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【5巻電子書籍&POD化】神様のドS!!~試練だらけのやり直しライフは今日もお嬢様に手厳しい~  作者: 藍上イオタ@お飾り側妃は糸を引く7/5発売
高等部二年

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197.進路について考える


 芙蓉学院では二年生になると自分で授業を選択できる。体育や音楽、美術などいった教科と、基礎的な授業とホームルームはクラスで受ける。

 そのほかの授業は、自分の進路に合わせて選択だ。

 私たちは芙蓉館で二年時に履修する教科について相談していた。


「綱は進路どうするの?」

「私は経済か商科をと思っています」

「そうしたら数学取る? とるならどれにする?」


 数学と言ってもレベルごとにクラスが違うのだ。理数系大学を目指す人の数学と、受験で一応数学が必要なだけの人ではクラスが違う。


「私は特進数学Aですね」


 綱は数学でも一番難しいクラスだ。さすがに私には無理だろう。


「姫奈はどうするんですか?」

「迷っているところなの。家のことを考えれば商科とか経済なんでしょうけれど、料理も好きだから……」

「看護医療学部に栄養科がありましたね」

「そうなの。どうしようかしら」

「栄養科も良いと思いますよ。どうせ経営は私が学びますし」


 綱が当然のように答えて、ボンと顔が赤くなる。


 それって、それって、大学を卒業しても一緒にいてくれるってことかしら? ちょっと待って、ちょっと待って? え? それって、どういう意味かしら? 実質プロポーズじゃないの!? いや違う彰仁のためよね? わかってる、わかってるから落ち着け私!


 ゴホン、氷川くんが咳払いをしたから思わず顔をあげる。

 詩歌ちゃんと紫ちゃんがニヨニヨした顔で私を見た。


「栄養科に行くなら、化学が必須だな」


 氷川くんが言う。


「そうですよね。化学は取るつもりです。あと、数学と英語ですね。生物も取ってた方が良いかしら? 氷川くんは?」

「俺は経済だな。まぁ、だから、その、……経営に関しては、俺を頼ってもいいぞ!」


 氷川くんに言われてキョトンである。氷川財閥の御曹司を誰が経営のブレーンとして使えるというのだ。彼が将来回すのは、白山茶房ではなく日本経済である。


「あ、え、はい」


 戸惑いつつ答える。


「僕は芸術ー」


 聞いていないけれど八坂くんが答えた。


「大学部に進学するんですね」

「うん、まぁ、どっちでもいいんだけどね。姫奈ちゃんがいるならおもしろそうだし」


 八坂くんよ、就職している君は強いな。余興で進学だと?


「さやちゃんは?」

「私は法科ね」


 尋ねれば、迷いなくきっぱりと答える。学生結婚の人生設計のできている明香ちゃんだ。今更進学では迷わないのだろう。


「ゆかちゃんは?」

「私も法科……にしようかしら……? 芙蓉には天文がないし、そもそも天文だと就職には不利だから……」


 チラリと上目遣いで二階堂くんを見た。今日は二階堂くんも招待されているのだ。

 二階堂くんの家は弁護士だ。


「俺は法科の予定だけど、紫は自分の好きな勉強をしたらいいよ。心配することなんてないから」

「……うん」


 見つめあう二人。

 なーに甘い空気を漂わせているんだか! なんだよ、「将来の心配しなくても俺のお嫁さんだからね」的なやつだよね? それこそ本気で実質プロポーズだよね? そういうのは二人でやってくんない?? 


 ジト目で二人を見れば、二階堂くんが見せつけるように笑った。


 きーっ!! 羨ましい!!


「詩歌ちゃんは?」

「私は国際教養にしようと思って」

「え? 意外。芸術かと思ったわ」


 詩歌ちゃんの家は華道の家元なのだ。


「お花は祖母から教わっているし。将来的にはいろんな国へ華道を広められたらなって思っているの」


 詩歌ちゃんが少し照れた感じで笑った。すごくかわいい!!


「素敵ね! 素敵!!」

「本当?」

「うん! うーちゃんならきっとできるわ!」


 詩歌ちゃんも将来を見据えているのだ。だんだんと大人に近づいている感じだ。


「姫奈ちゃんはサマースクール希望するの?」

「うん!! 絶対行きたいの!」


 詩歌ちゃんに問われる。

 二年の夏休みには公募制で行われるサマースクールがある。スイスの有名寄宿学校へ短期留学するというものなのだが、この寄宿学校はエレナさまの母校なのだ。エレナさまからサマースクールがあるから遊びにおいで、なんて誘われたからには、行かないなんて選択肢はない!

 しかも、バレエスクールに来ている憧れのマダムも卒業生だと聞いて、ますます行ってみたいと思っていたのだ。


 しかし、このサマースクールは希望者の中で英語の選抜テストを行い、十名しか参加できない狭き門だ。前世では受験すらしなかったくせに、氷川くんにおいていかれたと拗ねまくったのを覚えている。


 だって、サマースクールの間、氷川くんは一度も連絡をくれなかったのだ! スマホが使えない決まりだとは言っていたけれど、外出時にだって電話ぐらいできるはずだし、ハガキくらいくれても良かったのにと当時は憤った。

 まぁ、好きでもない婚約者にそんな時間を割くはずはないと今では思うが、当時は愛されて当然だと思っていた。なぜだ、自分。


「うーちゃんは?」

「チャレンジするわ」

「さやちゃんは?」

「私は模擬国連のほうね」

「模擬国連……」


 相変わらず明香ちゃんはなんだか意味がわからない。模擬国連てそもそも何よ?


「ゆかちゃんは?」

「種子島と石垣島の天文ワークキャンプに申し込むの!」


 紫ちゃんはウキウキとした感じで答える。

 話題のついでのように、さり気なく綱にも聞いてみよう。

 だって、サマースクールの間は綱と会えないどころか、声も聴けなくなる。出来たら一緒に行きたいな……なんて、欲張りすぎるから口には出せないけれど。


「つ、綱は?」

「できたらサマースクールに参加したいと思っています」

「!!」


 思わず小さくガッツポーズをする。


「なら英語は特進Aクラスね!」


 詩歌ちゃんが嬉々として、選択クラス調査用紙に記入する。私も怯えながらも記入する。英語はすこし自信があるのだけれど、特進クラスは一クラス三十人だ。学年で上位三十人に入らなければならないのだ。希望を出してもレベルが合わなければ下のクラスに振り落とされる。サマースクールに行く以前にこのクラス分けに落ちる可能性だってあるのだ。


「クラス分け、落ちたらごめんなさい」

 

 一応先に謝っておけば、詩歌ちゃんは小さく笑った。


「私も実は自信がないの。だから、クラスがだめでもサマースクールの受験勉強は一緒にしましょ?」


 上目づかいでオネダリされたら、私はみもだえるしかない。好き。


「暇な時はお手伝いさせて」


 八坂くんがそう笑って、


「大丈夫ですよ。私が見ます」


 と綱が言った。


 私たちは、お願いしますと頭を下げた。




 あの日まであと少し。

 体は大丈夫だと思う。婚約はしていないから破棄しようもない。お父様の会社だって、ブラックにはなっていない……はず。

 貯蓄だって少しは出来た。現金以外の資産も少しある。自転車も乗れるようになったし、白山茶房で少しはバイトにも慣れた。

 詩歌ちゃんをイジメるだなんてとんでもないし、八坂くんにはブスだと言われなくなった。

 前世とは違うのだ。


 だけど、不安はぬぐいきれない。


 どうなっても後悔のないように。グッとこぶしを握って決意を新たにした。 





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