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【5巻電子書籍&POD化】神様のドS!!~試練だらけのやり直しライフは今日もお嬢様に手厳しい~  作者: 藍上イオタ@天才魔導師の悪妻26/2/14発売
高等部一年

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170.塾女子デート 1


 

 塾の教室に入れば、毎度毎度アネゴ、アネゴと挨拶をされる。なぜか、塾ではアネゴ認定されている、わたくし白山姫奈子十六歳、まあまあなお嬢様である。


 学院ではバナナが定着し、塾ではアネゴ。


「本当に不本意だわ……」


 思わず隣の席の晴人くんにぼやいた。


「本当に白山さんて同級生なんだよね?」


 晴人くんがオズオズと尋ねる。


「当然よ。どこが他の子と違うって言うのかしら?」

「うーんと、まず、話し方が玄人っぽい」

「玄人……」

「恐れ入りますって初めて聞いた」

「ええ?」

「それに、その鞄」


 学習道具を入れた、お母様のお下がりの革のトートバッグをさして晴人くんは続けた。


「おれ、ファッションとか知らないけど、その鞄は知ってる。それ有名なブランドのだよね? 高校生で持ってる子なんていないし、たぶん、普通、無造作に床に置いたりしない」

「え? だってこれ、母のお下がりで古いんだもの。汚してもいいっていただいたのよ?」

「うん、なんか、それふくめて、全体的になんか違うんだもん」


 脱力したように晴人くんは笑った。


「変かしら?」

「変じゃないけど、なんかちょっとずれてる……」

「鞄、変えようかしら? みんなが持ってるようなリュックにしようかな」


 前から可愛いリュックが欲しいと思っていたのだ。でも使いどころが分からずに、買うのを控えてきた。そうか、塾鞄にすればいいのだ。


「えー! アネゴ、リュックにするの?」


 話に割って入ってきたのは、リア充グループの女子、斉藤君と斉藤夫妻と呼ばれている斉藤ニコちゃんだ。


「どうしようか悩んでいて。でも私、皆が持っているような可愛いリュックを持ってないの」

「買っちゃう? アネゴ、買っちゃえば? そのバッグ高い奴かもしれないけどさ、オバサンくさいもんね」


 屈託なくニコちゃんは笑った。無垢な言葉の暴力に面食らう。


「オバサンくさい?」

「服装も! もっと短くしなよ、スカート! 足太いの?」


 思わず真顔になる。いや、悪気がないのはわかってる。


「ねぇ! 一緒に買い物に行こ? ねぇみんなー! アネゴと買い物行かないー? 丁度秋物セールはじまったんじゃない?」


 ニコちゃんは私に確認もせずに友達に声をかけた。わらわらと女子たちが集まってくる。強引だと思ったが、正直嬉しかった。



 そんなこんなで、今日は塾の女子たちとショッピングである!

 綱は模擬テストがあるというので、駅まで送ってくれた。初めて一人で行く駅は心配だからと、綱は言った。帰りも時間が合えば合流しましょうなんていうけれど、塾と家との間の駅ではない。わざわざ、乗り換えてきてくれるのは悪いといえば、こちらで買い物がしたいから、そう綱は言った。

 改札口で綱と別れる。


「困ったことがあったら連絡してください。すぐに行きます」


 綱がそんなことを言うから笑ってしまう。


「綱だってテストでしょ? 大丈夫よ! ほら、あそこで友達が待ってるわ」


 待ち合わせ場所にたむろするニコちゃんたちを見つけた。手を振れば手を振り返してくれる。

 アネゴー! なんてあだ名で呼ぶから、綱が小さく笑った。


「わかりました。お気をつけて」


 綱はそう言って改札口を戻っていった。

 私はニコちゃんたちに駆け寄る。


「アネゴ! 今の! 特進クラスの生駒くん? ちょっと! 晴人が言ってたのマジだったの!? どんな関係?」


 興奮したようにニコちゃんに尋ねられる。


「幼馴染よ。たまたま送ってくれただけ」


 なんだか照れくさくて、簡単に答える。ところで晴人くん、なんて話をしたのだろう。

 

 きゃー! やだー! なんてはしゃぎながら、私たちは人ごみの街を歩きだした。



 一人だったら入れない、小さな階段を上がってはいる洋服屋さんにみんなで入る。キラキラした洋服がぎっしりと詰まっている。カラフルなキャンディーボックスみたいで、胸がときめく。音量強めの音楽に張り合うようにおしゃべりをする。

 パステルカラーのブルゾンだとか、サイケ柄のタイツだとか、私のワードローブにはないアイテムで眩暈がしそうだ。


「これくらい短いの履いちゃいなよ」


 なんて勧められたのはレインボーカラーのミニスカートだ。


「ええ?」

「試着! 試着!」


 戸惑っていれば強引に試着を進められ、とりあえず履いてみる。素足にミニスカートは何とも心もとなくて、そっと試着室から出れば、ニコちゃんたちの歓声が上がる。


「やだー! かわいいー!」

「足、しっろ!! 足、ほっそ!!」

「足だしなよー! いいじゃん!」


 口々に褒めてもらえて嬉しいが、恥ずかしくて堪らない。


「え、でも、これは恥ずかしい……」

 

 膝頭をおさえてモジモジする。このスカスカ感や視線に慣れていないのだ。そういえば、エレナさまはどんなミニスカートでもビシッと履きこなす。


「そっちの方がエロいって!」

「え、えろい……」


 一気に押し寄せる何だか分からないパワーに圧倒される。いろいろなお店を歩いて回り、お目当てのリュックを買った。スポーツブランドの白いリュックにしたら「マ」と言われた。意味は「アネゴらしい」と言うことらしい。よくわからない。


 プチプラなお店によって、スニーカーも買った。オーバーサイズのカーディガンは、学院の外部生が着ていて憧れていたものだ。思わず手に取ってみるが、買う勇気はなかった。

 エレナさまが履いていたようなデニムのタイトミニスカートもはいてみたけれど、やっぱり抵抗がある。モジモジしていれば、ミニスカートの上に長めのチュールのかかったフレアスカートを勧められて、勇気を出して買ってみた。後はオフショルダーのトップス。


 皆で柄違いのフワフワチャームを買って鞄につける。フルーツモンスターという今日入荷したばかりの輸入品らしく、フルーツの皮を剥けば、愛らしいモンスターの顔が付いた中身が現れるのだ。私はバナナを買った。みんなはそれぞれ、スイカやキウイ、ミカンにした。皮を剥くと中が特徴的な果物ばかりだ。



 流行りのカフェに連れて行ってもらって、写真に映えるスイーツを食べることになった。

 カフェにつけば、始まったのは女子トークだ。


「でー、アネゴは晴人と皇貴、どっちがタイプ?」


 ニコちゃんの隣に座ったシホちゃんが尋ねる。ニコちゃんはスッと目をそらした。


「斉藤くんはニコちゃんの彼氏でしょ?」


 キョトンとして尋ねれば、キャラキャラとみんなが笑う。


「でっしょー? そう思うでしょ?」

「だって、斉藤夫妻でしょ?」

「だよねー? でも、ニコ達付き合ってないの。うけるー」

「え? あれで?」


 思わずニコちゃんを見れば、顔を赤くしている。


「嘘でしょ?」


 思わず聞いてしまった。


「ほら、ニコ。アネゴは皇貴なんて目じゃないって」

「べ、べつに、私は気にしてないしっ!」


 ニコちゃんが怒る。

 そうか、今日の本題はこれでもあったのか。突然強引に誘われた買い物には、こんな理由があったのだ。


「斉藤くんも私に興味はないわよ。あれ、私が思うに、晴人くんと私が普通に話してるのが羨ましいのよ。晴人くんにばっかりちょっかい出してるもの」

「……それ、」

「変な意味じゃなくて、ほら、ニコちゃんと斉藤くん、いつもふざけてばっかりでしょ? 多分、女子と普通に会話できる晴人くんが羨ましんじゃない?」

「さすが、アネゴ。深い」

「アネゴ呼び、止めて」


 軽く突っ込む。


「ニコも、アネゴと晴人みたいに喧嘩しないで皇貴と話したい……」


 ニコちゃんが言った。


「え、でも、私。ブース!と言いながら、実は可愛いと思ってる、みたいなの、すっごく羨ましいけど」

「ちょちょちょ? なにそれ、アネゴ!」

「だって、斉藤くんの『ブース』って特別じゃない? ニコちゃんにしか言わないもの。ねぇ?」


 周りの友達に聞けば、みんなニヨニヨと頷いた。


「ぎゃー! 止めてよみんな!」

「私も青春したい……」


 思わずぼやけば、ニヨニヨしていた視線が私に向けられる。


「アネゴー、晴人は?」

「いやいや、さっき一緒に来た人でしょ? 生駒くん」


 シホちゃんが問えば、ニコちゃんが綱の名前を出した。思いもよらないところで、綱の名前が出て顔が赤くなる。


「あ、わっかりやすー」


 うそ、わかりやすい?


「え? マ? 結構人気だよね? 私も良いと思ってた!」


 ミナちゃんが言うから慌てる。


「あ! だめ! 絶対ダメよ!!」


 言えば、シホちゃんが笑う。


「なに? かれし? どこまでいったの?」

「違う! そんなんじゃないもん!」

「きゃー! アネゴが乙女!」

「なになに、告ってないの? 告らせればいいじゃぁん」


 ニコちゃんたちがグイグイ来る。居た堪れなくて顔を覆う。綱とのこんな話、芙蓉や桜庭の友達とは絶対にできない。


「こ、告らせるって……。だって、綱は私のことなんか……」

「きゃー! 綱だって! 生駒くん、綱っていうんだ!」

「幼馴染名前呼びカップルとか、マジ最高なんですけど!」


 ねぇ、お願い話を聞いて? 別に付き合ってないんだってば!


「ねぇねぇ、もしかして帰りも待ち合わせしてる?」

「……時間が合えば一緒に帰ろうねって……」


 帰る前に連絡をする約束はしたが、時間を何時と決めたわけではない。


「やーん! それ、絶対待ってるよ? 待っててくれるよ?」

「そ、そんなことないもん!」

「絶対今日買った服に着替えていくべき!」

「だよねー! 可愛いとこ見せちゃいなよ!」

「で、いつもは見ないアネゴにキュンとかなって! イイ感じとかになっちゃって!」

「くるくる?」

「きちゃう?」

「「「「告白ー!!」」」」

「な! なりません!! 絶対!!」


 なんて息ピッタリなんだ!!


 そんなふうに言われたら、なんか、ちょっと、こう……期待しちゃうじゃないか! ありえないとわかっていても、期待してしまう。


「でもでも、こ、告白とかは絶対絶対絶対ないけど……、新しい服で行ったら、ちょっとくらい……女の子扱いしてくれるかしら? そしたら、着替えてみようかしら?」


 オズオズと尋ねる。


 ニコちゃんたちは、ニヤァァと不気味に笑って顔を見合わせた。

 あ、なんか、こわい。


「アネゴ、マジでかわいい! つーか、まじで着替えるべき!」


 力強く言い切られ、私はプリクラのお店に拉致られた。


 プリクラショップの更衣室で、私は今日買った服に着替えた。トップスはいつもはあまり着ないオフショルダーのフワフワした白いモヘアニット。膝上のフレアミニスカートの上に、取り外し可能の淡いグレーの脹脛丈のチュールを重ねてはいた。少し季節を先取りした格好だ。

 

「ねぇ、下着の紐、見えちゃうわ?」


 オフショルダーで丸出しになった肩に戸惑う。ミナちゃんが、下着の紐をグッとオフショルダーの袖の方まで下げて、見えないように絆創膏で紐を肩に張り付けた。


「こうしておけば大丈夫!」

「えええ?」


 慣れない服装にモジモジすれば、またニコちゃんにエロいと怒られる。


 顔も可愛くメイクされ、髪も綺麗に結んでもらう。

 今日の記念に皆でプリクラを撮った。盛りに盛った写真、皆でポーズを決めた写真、アイテムの貸し出しまでしてもらった。風船いっぱいで写真を撮る。


 外をみんなで歩いていれば、雑誌のストリートスナップの撮影をやっていた。有名な雑誌だったから、皆ではしゃいで野次馬をしていれば、スタッフから声がかかった。お揃いで買ったばかりのフルーツモンスターのキーホルダーが目に留まったらしい。記念にみんなでキーホルダーが付いた鞄をくっつけて写真に撮ってもらう。

 何もかもが初めてで、何もかもが新鮮だった。




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