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【5巻電子書籍&POD化】神様のドS!!~試練だらけのやり直しライフは今日もお嬢様に手厳しい~  作者: 藍上イオタ@天才魔導師の悪妻26/2/14発売
中等部一年

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10.父兄参観 2


 父兄参観は大盛況だった。やはり、圧倒的に母親が多い。その中で、お父様と生駒はとても目立っていた。

 でも、積極的に子供に関わろうとする父親の姿が、周りに好意的に受け止められたようだった。


「いいなぁ……姫奈子さん、お父様がいらっしゃったのね」

「私のお父様なんか、お休みできないっていうのよ! 姫奈子さん、愛されてらっしゃるのねぇ」

「そんな……」


 無理やり連れて来たとは言えない。


「給食もお父様がかかわってらっしゃるの?」

「ええ、管理栄養士に献立を組み立てていただいているのですけれど、季節のアイデアなどは父も関わっているそうですわ。シェフを引き抜いてくるのはもっぱら父ですし」

「まぁ! 現場主義ですのね。素敵ですわ」

「お仕事もしながら、学校にもかかわって、……理想のお父様ね」

「ありがとうございます。あとでお好きなメニューがあったら教えてください。父に伝えておきますわ」


 私たちの会話を聞いて、ムズがっているのだろう。お父様の目が泳いでいる。


「生駒くんもお父様がいらしてるのね」

「すらっとしていて、美しいわ」


 ほう、とため息が漏れる。


 そうだろう、そうだろう。生駒は白山家の自慢の執事なのだ。仕事はできて当然で、見目麗しいのだ。

 私まで鼻が高くなる。


「次回は私もお父様にお願いするわ!」

「そうよ! 皆様でそうしましょう?」


 キャイキャイと女の子たちは盛り上がった。




 父兄参観を終えて、お父様とカフェに来ていた。新しく出店したばかりのカフェだ。

 お父様の登場に、店員たちの顔が引き締まった。


 うう、お父様。怖い上司なんじゃないの? 心配……。パワハラとかしてないよね?



「好きなものを頼みなさい」


 お父様がメニューを開いて見せてくれる。

 軽食から、がっつりスイーツまで様々な種類があった。


「お父様のお薦めは?」

「女子中高生をターゲットにしているのはこのあたりだ」


 様々なフレンチトーストの写真がたくさん並んでいる。緑色は抹茶パウダー、茶色は定番のココア、フルーツがたくさん乗ったもの、ソフトクリームが乗っているもの。

 どれも美味しそうだ、でも、量が多い。


 いや食べられますよ、以前なら余裕で食べてたよ。でも、食べたらまずいって。家の夕飯美味しいんだもん。そっちだって残せないし。


「お父様、これを一緒に食べてくださいません?」


 フルーツがたくさん乗ったフレンチトーストを見て、お父様は瞑目した。


 やっぱり無理か、だったらこっちのタルトにしようか。


「では……」

「いいだろう。飲み物は?」


 意外な返事に思わず顔を上げた。


「いいの?」

「ああ、好きなものを食べなさい」

「ありがとうお父様! では、飲み物はティンブラをアイスで」


 お父様は手を上げて給仕を呼び注文した。

 

 暫くしてシェフが直々にフレンチトーストを持ってきてくれた。軽くお父様に頭を下げる。お父様は小さく頷いた。


「娘の姫奈子だ」


 シェフに紹介をしてくれる。

 私も軽く頭を下げた。


「これを二人用にサーブしてくれるか?」

「承知しました」


 シェフはニコニコとフレンチトーストを二つの皿に取り分けた。最後に美しくソースをかけてでき上がりだ。

 ただ取り分けるだけではない。美味しそうに盛り付け直されていて、魔法のようだなと感心した。

 私もこんなふうにしてみたい。


「私も大きくなったらあんな制服でお仕事したいわ」


 ウエイトレスの可愛らしい制服に思わずつぶやけば、お父様はギョッとした顔をした。


「止めなさい。姫奈子には向いていない」

「似合わないでしょうか?」

「……すこし、スカートが短い。ではなくて、飲食店は華やかに見えるが大変な仕事だ。とても忙しいしな」


 むっつりとお父様が答える。


 いや、忙しくしてるのは、経営者アンタだろ? 言えないけど。


 シェフが私たちのやり取りを聞いて笑った。


「今日は父兄参観だったんだ」


 お父様がそう言えば、シェフは驚いたように目を見開いた。


「それでですか。参観の後に父とデートしてくれるようなお嬢さんでうらやましいことです。可愛くて仕方がないでしょう」


 にっこりとシェフが笑えば、お父様はゴホンと咳払いした。顔が赤い。


「そんなことありませんわ。これくらいの年ならみんなお父様とお出かけしたいはずですもの」


 まだ十二、三歳なのだ。気恥ずかしくはあるし、構ってくれるなとは思う。けれど、放置されるのは寂しい。いてもいなくても関係ないというようで、私は寂しかった。


「そうですか? 私は父兄参観にすらいったことはありませんが、文句を言われたこともないです」


 情けなさそうに笑う。


「それはいけません! 私みたいな我儘な娘はちゃんと文句も言いますが、聞き分けの良い方は言えないのですわ」

「だそうだ、ちゃんと休んでいってやれ」


 お父様がそう言うと、店内スタッフがザワついた。


 察し。……お父様、限りなく黒に近いグレーだよ……ちゃんと休ませてあげて……。


「ありがとうございます。次はお休みをいただきますね」


 シェフは笑顔でそう言って下がっていった。


「姫奈子」

「はい」

「その、なんだ」

「?」

「お前の我儘を聞いてやるのは、そうだな、案外面白いものだと思う」


 そう言ってお父様はコーヒーを飲んだ。


 私の言いたいことが伝わったのだろうか。だったら嬉しい。気持ちが晴れてきてニコニコとなる。


「だったら、高等部になったらここでバイトを」

「それは聞けない」


 即答された。


「学生は学業が本分だ」

「……ハイ……」


 本当は自分で少しでも稼ぎたいけれど、バイト以外の方法を考えなくてはいけない。


「では、卒業したらいいですか?」

「どうしてもウエイトレスをしたいのか?」

「ウエイトレスにこだわっているわけではないんです。お父様のお店で働いてみたいだけです」


 どれだけブラックか知っておかなければ対策もうてない。


「……考えておこう」

「はい!」

「そのためにはきちんと勉強するように」

「はい!!」





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