124.中等部三年 文化祭 2
修吾くんを連れて天文部へ向かえば、氷川くんがいた。
「ま、待っていたぞ」
「約束しましたっけ?」
氷川くんに言われて、とっさに返せば、綱が小さく笑った。
氷川くんが一瞬口ごもる。
「……してはいないが、占いをしようかと思って……だな」
「意外でした。こういうものは信じないかと」
「信じはしないが、仕組みには興味がある」
まったくもってごもっともな言いようが氷川くんらしくて笑ってしまった。
「それでだな、男女のペアでないとできないというから、姫奈子さんを待っていた」
理由には納得なのだが、氷川くんの言葉に耳打ちをする。
「確かに一人で相性占いはできませんが、好きな人と占わなくては意味ないのでは?」
「いいんだ!」
言い切られて、ビックリする。
まだ言えないのか。こちらも脈なしなのか? だったら逆にこれを口実に誘ったらいいんじゃないの? ……それも無理なの? ヘタレなの? 相談してくれたら協力ぐらいしてあげるのに。
それにしても氷川くんといい修吾くんといい、イケメンたちがこぞって脈なしって残念過ぎない? 皆さんどれだけ理想が高いのだろう。おとり巻きの女子だってレベルは高いし、自分を好いていてくれるのだ。その中から選べばいいではないか!
モテない私には羨ましすぎる我儘にしか思えない。本当に世の中は理不尽だ!!
「……誤解されないようにしてくださいね。こじれるのは嫌ですよ。田んぼに突き落とされるのはもうご免です」
「大丈夫だ。誤解などしない」
きっぱり言い切るけど、それはそれで不憫な気がする。
わざわざ待っていてくれたのだ。別に減るものではないしと氷川くんと相性占いをする。誕生日をパソコンに入れ、自動計算で星の動きから相性を導き出してくれるのだ。
結局、修吾くんと綱も加わって、なんだか得点合戦のようになった。
ちなみに、氷川くんが八十八点。修吾くんが九十二点。綱が九十五点である。
「八十八……まぁ、悪くはない。うん、末広がりだしな」
氷川くんが言えば、修吾くんが小さく笑った。
「私は九十五点でした」
綱がドヤ顔で言う。
「でも、私と綱が相性良くても、微妙だわ」
私はガッカリである。綱と相性が良くても仕方がないではないか。綱と相性がいいよりは、未来のカレシ様と相性がいい方がいい。綱だってそうだろう。なんというか、幸運をここで使ってしまったかのような残念感がある。
そう言えば、修吾くんが噴出した。綱がチラリと修吾くんを見る。
「確かに、幼馴染と相性が良くても当たり前な気がしますね」
修吾くんが屈託なく笑うから、私も頷いた。綱が少しだけ見咎めるような顔をした。
というか、この中の誰とも相性が良くても関係ないのだ。三人のうち二人には好きな子がいるし、残りの一人は綱だ。
そもそも、相性が良いから仲良くなったのだという気もする。
それなら試しに特に仲の良くない子ともしてみたい。
「あなた、私と相性占いしてみない? みんな良すぎない?」
パソコンを操作している子に言えば、ヒッと顔をひきつらせた。
そして恐る恐る私にだけ聞こえるように小さく答えた。
「内緒ですよ。もともとカップルを想定してるから、良い数字しか出ないようにプログラムしています」
こそっと耳打ちされて納得する。
「ああ、そうね。ごめんなさいね」
軽く答えたら、氷川くんに睨まれた。
「なんだ?」
「え、ああ、えっと。内緒です」
答えたら、氷川くんは不機嫌な顔を露わにした。珍しい。
パソコン部の男の子はもう一度ヒッと声をあげた。
確かに俺様氷川様の不機嫌顔は怖い。
「白山さん、ほんっとうに勘弁してください……」
私、何もしてませんけど!?
しかし、半泣きの顔で縋られて取り繕う。
「えっと、女子同士でも内緒でしてくれるって話、よね?」
「そ、そうです。白山さんは天文部だから内緒で特別に」
二人でへらへらと口裏を合わせれば、桜庭の子たちが喜んだ。やっぱり女子は占いが好きなのだ。そこに根拠なんてなくてもいい。誰かに、大丈夫、そう言って欲しいのだ。
そこで皆で占いをしてもらう。結果、当然ながらみんな相性は良かった。
こうやって文化祭は幕を下ろした。
車の中では彰仁に盛大に怒られた。あれから先輩たちに桜庭について、根ほり葉ほり聞かれたらしい。
「あら良かったじゃない。自慢出来て」
「良くない! 姫奈子が来ると厄介なことにしかならない」
「そんなことないわよ。どう、あれから人増えたんじゃない?」
「ばーか、あの時がピークで男子はみんな天文部に異動したよ」
「あら、それは……ごめんあそばせ?」
「まあ、今までで人の入りは一番良かったって、先輩が言ってたけど……」
「良かったわね」
「……ああ」
むっつりとする彰仁にニヤニヤ笑えば、綱が助手席から振り向いて、唇に人差し指を当てた。それ以上いじるなと、そういう意味らしい。
私は静かに頷いて、車窓を見る。
彰仁は可愛いが、過ぎた意地悪で嫌われるのは本意ではない。
「……、その、部長が、ありがとうって伝えてくれだって」
ボソリ、彰仁がソッポを向いていった。
「そう。ボルボックス、綺麗だったわ。あんなゼリーが作りたいと思ったわ。そういうふうに伝えておいて」
「……うん、伝えとく」
彰仁は小さく笑ってそう言った。







