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【5巻電子書籍&POD化】神様のドS!!~試練だらけのやり直しライフは今日もお嬢様に手厳しい~  作者: 藍上イオタ@完全無欠の悪女です2月下旬発売
中等部三年

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135/289

135.中等部三年 バレンタインデー 2


 長いと思われた八坂くんの列もようやく途切れ、私は八坂くんと教室の席に戻り二人で名簿を整理する。


「姫奈ちゃんのおかげで、今年はスムーズだったよ。手際よくてびっくり」


 八坂くんが笑う。


「それは良かったわ。今後こうしたらいいわよ」

「えー、だって、毎年人気があるとは限らないし、自分でやってたら自意識過剰じゃない?」

「まぁ、それはそうね」

「でも、このおかげか重い感じがなかったから楽だった」

「……えっと、それはごめんなさい? せっかくの告白チャンスを私が潰したのかしら?」

「ううん? チョコをくれるくらいならいいんだけどさ、告白されたら断らなきゃならないでしょ? お断りするのも胃が痛いもんだよ」

「お断りするのが前提なのね」

「まぁ、ね?」


 そうか。モデル様が特定の彼女を作るのは難しいのかもしれない。


「もしかして、八坂くんも彼女いない系?」

「そうだね」

「やったわ! これだけモテモテの八坂くんに彼女がいないなら、私に彼氏いなくても問題ないじゃない! そう、モテないからじゃないわ! 作らない方向なのよ! わたしは!」


 グッとこぶしを作って力説をすれば、教室に残っていたモテない系男子が噴出した。朝、喧嘩をした子たちだ。腹が立って、ビシッと指をさす。


「なによ! あなた達だってそうでしょう!! いっそ私と同盟を組むべきよ! リア充しない同盟!! そうよ! できないんじゃないわ! 『しない』のよ!!」

「俺たちはしないんじゃないよ! したいんだよ!! 一緒にしないで」

「っ! ちょ! 正直とかズルくない? 抜け駆けする気ね?」

「ひ、ひなちゃん……。もう止めて、おかしすぎる」


 八坂くんがお腹を抱えて笑った。

 そこへ氷川くんが顔を出した。両手に高級そうな紙袋を持っている。コイツもリア充しない同盟の敵だ。


「あれ? 和親?」

「晏司、……姫奈子さん」


 氷川くんがモジモジとして変な感じだ。


「氷川くん、どうしました?」

「……いや、そうだな、通りかかったついでに、晏司の笑い声が聞こえたから二人で何をしてるのかと思って」

「八坂くんのチョコレートを整理してるんです」


 机の上の名簿を見せれば、氷川くんが瞬きをする。


「チョコレートの整理……」

「名前とクラスをまとめておくんです。私のはスマホにまとめておきました。ほら、ホワイトデーのお返しに漏れがあってはいけないから」


 スマホのシートを見せれば、氷川くんと八坂くんが黙った。


「? え? なにか可笑しいですか?」

「いや、意外に思っただけだ」


 氷川くんが言う。ああ、量が多いのか。


「私もこんなに貰えるとは思って無かったです。でも大体は八坂くんのおこぼれですよ」

「そうではなく。シートで管理しているんだな」

「ああ! そうです。淡島先輩に教えてもらったんです。お店の管理とかにも使えて便利なんです」

「そうか」


 ふむ、と氷川くんは考える様に顎に手を当てた。


「姫奈ちゃんは淡島先輩の子飼いだから」


 八坂くんが笑う。


「コガイ? なに? 悪口ね?」

「いいえ、褒めてます」


 八坂くんは微笑んだ。 


「風雅先輩は先見の明があるな」

「本当に。入学してきたばっかりの姫奈ちゃんなんて、ピヨピヨしてたのにね」


 八坂くんが肩をすくめる。


「それは悪口よね? それはわかるわ!」

「いいえ、褒めてます」


 なんだか釈然としない。


「そうだ、姫奈ちゃんちにホワイトデーのお返し発注してもいい?」


 八坂くんが尋ねる。


「もちろんです!!」


 この数を発注してもらえたら嬉しいし、八坂くんのファンに宣伝できるなら効果がすごくありそうだ。


「どんな感じがいいですか? 『晏司くん』のイメージだと洋菓子がいいですよね?」

「そう?」

「白山系列には洋菓子店も何店かありますけど、どんなものがいいですか?」

「女の子はどんなものが欲しいの?」

「そうですね……。好きな人から貰うなら、日持ちがするものの方がいいかもしれないです。ずっと眺めていたいし。でも、数が多いからかさばったり重いものは大変ですよね」


 何か良い物がなかったか考えてみる。私は白山茶房のアラレの予定だから被るのは良くない。金平糖も可愛いけれど、金平糖は入れ物が焼き物だから扱いにくいかもしれない。そもそも和風だ。

 ギモーブは定番だけれど、綱が去年使っていた。綱は……綱は今年はどうするんだろう。

 考えてちょっと気分が落ちた。それを振り払うように考えを切り替える。


「そうだ! 大きめのクッキーとかどうでしょう? 天使のクッキーをクリスマスオーナメント用に作っているお店があるんです。オーナメント用なら少しの間は飾っておけるし。クリスマス用とは別にレモンのアイシングをお願いして……」


 思い付きを勢い良く話し出せば、八坂くんが嬉しそうに目を細めてウンウンと頷く。なんだか、孫を見るおじいちゃんのようである。


「……八坂くん……バカにしてます?」

「いいえ? いいなぁって思って」

「何がでしょう?」

「食べ物のこと考えている姫奈ちゃん、可愛いね」

「! ……! ……!!」


 久々かつ不意打ちの攻撃に言葉を失う。晏司君スマイルとは別の笑顔で机に突っ伏した。だからイケメンは暴力なんだって自覚してほしい。


「ところでなんで天使? ホワイトデーって天使なの?」

「だって、八坂くんの名前って天使って意味でしょう? それにみんなの天使様だし」


 私にしてみれば、堕天使ルシファーだけれどそれは言わなかった。

 今度は八坂くんが言葉を失って、顔を赤くして俯く。さすがに十五歳男子に天使は可愛すぎただろうか? 恥ずかしかっただろうか?

 慌ててフォローを試みる。


「あ、でも! レモンのアイシングでサッパリ酸っぱくして、レモンの皮で苦みを足せば、八坂くんのちょっと意地悪で悪魔な感じ……じゃなくて、えーっと、大人っぽいかなって!!」


 八坂くんが俯いたままクスクス笑う。


「蜂蜜レモン?」


 あの芸術棟での話を覚えていたらしい。


「そう、八坂くんのイメージが蜂蜜レモンだから」


 とりあえずは怒ってないようで良かった。


「姫奈子さんは……晏司に……その、チョコレートをやったのか?」


 氷川くんがモゴモゴと問う。ああそうか、去年友チョコが欲しいそぶりをしていたっけ。すっかり忘れていた。


「いいえ。友チョコ欲しかったですか?」

「いや! そうではなく……その、他に男子には?」

「一年生に一人あげましたけど。それだけです」

「「だれに!?」」


 二人の声がリンクしてビックリする。


「弟の友達です。恒例行事なんです」

「ふーん……義理チョコなんだー」


 八坂くんが意地悪な目で睨んでくる。またなんか私地雷踏んだ?


「ええ。本命なら学院で渡したりしないですもの」

「そうなの?」

「だって、目立たないわ」


 当たり前じゃないか。どうせ勇気を振り絞って渡すなら、それなりの効果が欲しい。気持ちを伝えられたらいいの、なんてかわいいことは思わない。きっちりアピールしたいし、ただ受け取ってもらうだけでなく、あわよくば付き合いたい!


「じゃあ、どうすんのさ」


 なんだか八坂くんが不貞腐れている。


「私だったら自宅にお届けに上がります。お店では売っていないような特別なものを用意して!」


 ドヤァ! 前世は氷川くんにそれをして婚約者になったのだ。……まぁ、私の計算が功を奏したわけではないのだが。


 あ、思い出したら恥ずかしくなった。しかも氷川くんがここにいる。ここで、それは迷惑だとか言われる? 言われるかもしれない。ドヤ顔止めとけばよかった!


「それは効果的だな。それだけ特別だと思われているなら嬉しいだろう」


 氷川くんが答えてびっくりした。あの時の氷川くんも喜んでくれたのだろうか?


 恐る恐る氷川くんの顔を伺う。

 

「あの、迷惑ではない?」

「まぁ、突然来られたらビックリすると思うが、でも、嬉しい方が勝るだろうな」


 そう言われてホッとする。


「でもさー、嫌いな子ならひくよね?」


 八坂くんが正論の刃を剥く。まったくだ。嫌いな子なら迷惑だ。

 思わず乾いた笑いが漏れる。ほんと、そうですよね、相手の迷惑考えてないですよね。


「で、姫奈ちゃんは学院以外であげる人いるわけだ?」

「いませんよ。八坂くんと一緒のリア充しない同盟ですから!」


 綱と彰仁にはあげるけれど、あれはノーカウントだろう。家族に手作りのお菓子をあげるだけだ。

 未だ闇黒な晏司に適当に答えた。おっかないんだもん。この人。


「うーん、僕はしたくないわけじゃなくて、できないんだけどね」

「あー、はいはい、わかりました。仕事の事情ですもんね。できない私が『しない』って意地張ってるのとは違いますよねー」


 半目棒読みで答えれば、氷川くんと八坂くんは顔を見合わせて笑った。





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