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高等部二年

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227.プロムの準備


 今日は芙蓉館にいる。今年度の生徒会役員と、来年度の生徒会役員になる二年生が集められたのだ。


「プロムの準備をはじめたい」


 淡島先輩のお言葉である。


 芙蓉学院のプロムは、高等部三年生が卒業するときに開かれるダンスパーティーだ。

 原則として、参加は自由。その年の卒業生ならだれでも参加可能だ。

 ペアで参加する場合、相手は同性でも異性でもよく、他校生でも他学年でも招待することができる。下級生はもちろん、卒業生でもかまわない。

 一般的には男子が女子を誘うことが多いが、カップルと決められているわけではなく友達グループでもよい。


 建前はそうでしょうよ! 建前はね!!


 実際、友達同士で参加する人は少なくない。もちろん恋人未満で参加する人はいる。しかし、プロムでダンス賞を取ったカップルは幸せな結婚ができるなんて言われているから、まあ、メインはカップルなのだ。


 私はシレーっと窓を見た。プロムとか全然全然、マジで全然関係ないし! やさぐれモードである。


 すると紫ちゃんが、私にこそっと耳打ちをした。


「風雅くんたちの最後のイベントだから……楽しくしたいわね?」


 思わぬ言葉に、ズキュンと胸が打たれた。


 そうか、淡島先輩や葵先輩ともこれでお別れなのだ。同じ大学に進めても、芙蓉学院は学生の多いマンモス大学だ。学部学年が違えば会うこともままならないだろう。

 急に寂しくなって、ウルっとする。


「そうね、良い思い出にしたいわね」


 私が答えれば紫ちゃんは嬉しそうに笑った。



 プロムの準備は三年生が主体となって行う。プログラムやどんなことをするかは三年生が決める。

 二年生は、三年生が楽しめるように準備を手伝ったり、当日の運営スタッフを務めたりするのだ。


 オープニングは三年生たちの想い出スライドから始まって、簡単なダンスパーティーだ。ダンスパーティーと言っても、デビュタントのような社交ダンスではない。

 立食スペースを用意した中で、適当なダンスミュージックを流すだけだ。フォークダンスの時間もあって、最後の方にはワルツの時間もあるにはあるが、ワルツは本気のカップル専用だ。

 最後にダンス賞の発表があるが、これはワルツ参加者の中で決められる。このダンス賞を獲得したカップルは幸せな結婚ができると言われているから、カップルたちはこれを目指すのだ。ダンス賞という名のベストカップル賞であり、ある種のステイタスなのだ。


 私たちは、淡島先輩に頼まれて三年生のスライド作りを手伝い始めた。学園から提供された写真や、三年生自ら持ち込んでくるものを整理する。できるだけ偏りのないように、全員きちんと載るように考えて構成するのだ。三年生と一緒になって、写真を選ぶのだがこれが大変なのである。


「わー! 風雅くんと姉のこんな写真があったのね!」


 紫ちゃんと私で盛り上がる。高校一年時の二人のことは知らないので新鮮だ。遠泳大会でいちゃつく一年生の二人。とても可愛い。


「こら、紫、まじめにやりなさい」


 葵先輩が姉らしく窘めれば、紫ちゃんは妹らしく、エヘと笑う。そんな二人のやり取りを幸せそうに眺める淡島先輩。私も二人の妹になりたい。紫ちゃんが羨ましい。


 他にも知っている先輩方の幼い写真に不思議な気持ちになる。

 いつも大人に見えていたはずなのに、自分たちがその年を越えてから見ると子供っぽく見えるのだ。 

 

 そんなふうに盛り上がっている私たちを横目に、冷静に処理をする明香ちゃん。


「このカップルの写真、女子が半目だから外しましょう。あ、この二人別れてるわ。この写真は使えないわね。こっちの二人、別の人と付き合ってるから、できれば使わない方がいいかも」


 明香ちゃんがサクサクと仕分けしていく。

 

「学校内でイチャイチャするからこういうことになるのよ!!」


 私はムキーっと怒り散らす。なんで、二年と三年で付き合う相手が違うのだ!


「これからプロムポーズがあるから、さらに使えない写真が増えるわよ」


 明香ちゃんがちょっと楽しそうに言った。


「プロムポーズ?」

「プロムに誘うことをプロポーズに掛けてそういうのよ。バレンタインも控えているし、これから三年生は大変ね」


 私の問いに明香ちゃんが答えた。


「うえー……」

「だから、持ち込み以外の写真はできるだけ男女カップルの写真を避けておいた方がいいでしょうね」

「うえぇぇぇぇ……」


 ゲッソリとする。


「でも、仕分け基準がはっきりしていればわかりやすいわ」


 詩歌ちゃんがニッコリと笑った。

 

「そうね!」


 私は完全同意で、バカップル写真をバシバシと不採用ボックスに入れた。別にひがみじゃないし!

 そしてハタと気が付く。


「そう言えば、淡島先輩はプロムポーズしたんですか?」


 意地悪く聞いてみれば、淡島先輩は余裕な感じで鼻先で笑った。


「白山さんのご心配はいらないよ。葵のドレスは僕がプレゼントするつもりだから。ね、葵、いいでしょ?」

 

 葵先輩は真っ赤な顔をして俯いた。


「……風雅の……ばか。そんなこと言うなら風雅のは私が選ぶわよ?」

「もちろん」


 バカップルに話を振った私が馬鹿だった。

 明香ちゃんが呆れたように私を見て、小さく笑う。


「ひなちゃん、見事に返り討ちね」

「ええ、グッサリ刺されましたわ」


 それを聞いた淡島先輩は満足げに笑った。



 大まかな写真の選定が終わったら、スライドの構成だ。動画配信をやっている三峯くんにノウハウを聞きながら、面白おかしく作っていく。

 フロアに流す曲の選曲から、立食パーティの食事内容まで、三年生と相談して決めていくのだ。これが三年生との最後の作業と思うと感慨深いものがある。

 三峯くんがプロジェクションマッピングの手配までしてくれる。

 おかげで今年のプロムは楽しいものになりそうである。

 





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