211.ジャパンオープン 1
さて、本日はジャパンオープン決勝戦である。
修吾くんが無事決勝に残ったのだ! 大快挙である。
修吾くんから招待されて、彰仁と二人で応援に来ている。
駐車場の用意などしてくれると言っていたが、折角休日お昼の開催なので彰仁と二人公共機関を乗り継いできた。
モノレールに乗って、海沿いのコロシアムに向かう。初めてモノレールに乗るのと七方くんに話せば、丁寧に乗り方を教えてくれた。これで姉として彰仁を案内できる。
そう思っていたのだが、彰仁は普通にモノレールに乗れるみたいだった。悔しい。
初めて乗るモノレールは、いつもの電車よりワクワクして清々しいのはなぜだろう。
テニスの応援に行く人が多い車内では、話題も修吾くんや目玉選手の内容が多い。また修吾くんのCMしているアイテムを持っている人などもいて、良いマーケティングになる。
実は、白山茶房もスポンサーとして修吾くん応援ブースに参加しているのだ。応援のついでに、現地調査も兼ねている。そんなわけで、スポンサー席もあるにはあったのだが、そちらは店長さんに譲って、修吾くんに甘えることにしたのだ。「身内が来ないのも恥ずかしいから」なんて言われては断れない。光毅さまはSBの関係者席なのだそうだ。
先ずは修吾くん応援ブースへ向かう。最近の目覚ましい活躍によって、白山茶房より大きな企業のスポンサーも増えた。おかげで修吾くん専用の応援ブースまで作られたのだ。もう白山茶房がつぶれても修吾くんに関しては安心である。
修吾くんの爆発的な人気に火をつけたのは制汗剤のCMだ。爽やかな修吾くんとテニスをする人気女優の甘酸っぱい感じのアオハルCMが女子受けし、テニスの人気も急上昇したのだ。
スポーツ食品のメーカー、靴やラケットはもちろん、氷川ポリエまでオリジナルスポーツブランドを立ち上げて、ユニフォームにロゴをいれる始末だ。あれだけ、非協力的だったはずなのに、ちゃっかりSBテレビのネット配信サービスまでスポンサーについている。
応援ブースを覗いてみれば、汗拭きシートなどを配っていてなかなかの盛り上がりだ。島津修吾の香りなんて書いてあるけど、いったいどんな香りなのか。気になって嗅いでみれば、彰仁から怒られた。普通にシトラスミントの香りだった。
氷川ポリエでは、修吾くんモデルのリストバンドを販売していた。
白山茶房ではたい焼きの販売である。修吾くんの好きなソバ粉の入った皮バージョンだ。紙袋は今日だけ特別印刷で、日付とジャパンオープンの文字と、『頑張れ!修吾!』と書かれている。
リストバンドを購入し、タイ焼きも買って、フォトスポットで嫌がる彰仁と共に写真を撮る。それを修吾くんに送信した。試合前の大切な時間だから見ているとは思わないけれど、それでも電波に乗って応援の気持ちが届いたら嬉しいと思う。
用意された席に向かえば、コートエンド南側の最前列で驚いた。所謂VIP席である。実は団扇と法被を用意してきたのであるが、さすがにここで着るのは悪目立ちしすぎるだろう。鞄の中にしまったままにしていれば、彰仁が「だから言っただろ?」と勝ち誇ったような顔で言った。
出かけに止めろと言われたのを無視してきたのだ。グヌヌヌ。
大きな会場に立った一面。青いコートに白いライン。黒いネットが中央をわける。初めてテニスをする修吾くんを見たのは公営コートだった。そのころに比べるとずいぶん立派なコートに立つ修吾くんを見て誇らしく思う。
「ほんとうに凄いわね……」
「ああ、修吾は偉い」
彰仁が修吾くんを眩しそうに見ながら、噛みしめるように言った。
周りから見れば修吾くんは恵まれているように見えるかもしれない。資産家の息子で、子供の頃から一流の指導者につき、潤沢な資金が使えた。でも、それは遊びだから与えられていただけで、将来の夢としたときにそれらは一切奪われたのだ。
それに、欲しかっただろう親からの応援の言葉はなかった。どんなに良い成績を残そうとも褒められずに、それなのに諦めなかった修吾くんは凄い。
最終的にSBテレビの子会社までスポンサーにつけたのだ。島津のおじ様が折れるのも時間の問題だろう。
青いコートに修吾くんが現れた。ワァァと歓声が沸き上がる。
修吾くんは上下黒のテニスウエアだ。胸には白山茶房のひし形。背中には氷川ポリエのブランドロゴが付いている。
ファンの子たちはお揃いのリストバンドを掲げて修吾くんにアピールしている。
修吾くんは私たちを見つけると、胸の白山茶房のひし形を掴み唇に当てた。そして、指さした。
「え? 私?」
驚いて思わず自分を指させば、修吾くんはおかしそうに笑って頷いてからコートへ向き合う。
「修吾のばか……」
隣の彰仁が顔を真っ赤にして頭を抱えている。
「え? 彰仁?」
今のは彰仁へのアピールだったのか。
「え? なに? 彰仁へ勝利宣言!?」
思わず彰仁を見れば、彰仁が恨みがましそうな顔で私を睨む。
「なんでそうなるんだよ!」
「え!? 違うの?」
「意味わかんねーよ! もう!!」
彰仁は大きなため息をついた。
審判が試合開始を告げる。
秋の日差しが眩しいコートで試合が始まった。修吾くんの相手は、昨年四大大会を制した世界でも有名な選手だ。もちろん下馬評で優勝者の筆頭にあがっている人物である。
修吾くんの決勝進出は期待されてはいたが、それほど有力視はされていなかったので、この状況はスポンサーにすれば万々歳だ。
青いコートを縦横無尽に駆ける修吾くん。確かに成人した外国人選手から見れば小さい身体なのに、気がつけばボールを捕らえていて多彩なショットで絶妙な場所に返していく。ニンジャと不思議がられても仕方がない。
黄色いボールが白いライン内側ギリギリに叩きつけられ、それを打ち返す修吾くん。長いラリーに、照り着く日差し。選手の体力がドンドンと削られていくのがわかる。
手に汗握る試合展開。彰仁と軽口を叩くこともできずに、ひたすら修吾くんの応援をする。
修吾くんのことをちょっとしか知らない私だって、どんなに頑張って来たのか知っている。
蘇るのは夏休みのテニスコート。日に焼けた修吾くん。雨の日はスカッシュをして、手のひらだって硬くなって。小学生のころから、大学生の光毅さまに負ける気は毛頭なくて、中学生だというのに一人で海外で戦う。ずっとずっと努力してきたのだ。
知っているからこそ、応援する手に力がこもる。勝ってほしい。努力が報われて欲しい。そう願う。
最後のボールが落ちた。悔しそうにボールを見送る修吾くん。
審判の「ゲームセット」の声が無情に響く。試合終了だ。
大きなため息とともに脱力した。
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