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高等部一年

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154.高等部一年 遠泳大会 筏レース


 遠泳開始の花火が上がって、二年生たちの遠泳が始まった。二年生たちは午前の遅めの時間に軽く軽食を取ってから、お昼を挟んで遠泳する。

 少し沖にある無人島からスタートし、浜辺に戻ってくるのだ。大体三キロほどの距離で一キロごとにリタイアできるポイントも用意されている。水泳が苦手な子は赤色の水泳帽をかぶり、初めにスタートする。

 搬送用のボートが付き、芙蓉学院大学部の生徒などもボランティアで参加している。学院あげての行事なのである。



 遠泳に参加しない学年は、筏レースと水鉄砲合戦、六人制のビーチバレーのいずれかに参加する。ビーチ・フラッグスもあるが、こちらは自由参加だ。


 午前の部は、筏レースとビーチバレーである。この二つは同時間の開催だ。


 私は筏レースに参加だ。

 製作からミッチリ関わってきたペットボトル筏。ちなみにオールも手作りである。黄色にペイントされたそれは、バナナボートのように縦長で、搭乗人数は六名だ。男女三人ずつの混合チームで、私以外の女子は運動神経抜群の外部生。男子は一条くんとやはり運動神経の良い子で構成されている。私はひそかに、一条くんもかなり本気で勝ちにきているのでは、なんて思う。

 皆が一生懸命協力してくれたから、ペットボトルもふんだんに使えたので、安定感は抜群のはず。


 各クラスの筏はそれぞれで、明らかにペットボトルの数が少なかっただろうクラスや、アーティスティックなものや受け狙いのものもある。ボートの出来は、イコールクラスの結束力でもあるのだ。


 筏レースは、上位三位と「イカス筏で賞」が表彰される。「イカス筏で賞」は生徒の投票によって決められるから、ウケたもの勝ちみたいな側面はある。もちろん、そちらに振り切るクラスは、見た目重視のボートだし、仮装などしたりしているのでとても面白い。


 ライフジャケットを着て準備する。波の穏やかな地点まで皆でボートを運び、乗り込む。先頭は一条くんで、男女交互に縦に座る。私が一番最後だ。筏はぶっつけ本番なので、乗るのは今日が初めてである。グラグラとするボートに無様に叫び声を上げる。


「ぎゃぁぁぁ!!」

「バナナ姫うるさい! せめてお嬢様らしく叫べー」


 前に座る男子に笑われた。彼は準備の時からとても協力してくれている外部生の九島(くしま)くんだ。サッカー推薦で入学してきた彼は、外部生ながら顔が広い。部活でなかなかクラスの準備に参加できないといって、たくさんのペットボトルを集めてくれた。どうやら地元のサッカー仲間に募ってくれたらしいのだ。


「は? お嬢様らしく? いやぁぁん? とか? いや無理でしょ?」


 波が押し寄せてくる。


「いゃ、ぎゃぁぁぁ!」

「バナナ姫、マジうける」


 全然ウケない!


「まー、でも、マジ怖かったら、俺の背中掴んでいいよ」

「九島くん、優しいのね」


 言えば、九島くんは照れたように笑った。


 グラグラ揺れる筏にワタワタしているうちにオールを手渡され、気がつけばスタートのホイッスル。

 同時に一条くんが振り向いて、声出していくよーと叫んだ。

 オール漕ぎの練習は教室でもしてきたのだ。


「右から! せーの! いち、に!!」


 一条くんの声に合わせてオールをこぐ。漕ぎ出せば筏のぐらつきは気にならなくなった。声を合わせてオールをこぐのは気持ちがいい。潮風と、水しぶきがきらめいて、日差しの強ささえ胸を高鳴らせた。


 横波に転覆したり、筏自体が途中で壊れたりと、ぞくぞくと脱落していく筏たち。それすらも楽しそうな歓声が上がっている。ゴールまでたどり着ければ、優秀な方なのだ。


 そんないかだを横目に、私たちはエッチラオッチラと漕いでいく。もう少しでゴール。そう思った瞬間、大きな波が押し寄せてきて、息を飲む。ふわりと筏が波に乗って、変な浮遊感がお腹の底をくすぐった。


「はぁぁぁ、今のヤバかった! ジェットコースターとか苦手なんだよ」


 九島くんが振り向いて笑う。真夏の日差しに煌めく汗が眩しい。


 青春だなぁ。


 思わず小さく笑った。だって、おかしいじゃないか。彼はスポーツ推薦組で、怖いもの知らずという感じなのに、ジェットコースターが怖いだなんて。


 気まずかったのか彼は慌てて前を向いた。


 エッチラオッチラ筏をこぎ、ようやくゴール地点についた。その瞬間、男子たちは雄たけびを上げて海へダイブだ。


「は!? え! ぎゃぁぁぁぁ!!」


 バランスを崩した筏は転覆し、女子も道連れになる。

 せっかく可愛く結ってもらったお団子もびしょぬれだ。ライフジャケットが無理やり浮かんで、顔に当たってブサイクだ。


「ちょっと! 何するのよ!!」


 非難なんてもろともしないで、水をかけあう友人たち。私も負けじとそれに混ざって、反撃する。

 波の音と歓声と、キラキラ光る水しぶき。


 こんなに面白いことを知らなかった。前世の私って、本当にもったいなかった。


「おーい、女子! ボートに乗って!! 浜まで押してってやるからさ」


 九島くんが言って、私たちはボートによじ登った。上手く上がれないから、引っ張って貰ったり、背中を押されたり、そういうことも楽しかった。女子が全員乗り込んだら、男子全員でボートを押して泳いでくれる。


 楽ちん、快適、なんて女子は口々に笑う。到着してお礼を言えば、照れたように笑う男子たちが爽やかだった。




 筏レースの後に、クラスメイトと昼食をとる。ビーチバレーの子たちも合流した。海の家のラーメンを食べるのは初めてで、それも楽しかった。

 海のせいなのか、夏の太陽のせいなのか、みんな教室にいるよりも生き生きしていて、グンと距離が縮まった気がした。




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