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【5巻電子書籍&POD化】神様のドS!!~試練だらけのやり直しライフは今日もお嬢様に手厳しい~  作者: 藍上イオタ@天才魔導師の悪妻26/2/14発売
中等部三年

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131.スケート教室 1




 今日はスケート教室である。

 初めてのスケート靴にワクワクして、ゴムっぽい床の感触にソワソワとする。綱は手慣れているので、私の靴を綺麗に編み上げてくれた。


「肩を掴んでいていいですよ」


 不安定なスケート靴でへっぴり腰になっていれば、綱が笑った。綱の言葉に甘えて、思いっきり綱に寄りかかる。綱は少し驚いた顔をして、小さく笑った。甘えているのがばれたらしい。

 こんなこと前世ではした記憶がない。


 だって仕方がないではないか。執行部ベストで忙しい綱とはなかなか一緒の時間が取れないし、帰りの車も彰仁がいるときは綱は助手席に座るし、家ではお互いの部屋は出禁だし、全般的に綱が足りていないと思う。

 許されたことに気を良くして、鼻歌だって出てきてしまう。


「綱はスケート得意なの?」

「普通に滑れますよ。父の実家で昔から連れていかれるので」

「凄いわね。私なんて今でもグラグラなのに、氷の上に立てる自信がないわ」

「大丈夫ですよ。お手伝いします」 


 綱がニッコリ笑うから、私は安心した。

 前世では当然ずる休みをしたのだ。おかげでスケートは初体験である。前世では両親も「姫奈子が怪我をしたら大変だ」といって、反対もしなかった。ここまでくれば、親バカでなくバカ親である。子供は大バカだったけど。

 

 スケート教室は楽しかった。初めに先生に基本を教わり、生まれ立ての小鹿のような私たちが、必死に壁を伝いながらも滑れるようになって来れば、自由時間である。

 もちろん先生が付き添って指導はするが、上手な子が苦手な子を手伝ったりもする。


 二階堂くんは当然のことながら甲斐甲斐しく紫ちゃんをサポートし、他のリア充どももキャッキャウフフしている。ぐぬぅ。


 八坂くんと氷川くんは当然のように滑り出し、なぜか二人で追いかけっこのように競いだした。スケート靴の刃が氷を削ってキラキラと舞い散る。天然のエフェクトである。同じジャージのはずなのに、なぜかそこだけ輝いてみえる。それにスケートが得意な三峯くんたち男子ズが混ざっていく。賑やかな集団が出来上がって、とても楽しそうだ。

 周りの女の子たちは、大きなため息と熱い眼差しで、氷上の二人を見つめていた。さすがイケメンは違いますねとやっかむ気持ちが芽生えもする。


 綱は私の両手を取って、バックで滑りながら引っ張ってくれる。

 一見ラブラブカップルに見える? 残念でした。そんなわけなどありません。綱はいつでもスパルタです!


「ほら、姫奈! 腕に頼らない!!」

「だって!」

「自分の足で氷を蹴らないと」

「だって!」

「ほら、腰が引けています。ちゃんと体を立てて」

「だぁぁぁってぇぇぇ!!」

「だってじゃありません!」


 ピシャリとスケートリンクに響く声。ギョッとして振り向く詩歌ちゃん。

 ……スパルタである。


 休憩時間の放送が鳴って、思わず氷上に座りこめば非情な声で窘められる。


「氷の上に座らない!!」

「だって……もう疲れたんだもん!!」


 私も半ギレである。

 綱はそれを見て呆れたように笑い、手を差し伸べた。


「ほら、立ってください。向こうまで私が押して行ってあげますから」

「……ココア飲みたい」

「いいですよ」


 私が綱の手を取れば、グンと引き上げられる。氷のせいで勢いがついて、ピンと立ち上がった。綱が私の背中にまわり、右手で私の右手を取った。そして背中に左腕を回す。


「体を預けてください」


 疲れすぎてしまって綱にグッタリと背中を預ければ、曲がりっぱなしだった膝が自然と伸びた。スケート靴の中で縮こまっていた指先から、力が抜けてホッとする。


「力を抜いて、何にもしないで、私が押していきますから」


 言われた通り何もせずに綱に押されるがままになる。自分で滑らないでいることはなんて気持ちがいいのだろう。すっかり綱に身を任せ、良い気分で氷の上を滑る。今まで敵だったはずの氷が味方みたいになっている。


「気持ちいいわ」

「でしょう? 姫奈は体に力が入りすぎなんですよ。バランスを取ったら後は普通でいいんですから」

「口で言うほど簡単じゃないわ」

「でも、今はできてますよ」

「だって、それは綱がいるからだわ。絶対安心だもの」


 綱のことは自分より信頼している。自分の両足で立つよりも、綱に背中を預けていたほうが絶対安全だと思うのだ。


「困った人ですね」


 そういう綱はなんだか嬉しそうで、ちっとも困ったようには見えなかった。


 私たちは自動販売機でカップのココアを買って座る。フウフウと息を吹きかけてココアを冷ました。運動して熱くなってしまった身体には、ホットココアは熱かったかもしれない。綱の顔もなんだか少し赤かった。


「今度は片手だけで引っ張りますね」

「無理よ!!」

「さっきみたいに力を抜けばいいんですよ」

「無理よ!!」

「絶対手を放しませんから」

「……絶対?」

「絶対」

「絶対よ?」

「絶対です」


 少しの休憩のおかげで、なんだか力が湧いてくる。もしかしたらもう少しマシに滑れるようになるかもしれない。

 そうしたら、綱ともっと楽しく滑れるのだろうか。スケート場へ一緒に遊びに行ってくれるだろうか。そんなふうに思った。






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