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【5巻電子書籍&POD化】神様のドS!!~試練だらけのやり直しライフは今日もお嬢様に手厳しい~  作者: 藍上イオタ@天才魔導師の悪妻26/2/14発売
高等部三年

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242/289

242.高等部三年 遠泳大会 3


 水鉄砲合戦の時間になった。一回戦目は同学年同士、偶数・奇数でフィールドをわけ、各フィールドで一チームが二回戦に進むことができる。一学年八クラスなので、四クラスずつにわかれて戦う。

 

 奥がすぼまった形の扇型をしたフィールドは奥行百メートル。一番奥にスイカが設置されている。放水禁止ラインが男女別に定められていて、女子はスタートラインから十メートルラインまで、男子は二十メートルラインまで攻撃ができない。

 途中に給水ポイントを兼ねた砦が三カ所あり、砦を多く奪取したチームが有利である。


 第一試合は一年生の奇数クラスだ。第二試合が一年生の偶数クラスで、第三試合が三年生奇数クラス、第四試合が三年生偶数クラスになっている。各試合、高級スイカが景品でスイカを奪取したチームが二回戦目の決勝戦に進める。

 第五試合が決勝戦で、高級メロンを奪い合うのだ。



 第一試合は彰仁たちの試合だったので応援に行くことにした。


 キャイキャイと華やぐ一年生たち。

 彰仁のチームが円陣を組む。もちろん修吾くんも一緒だ。


「景品は姫奈子が選んだスイカだ! 絶対美味いからな! 奪取するぞ!!」


 彰仁が声を張り上げれば、チームがオーっと雄たけびを上げた。


 やだ、あっくん、可愛いこと言ってくれるじゃない。


「彰仁頑張ってー! 修吾くんも応援してるわー!」


 思わず騒げば、修吾くんはにこやかに手を振ってくれた。彰仁は逆に、赤い顔をして指さして怒る。

 

「おまえ! 黙ってろ!! 見にくんな!!」


 彰仁の怒号に、キャーっと喜ぶ女子たち。


 可愛いと言われてるけど、彰仁大丈夫?

 まぁ、うちのあっくん、可愛いのは事実ですけど?


「彰仁が少し気の毒だな」


 氷川くんがボソリと言った。


「え!? 不甲斐ない姉過ぎますか?」


 思わず聞き返す。


「いや、男として可愛いというのは傷つく」


 そう答える氷川くんこそ可愛いんですけど?


「男心は難しいですね。私はカッコイイも可愛いも嬉しいですけど」

「そうね、姫奈ちゃんかっこいいもの」


 詩歌ちゃんがニッコリ笑って、照れてしまう。


「うーちゃんにそう言われると、俄然やる気出るわ!」


 そんな話をしていれば、きゃぁぁぁと激しい歓声が起こった。水鉄砲合戦がはじまるのだ。

 彰仁と修吾くんはラッシュガードを脱いで隣り合っている。格好良いのだけれど、頭には金魚すくい用のポイが付いている。


「修吾くーん!」

「彰仁くーん!」


 こういう時は運動部の男子が大人気だ。しかし、応援する名前に生物部の彰仁まで入っていて、姉として少し安心した。弟が残念系だとは知っていても、あまりにモテないのも悲しい。応援してくれてありがとうと言って歩きたい。


 スターターピストルの号砲とともに、修吾くんが走り出す。やっぱりテニスプレイヤーは反射が違う。一人頭飛び出す形だ。その後を彰仁が追いかけて、修吾くんの背中を守る。


「やだー! 二人ともカッコいい!!」


 思わず燥いでしまう。


「あの二人、二人セットでファンの子が多いって、さやちゃんが言ってたわ」


 詩歌ちゃんがこそっと教えてくれた。


「そうなの?」

「修吾くんがたまに学院にくると凄いらしいわ。二人を見るために三年生ゴールドまで来るんですって」


 小学校、中等部と見守ってきて、こんなに大きくなってしまうとは。何だかホロリとしてしまう。

 男の子が男の人になっていく。


 砂の中を駆ける二人は一年生の中では圧倒的な強さで、狙ってくる水しぶきも多いけれど、華麗にさばいてスイカを目指す。

 怒号と歓声が混じり合って、青い空に抜ける。

 

 最初のスイカを勝ち取ったのは一年一組、修吾くんだ。


「やった! 修吾くんカッコいい!!」


 思わず跳ねる。


 終了のピストル音が鳴って、ワッとクラスメイトが駆け寄っていく。


「なかなか強敵だな」


 氷川くんが唸るように呟いて、綱も小さく頷いた。


 やだ、三年生、大人げない顔してる……。


「ちょっと、二人とも一年生ブロンズイジメしないでね?」


 思わず言えば、氷川くんが不敵に笑った。


「イジメはしないが手は抜かない」


 氷川くんのいいように思わずゾッとする。本気の氷川くんの本気など、太刀打ちできる気がしないではないか。


「まずは勝ち残らないとな! 姫奈子さん、浅間さん、頑張ろう!」


 さわやかーに氷川くんが言って、私も頷いた。

 

 何事にも一生懸命な氷川くんは尊敬しているのだ。そういう真摯な態度がみんなを引っ張っていく。もちろん私も前向きに引っ張られる。

 そうやって氷川くんに引っ張られ、真面目に頑張ることはカッコイイのだとわかるようになってきたのだ。


「優勝しましょうね!」


 そう言えば、氷川くんも詩歌ちゃんも笑顔で頷いた。




 第三試合の間に集まって武器の最終メンテナンスをする。塩ビ管で作られた水鉄砲は塩ビ管を感じさせない作りだ。

 生徒会執行部は遠泳大会の準備がクラス以外のものもあり忙しかったから、私達の武器はクラスメイトが作っておいてくれた。

 基本は協力しながら自分たちで作るので、水鉄砲のペイントは自己表現でもある。男の子の間では小さなおもちゃをつけている人や、ホンモノと見間違えそうなものまである。

 女の子の物はカラフルで可愛らしいものが多い。


 私の水鉄砲はキンキラのゴールド仕様。八坂くんはシルバーだ。氷川くんはいぶし銀で詩歌ちゃんは白い銃身にお花の絵がある。きっと、詩歌ちゃんを思い浮かべて考えてくれたのだろう。

 良いクラスだなとしみじみ思う。


 

 私たちは三年二組なので第四試合だ。三年三組の綱と明香ちゃんは第三試合ですでにスイカを獲得済みである。



 そしてついに私たちの水鉄砲合戦がはじまる。

 

 スタートラインに並ぶ氷川くんと八坂くんに、キャーキャーとピンクのハートが飛んでくる。ガンガンと鳴り物が鳴らされて、女子の奇声を打ち消すように男子の怒号も飛んでくる。


 スターターピストルを先生が空に向ける。

 その瞬間に八坂くんが悪戯に微笑んで、ラッシュガードのジッパーをさげる。


 ギャァァァという雄叫びとピストルの破裂音が爽やかな砂浜に響き渡って、鼻を押さえる淑女や膝をつくお嬢様達。

 私と詩歌ちゃんは耐性があるので、ピストルの音とともに走り出した。

 スタートラインでは八坂くんビームで遅れを取った女子たちが我に返る。


 基本女子は狙われにくい。詩歌ちゃんなどは、濡らしたら申し訳ないという気持ちが働くのだろう。男子が狙ってくることはまずない。


 それなのに私が狙われるのはなぜ? ねぇ、私、女子なんですけど!!


 飛び交う水しぶきの中を、詩歌ちゃんが盾になってくれて一緒に走る。

 男子から集中放水を受けているのは氷川くんと八坂くんだ。日ごろ女子の注目を集めるイケメンは、この時ばかりとうっぷんをぶつけられるのだ。

 天下の氷川財閥御曹司と、イケメンモデルに正々堂々と水をかけられる大チャンスなのである。みんな嬉々として狙っている。

 しかし、氷川くんも八坂くんもものともしないで、相手を返り討ちにしスイカを目指していく。まとめて狙われないように、二人は息ピッタリに絶妙な距離を取りながらフィールドを駆ける。


 一緒に戦ってみるとわかる。周りを見ている余裕などないのに二人とも凄い。


 私も終盤近くでポイを撃ち抜かれビチョビチョになって戦線離脱だ。

 せっかく可愛くまとめてもらった髪なのに、くせ毛がくるんと乱れている。これだからこの髪、嫌なのよ、そう思いつつクラスメイトの元に戻れば、クラス委員の女の子がタオルを貸してくれた。

 

「ありがとう!」

「お疲れ様」


 ポンポンと肩を叩かれみんなの輪に混じり、残った人たちを応援する。


「頑張れー!!」


 声をあげ、鳴り物を鳴らす。

 高級スイカとはいっても、氷川くんや八坂くんは食べ慣れているはずだ。クラスメイトだってそれなりに裕福な人ばかりだから、本当はたいした景品じゃない。

 それでも一生懸命に戦える。

 そういうクラスで良かったと思う。


 パンパンとピストルの音が鳴り響いて、氷川くんと八坂くんの二人が一緒にスイカを持ち上げた。

 二人とも水滴よりもキラキラと笑って満足げだ。


 修吾くんと彰仁もこんな風になったらいいなと思わず思ってしまう笑顔だった。




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