表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【5巻電子書籍&POD化】神様のドS!!~試練だらけのやり直しライフは今日もお嬢様に手厳しい~  作者: 藍上イオタ@天才魔導師の悪妻26/2/14発売
高等部一年

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

173/289

173.高等部1年 学園祭 2


 迎えた学園祭。土曜日から大盛況で、最終日の今日はさらに盛り上がっている。

 

 一年八組のパンケーキカフェは大変混雑している。何しろ、八坂くんのギャルソンが噂に噂をよび、一年八組は朝に整理券を配布し、もう受け付けはしていないくらいだ。

 ギャルソン姿の晏司くんが席へ案内してくれるその一瞬のために、女子が集まっている。八坂くんには、席の案内係に特化してもらったのだ。入り口に佇む八坂くん。もうそれだけでものすごい効果の看板である。


 ギャルソンの制服はお裁縫が得意な女子たちが作ってくれた。黒いベストに、黒いロングのギャルソンエプロン、クロスタイも黒。スラックスとYシャツは学生服だ。女の子たちが男子の髪をそれっぽくアレンジすれば、男の子たちは見違えた。片手でシルバーのお盆を持って歩く姿など、三割増しである。


「姫奈ちゃん、カッコイイ?」


 八坂くんは、言うまでもなく。である。うん、計算通りなんだけど、なんでムカつくんだろう。というか、聞いてくるからムカつくんだな、きっと。


「……ええ、とても」

「あとで給仕しましょうか? マドモアゼル?」

「あ、そういうのはいいので。ファンサは本番でお願いします」


 シッシと追い払う。


「一条ー。姫奈ちゃんが酷い」

「八坂くんも懲りないね」


 一条くんが苦笑いした。八坂くん、一条くんに泣きついたって無駄だぞ。

 オールバックに髪をまとめた一条くんは、教室とは違う大人っぽい雰囲気を醸し出していて、ふたりがじゃれつく姿を女子たちが嬉しそうに見ている。わかる。美しい男子は存在が尊い。


 私も綱のギャルソン見たかったな。クラスが違うから無理だけど。


 クラスの女子たちは特権で、八坂くんと集合写真に納まれると大興奮である。九島くんは彼女と写真を撮っていた。

 リア充め! 確かに学園祭前に誰かと付き合っておきたい、その判断、あながち間違ってないと思うよ。キー、悔しい!!


 女子は裏方である。私は理子さんに髪をポニーテールにしてもらい、ひたすらパンケーキを温め、飲み物を注ぐ。飲食店は肉体労働だ。


 パンケーキ自体は冷凍食品をレンジで温めて供給するだけの学園祭仕様。昔ながらの薄いパンケーキに、冷凍生クリームを渦巻きに盛り、メープルシロップをかけ、天使の羽根型チョコレートをそこに挿す。ちょっと八坂くんをイメージした仕様だ。生クリームは臨時出店では使えないらしい。保健所の指導だそうだ。

 それでもバンバン売れていく。味も重要だが、売り方も大切なんだと勉強になる。


 女子率の高いカフェの様相に、その他ギャルソン男子は喜んで働いているので、ウィン―ウィンである。無論、桜庭の友達はこれ見よがしの制服姿でご来店していたので、私には問い合わせの案件がやたら来ている。

 いや、だから、私だって元桜庭なんですけど!!


 私も負けじと見せつけるように桜庭の友達に声をかけた。


「あとで天文部にもよって? 星座ネイルもしてるのよ!」

「本当! 行くわ!!」


 その会話に耳がダンボな男子たち。こそこそ天文部に行く相談をしてるの、聞こえてますからね? 

 さあ君たちも、天文部へおいでませ! 


 

 カフェは早々に売り切れて、私達のクラスは自由時間になった。詩歌ちゃんと八坂くんと一緒に芙蓉館へ向かう。クラスの仕事が終わった順に仮装をするのだ。


「自信作!!」


 胸を張る八坂くんの言う通り、七匹の子ヤギになった詩歌ちゃんは異常にかわいかった。


「かわいい! かわいい! かわいいぃぃぃぃ!!」


 叫べば詩歌ちゃんが困ったように笑った。うん、それも可愛い。


 白くてクルっとした短毛ファーの膝丈ワンピースの中には、薄いピンクのパニエ。白いタイツの足首には、小さなピンクで足跡のマークが付いている。ウエストはベルベットのピンクリボンで締められて、大きな白い垂れ耳は内側がピンクだ。


「あれ? 角はないのね?」

「子ヤギでしょ? 角があったら大ヤギじゃない?」

「……そうね」


 綱よ。猫耳の方が良かったかもよ?


 八坂くんはと言えば、女子と同じファー素材だが色は薄いグレーのスラックスとベスト。中は制服の白いシャツ。蝶ネクタイは女子と同じピンクのリボンだ。ちゃんと小さなお尻尾もついている。お尻尾の内側もピンクである。


 八坂くんの明るい髪に灰色のヤギのたれ耳。これは下手なウサギより可愛い。

 氷川くんは「晏司に任せれば安心だ」といっていたけれど、これは誤算だったのではないだろうか。

 女子は嬉しい誤算である。


「……や、八坂くんが、かわいい……」


 いつもは悪魔な八坂くんが、まるで天使である。思わず呆然とすれば、晏司くんウインクが飛んで来た。


「本気を出せばもっとすごいよ?」

「出さなくてもいいです」


 ウインクを跳ね返す。

 私もポニーテールを解いて、たれ耳カチューシャを付けた。


「姫奈ちゃんも可愛い!」


 八坂くんがお世辞を言う。


「八坂くんほどではないです」

「本当に姫奈ちゃん可愛いわ!」


 詩歌ちゃんもいってくれた。


「詩歌ちゃんありがとう! すき!」

「同じこと言ってるのにこの差! 僕にも好きって言ってよ!!」


 八坂くんが笑う。


 三人で連れ立って学園祭の見学だ。目立つ二人を連れているうえに、ヤギなので注目の的だ。


 ヤギよね? 羊? え、角がないわよね? ヤギね? 八坂くんがヤギ……。なんでヤギなの? コソコソと声がすれば、「七匹の子ヤギだよ」なんて、八坂くんがいちいちおてふりをしている。営業豆男である。


 私たち子ヤギ三人は連れ立って校内を歩く。まずは綱のクラスの発表だ。演劇をやると言っていた。丁度時間にもなるし三人で見学に行く。綱はただのナレーションだから見に来なくていいと言っていたけれど、見に来るなといわれれば見に行くのが私です。


 並んで席について待っていれば、最初に出てきた綱が、マイクの入った状態で「は?」といって、マイクを落とした。ゴンと音が響く。


 カッコいい綱の声で、間抜けな「は?」である。女子曰く「クールな生駒くん」が、マイクを落としてるんである。


 思わずクスクス笑う。八坂くんは楽し気に綱に手を振っている。綱は忌々し気に八坂くんを睨んでから、ワザとらしくコホンと咳払いをした。


 演劇は定番の桃太郎で、桃太郎役は読者モデルの女の子だ。やられる男子の鬼たちも楽しそうで良かった良かった。


 劇が終わったところで、席を立とうとすれば綱が走ってやって来た。


「なんですか! それは!!」

「七匹の子ヤギ。まだ三匹だけど」


 シレっと八坂くんが答える。綱は盛大にしかめっ面をした。


「生駒は嫌かなーと思ったんだけどね? でもヤギじゃないなら混ざらないでよ」


 八坂くんがニヤニヤ笑う。


「……着替えます」


 綱が苦しそうに言った。


「なに?」


 八坂くんが楽しそうである。マジでこの人、綱のこと好きすぎじゃないだろうか。


「すぐ着替えて合流します! 着替え! どこですか!!」


 綱のやる気に驚いた。


「綱、可愛い八坂くん見たら早く着たくなっちゃった? なら芙蓉館に一緒に行きましょ?」


 言えば、八坂くんはお腹を抱えて笑い、綱は私のことを信じられないものを見るような眼で見た。




 氷川くんの教室は展示という名のお化け屋敷だったので、少しだけ見に行った。怖いから中には入らない。

 入り口にいた氷川くんと二階堂くんが私たちを見て呆然とした。


「……晏司……」


 やっぱり、お怒りか? でも、キグルミパジャマよりは良いと思うんだけど。八坂くん大丈夫?


「どう? 良いでしょ?」


 ドヤ顔で八坂くんが言えば、氷川くんが無言で頷く。二階堂くんがつばを飲み込んだ。綱はため息をつく。


「え、……これ紫も着るの?」


 二階堂くんが恐る恐る問う。


「うん。可愛いよきっと」


 八坂くんが屈託なく笑った。二階堂くんが目頭を押さえ、いや、だとか、うう、だとか悶えている。

 紫ちゃんがやってきて、私たちを見て目を輝かせた。


「姫奈ちゃん、詩歌ちゃん、可愛い!」

「ね? ゆかちゃんも終わったら早く着て?」

「うん!」


 二階堂くんはそのやり取りを聞いて何か言いかけていたようだが、綱をちらりと見た。綱は緩く首を振る。そして、何やら二人でアイコンタクトをし、結局何も言わなかった。

 

「僕、本気でデザイン画描いちゃった」

「え? 八坂くんがデザインしたんですか?」

「うん」

伝手つてがあるって、借りてくる伝手ではなくて?」

「オーダーメード!!」


 エッヘン、と胸をそらされる。予想外の本気に引きつり笑いしかない。


「和親も後で着てよね」


 氷川くんは八坂くんを見てハッとした顔をする。男子の衣装に今更気が付いたらしい。


「俺が……これを?」

「和親、学園祭も本気でやろう? 七匹じゃなきゃ意味ないんだから。僕が今日来た意味もないでしょ?」


 八坂くんが怖い。

 氷川くんが渋々頷けば、クラスメイト達が「氷川くんと沼田さんはあがっていいよー」と言ってくれた。



 氷川くんと紫ちゃんが合流して、次は明香ちゃんのクラスだ。三峯くんが中心になってVRルームにしていたらしい。展示の中では最長の列を誇っている。展示が盛り上がりに欠けるなんて言ってすみませんでした。

 三峯くんは逆境を自分の力に変えるのが上手だと思う。


「白山さん可愛いね」


 三峯くんが軽く言う。


「どうもありがとう」


 私も軽く答える。


「なに? 羊? ヤギなの? 食べたくなっちゃうね」

「七匹の子ヤギです。ところでヤギって食べるんですか?」

「ラムほどメジャーじゃないけどね、アジアでは食べる国もあるよ」

「知らなかった」

「今度食べさせてあげようか?」

「本当ですか!?」


 思わず目をキラキラさせて三峯くんを見れば、綱が間に入り三峯くんを見た。


「大丈夫です間に合っています。沖縄でもヤギ肉は食べますし」

「保護者が怖いなぁ」


 三峯くんが笑う。八坂くんまで割って入って、私を怒る。


「姫奈ちゃんも! 本当に食べられちゃうよ!」

「なんで私が食べられるの? ヤギ肉の話でしょ?」


 三峯くんを見れば、三峯くんも笑って頷く。


「ね、白山さん。八坂くんも冗談が通じないでこわいね」

「ほんとうよ! なんなのかしら」


 憤慨すれば、八坂くんと綱と氷川くんまでもが顔を見合わせた。

 騒いでいれば明香ちゃんもやってくる。


「わ! 可愛いじゃない! 思ってた感じと違ったわ。私、パジャマみたいになるのかと思ってた」

「ねー! 可愛いわよね! 八坂くんのデザインなの!」

「凄いわねぇ、力作ね?」


 明香ちゃんが八坂くんを見て笑う。


「葛城さんも早上がりできそうなら、一緒に行こうよ。みんな今から着替えるから」


 八坂くんが明香ちゃんを誘った。


「それなら葛城さん上がってもいいよ。休憩返上で頑張ってくれてたし。葛城さんと沼田さんはもちろんだけど、氷川くんと生駒くんのヤギ姿も楽しみだな」


 三峯くんが楽しそうに笑った。氷川くんと綱は嫌そうな顔をした。



 みんなで芙蓉館に戻ってヤギに着替える。


 やっぱり思った通り、綱のヤギ姿は可愛かった。真っ黒い髪に垂れ耳のピンクの内側が映える。小さいお尻にはキュートな尻尾。チョット拗ねて、照れてる感じのほっぺの赤みが、なんともなんとも煽情的だ。食べたくなっちゃうオオカミの気持ち、わかるかも。


「綱、かわいい! 綱、写真撮らせて?」

「いやです」

「えええ~。いいじゃない。一枚だけ! ね?」

「いやです」

「こんなに可愛いのに勿体ないわ? ね? ちょっとだけ!」

「可愛いなんて言われても嬉しくないです」


 綱が怒るが、子ヤギ姿では可愛いだけだ。


「フン。綱のけちんぼ」

「減るわけじゃないのにね。僕は可愛いでも姫奈ちゃんから言われれば嬉しいけどなー? ねぇ、姫奈ちゃん、けちんぼな生駒なんかほっといて僕と一緒に写真撮ろう?」

「ええ。いいわよ。せっかくだもの」

「姫奈!」


 綱が窘めるけど、知らないもん。綱のけちんぼ。


「お、俺も一緒に」


 氷川くんが便乗する。


「和親は混ざらないで。僕は姫奈ちゃんと二人っきりで撮りたいんですー」


 駄々っ子みたいに八坂くんが言う。氷川くんが戸惑った顔をするから、ちょっと気の毒に思った。


「後で皆で撮りましょう?」


 そうすれば、綱の写真が撮れる。みんなで撮ると言えば、いくら綱でも断らないだろう。

 そうやってみんなで写真を撮りあって、ワイワイとはしゃぐ。


 仮装行列を練り歩けば、さすがの八坂くん効果で、子ヤギに膝をつく女子たちが多数。セクシーウィッチな美女先輩がやってきて、「バナナちゃん、最高よ」と抱き締められた。いえ、私は何もしていません。


 ゴリマッチョ先輩は、キングゴリラの仮装で練り歩き、三峯くんは赤ずきんの狼だった。自主参加で友達と参加したらしい。三峯くんがガオーだなんてふざけてくる。子ヤギ男子三名に怒られて、ホールドアップする姿はなんだかおかしかった。子ヤギTueeee。


 閉会式では、来場者投票の花びらの数から、各部門上位三位までが読み上げられた。私たちのクラスは、模擬店部門で第一位だった。展示部門の第一位は人力コーヒーカップの三年生で、三峯くんと明香ちゃんの一年二組は惜しくも二位。発表部門は当然ながらの演劇部。


 最後に、投票のために集められた花びらで花吹雪だ。体育館の中を花びらが舞い散って、それはそれは美しかった。



 こうやって高校初めての学園祭は幕を閉じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ