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【5巻電子書籍&POD化】神様のドS!!~試練だらけのやり直しライフは今日もお嬢様に手厳しい~  作者: 藍上イオタ@お飾り側妃は糸を引く7/5発売
高等部二年

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216/289

216.高等部二年 学園祭 1


 迎えた学園祭当日である。


 私たちのクラスは発表の一番目だ。「晏司くんのクラスがファッションショー」と言うことで期待度が高いのだ。もちろん、八坂くんに迷惑が掛かってはいけないので、八坂くんは出演しないとアナウンス済みなのだが、それでも一縷の望みをかけて見に来るファンはいる。


 薄いパンフレットには八坂くんはもちろん、他の生徒の名前や顔も入っていない。すべてイラストで構成され、記念にクラス全員の似顔絵イラストと愛称が記載されていた。ちなみに私はバナナ姫である。もう何も言うまい。


 ただ今教室でヘアメイクなどの最後の調整である。

 更衣室で着替えてきたモデルの子たちが、シーツを体に巻いて教室へ戻って着たところだ。初日はネタバレしないよう、移動にはシーツを巻いて服装を隠すようにしているのだ。 

 

 私は裏方だ。初めモデルに推薦されたのだが、辞退させてもらった。あの中二の学園祭の悪夢に万が一でもクラスメイトを巻き込みたくなかった。詳しい事情は話さなかったが、内部生たちは言わなくても察してくれた。氷川くんも今回は薦めてこなかったので助かった。


 氷川くんと詩歌ちゃんは、当然というか、彼氏・彼女に着て来て欲しい理想のデートコーデのモデルである。


 氷川くんは最後の調整で八坂くんに襟元を直されていた。二人のイケメンの距離近いやり取りに、女子は目をハートにさせている。


「パーカーをコートの中になんて着慣れないから変な気がする」


 なんて氷川くんが言えば、


「新鮮でいいんじゃない」


 なんて八坂くんが笑って答える。

 いったい誰向けのサービスなんだか。二人の世界を作り出している。


 氷川くんはオーバーサイズの紺のチェスターコートに、薄いグレーのパーカーとチェックシャツを重ね着し、黒スキニーにシンプルな黒スニーカーとレザーリュックだ。

 いつもなら絶対に着ないようなカジュアルダウンした服装に、氷川くんは戸惑いを隠せないようだった。


「よく似合っていると思います」


 声をかければ、氷川くんは嬉しそうに笑って胸を張る。そうすることでさらに堂々として格好良い。

 クラスメイトが、おお、と声を上げる。


「誰でも持ってるパーカーと黒スキニーなのにな」

「あのシャツなんて、このあいだ姉貴に『オタクっぽい』って言われたやつだぜ。そうか、中に着ればいいのか」


 男子が口々に騒いでいる。


 詩歌ちゃんは、太めの肩紐のタンクトップの上に、モヘアのオフショルダーを着ている。コロンと出た肩の丸みがとても可愛い。最後の最後まで肩を出すか肩を出さないか争ったうえで、今さっき肩出しに決まった。

 ボトムスはミモレ丈のフレアスカートにショートブーツだ。


 恥じらうような顔で笑う詩歌ちゃんは殺傷能力が高すぎて、彼女いない系男子などは直視に堪えないらしい。赤い顔をして目を逸らすから、詩歌ちゃんは不安そうに「似合ってないわよね?」なんて聞いてくる。

 詩歌ちゃんの薄いなで肩が白く光って、美味しそうだ。思わず心の中で舌なめずりをした。詩歌ちゃんはフォーマルの席では着物姿が多いので、肩出しスタイルはレアなのだ。


 詩歌ちゃんはサッと両手をクロスして、手のひらで肩を隠す。


「姫奈ちゃん、そんな風に見ないで?」


 上目遣いで言う詩歌ちゃんに悩殺される。ニコちゃんたちが言ってたことを理解した。これはエロい。鼻血出そう。


「……うん、詩歌ちゃん、最高です」


 でも、だから。

 顔を真っ赤にして言葉を失った詩歌ちゃんの肩に、手近に置いてあった移動用のシーツを掛ける。


「簡単に見せたらもったいないわね」


 そう言えば、詩歌ちゃんにギュッと抱きしめられた。


「ちょ、何事? バナナ姫カッコイイかよ!」


 男子から声がかかってヒューヒューと口笛が吹かれる。それこそ何事だ!


「ストール! メンズのストールかマフラー他にない? 舞台中央で、彼氏が彼女にストールを貸す演出! それ入れよう!!」


 ファッションショーの演出係が興奮気味に指示をする。


「メンズはない? 女子のだれかストール持ってる? 氷川くんが後から追いかけて来てかける、それでいこう! 氷川くん、浅間さん、良い?」

「ああ、わかった」

「はい」


 氷川くんはすんなりと頷く。詩歌ちゃんもちょっと戸惑った顔をしながらも頷いた。二人はこういう時に自分の感情をあまり持ち込まない。「恥ずかしい」よりも「クラスのため」を優先できるのだ。

 すごいなぁと感心する。


 すべての準備が終わったら、シーツを被って舞台袖に移動である。

 私たちは配布用のパンフレットと小物をもって、体育館に移動した。

 私と二階堂くんたち数名は体育館の座席の間を通って、希望者にパンフレットを販売するのだ。


「姫奈ちゃん!」

「美佐ちゃん!」


 桜庭の友達もちゃっかり席に座っていた。相変わらず制服でのご来場でチラチラ視線を集めている。


「パンフレットを作ったの。希望者に百円で販売してるんだけど、どう?」


 美佐ちゃんに手渡せば、パラリと中を見る。


「今日のコーデがイラストになってるの?」

「そうなの。使った小物の作り方とか、アレンジのアドバイスもあってちょっと使えるのよ」

「いただくわ!」


 桜庭の友人たちにパンフレットを販売すれば、周りの人も欲しいと言い出して、パンフレットはあっという間になくなってしまった。明日の分を追加で刷る連絡をしなくては!


 ファッションショーが始まる。

 

 私たち裏方スタッフ数人は、体育館内で待機だ。

 

 音楽が流れ始める。放送部の子がファッションのテーマやポイントを解説し、モデルがステージ上をゆっくりと歩く。


 初めは真面目スタイルの制服アレンジだ。あえて全て学校指定のアイテムにそろえた。ちなみに芙蓉学院は校則が緩いので、指定アイテムは販売しているが、着用する義務はない。そもそも学校指定のアイテムは高いから勿体ないと外部生が言っていた。


 制服は改造を一切せず、指定の丈のスカートに、シャツもネクタイも崩さずに着用する。指定のカバンは革製の肩掛けボストンでジッパーには芙蓉の花が付いている。ちなみに女子のハイソックスにも芙蓉のマークはついている。

 靴は革のローファーで綺麗に磨き上げておいた。正しく着られた制服は、古風かもしれないがそれだけで美しい。

 アレンジとしては、胸ポケットにマグネットブックマークを挿して、慎ましくお揃い感を出した。ちなみにマグネットブックマークは手芸部の作品で、今日の学園祭でも購入できる。


 次はギャル系制服のアレンジだ。ギャルの子たちが中心となってアレンジしてくれたものだ。ちょっと改造された制服ファッションの男女が、二人でお菓子をわけあいながらステージを元気に歩く。

 先ほど正規の制服を見たところだから、その違いが際立って効果的だ。パンツの裾をまくり上げ裏地と踝を出したり、女子のスカートも若干短い。靴もポップなスニーカーで、他のアイテムもカラフルで派手だ。前髪をお揃いのヘアピンなんかで留めてチャラい。

 うそ、可愛い。私も綱としたい。でも、絶対綱は冷たい目で私を見て長いため息とともに拒絶するのがわかるので、指をくわえて羨ましがるしかない。


 その後は、私服のアレンジだ。こちらは原宿系とガーリッシュ系の女の子同士が登場だ。華やかでキラキラしていて、目にも眩しい。

 男の子は、ストレート系とビター系なんだそうだが、正直良くわからない。格好良いとは思うけど、ビタ男ってなに?


 最後に氷川くんと詩歌ちゃんの『デートに着て来てほしいコーデ』の登場だ。肩出し詩歌ちゃんが一人で登場した時点で、体育館がどよめいた。事前の口コミで色々広がっていたらしく、男子の見学者も多かったのだ。


 詩歌ちゃんは一瞬立ち止まり恐る恐る体育館を見渡した。私と目が合ったから、勇気づけるために手を振ってみる。詩歌ちゃんは気が付いたようで、私に手を振ってトトトっと駆け出した。そこへ後ろから氷川くんが慌てた様子で追いかけて来て、そっと詩歌ちゃんの肩にストールをかける。

 自然な感じでアイコンタクトをし、多分氷川くんが詩歌ちゃんへ、突然走り出さないように注意したのだろう。詩歌ちゃんが軽く謝って、それにイヤイヤなんて氷川くんが応じて、今度は二人でゆっくりと歩み出す。

 これ、なんだろう、なんだろう。モゾモゾする。モジモジする? お似合いねー、と声が聞こえて、そうか、それだと納得する。「あれであの二人付き合ってないんだよ!」と叫びたい。


 ファッションショーは大成功に終わり、早めにクラスの出し物が終わった私たちは、芙蓉会のお手伝いに行くことになった。





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