなってるの?」


 お弁当の蓋に玉子を置いて、分解して説明する。 


「普通にだし巻き玉子を作って、こうやって切ってひっくりかえしてピックで留めるの」

「何だかあまそーだね」


 三峯くんが覗き込む。ピンクの混じったハートの玉子焼きに胸焼けしそうな顔をしている。


「今日のは桜エビとネギでショッパイ系よ」

「へー、生駒、一個ちょうだい」


 三峯くんが綱のお弁当を覗き込む。


「好きなのであげられません」


 綱は無表情で答え、玉子焼きを口に入れてしまう。

 その言葉に他意はないとわかっていても、内心はバクバクだ。


 わかってる、好きなのは玉子焼き! 私じゃない、私じゃない!


「そんなに美味しいならなおさら欲しくなる」


 恨めし気に三峯くんが言うから、先ほどお弁当箱の上に載せた玉子焼きを三峯くんに差し出した。


「分解しちゃったけど、これで良ければ食べて? お箸もまだ口を付けてないわ」

「私にも半分ちょうだい!」


 明香ちゃんが言って、二つに分かれたハートを二人でわけあっている。


「見た目可愛いから、もっと少女趣味な味かと思ってた。これ美味い」

 

 三峯くんが言う。

 

「食感も面白いわね。磯の香りとネギがいいのね」


 満足そうな二人に私もホンワカとする。


「いつも白山さんが一人で二人分作ってくるの?」

「お弁当の日は、彰仁とお父さまと生駒の分も作るわ」

「じゃあ、彰仁くんもこんなかわいいお弁当なんだ」


 三峯くんの問いに頭を振る。


「彰仁は思春期で反抗期だから、ハートを入れると怒るのよ! だから、ハートは綱のと私のだけ」


 私の答えを聞いて、三峯くんがおかしそうに笑う。


「生駒は思春期でも反抗期でもないと……」

「味は同じですからね。作っていただけるだけでありがたいです」


 綱は模範解答で答える。


「そうね、姫奈ちゃんのお弁当食べられるなんて幸せね」


 明香ちゃんが少し冷やかすように言えば、綱が爽やかに笑った。


「ええ。幸せです」


 素直に、本当に珍しく素直に答える姿に、明香ちゃんと三峯くんがあっけにとられた。

 綱は黙々とお弁当を食べている。


 私だって呆気にとられる。だって、まるで新婚夫婦のノロケではないか。

 二人っきりのお昼ならともかくも、他の人がいても綱はいつも通りにお弁当を食べている。お弁当を食べる時の綱は、嫌に率直だから私は困ってしまうのだ。


 嬉しすぎて絶対変になってる顔を誤魔化すために、慌ててミニトマトを口に詰め込んだ。


「これ酸っぱかったわ!」


 糖度の高い真っ赤なミニトマトだ。酸っぱいわけはないけれど、変な顔をごまかすためにそうやって顔をしかめて見せる。

 綱は見透かすみたいに小さく笑って、同じようにミニトマトを口に入れる。

 しまった、このトマトもハート形だ。


「私のは甘いですよ?」


 こ、この子。無意識にしても、ワザとにしても、性質たちが悪いわ! 


「ところで、次の生徒会執行部ベストに彰仁くんを推薦しないのはなんで?」


 明香ちゃんが選挙の話を振ってくる。


「え? 彰仁? なんで彰仁? 彰仁には無理でしょ?」


 思わず問う。


「そんなこと言ってるの、姫奈ちゃんくらいよ。彰仁くんならだれも文句は言わないわよ」

「えー? うそ」


 三峯くんが笑う。


「彼は内部生の割に外部生にも顔が広いでしょ。学業も優秀で、遠泳大会でも目立ってたし、そつなくこなすイメージだけど」


 三峯くんからも言われて、ちょっとビックリする。


「そうなの? 彰仁やるじゃない!」


 実力合理的主義の三峯くんに弟が評価されて鼻高々の姉である。


「じゃあ、本人が嫌がってるわけじゃないのね?」


 明香ちゃんが私を見る。


「私は聞きもしなかったわ。綱は聞いた?」

「私はお話ししました。でも、『姉のおこぼれは嫌だ』そうです」

「ああー……」


 綱の言葉に、三峯くんが納得したように頷いた。


「なによそれ?」


 意味がわからず三峯くんを見る。


「彰仁くんは、白山さんの七光りで生徒会執行部に推されてるって思っちゃったってこと」

「はぁぁ? 私そんな力ないですけど!」

「彰仁くんはそう思った、ってだけでしょ。ほら、いわゆる思春期で反抗期だから」

「私が言うのは良いけど、三峯くんに言われるのは嫌ね」


 フンと怒れば、三峯くんがニヤニヤと笑う。


「そう、じゃあ、彰仁くんのスカウトは二人に任せると逆効果になりそうねぇ……」


 明香ちゃんが、フムと考える。


「彰仁くんは氷川くんに口説いてもらうわ」

「さやちゃん、それ、彰仁、絶対断れない!」

「ええ、そうするのよ」


 ニンマリと笑う明香ちゃん。ゾクリと背筋を走っていく何か。


「……ご愁傷様」


 可愛い弟を思ってボソリと呟けば、三峯くんがおかしそうに笑った。



 結局、彰仁は難なく氷川くんに篭絡され、次期生徒会役員候補に名を連ねた。

 私たちが姉弟であることは有名で目立つので、今回の選挙運動に私は表立たないことになった。

 やっぱり七光りだと思われるのは不本意だからだ。

 その代わり、綱が彰仁のサポートにまわったので、家でも学院内でもベタベタベタベタベタベタしている。私は選挙の方に関われないので味噌っかす扱いなのだ。


 まったくもって不愉快だ!






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