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瞬きもせずに ・・  作者: 脱兎のシン
ー1年生飛躍編ー
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第7話 Sな桜井先輩 (1)


《イングリッシュルーム》


三枝先輩と小島君との騒動から小一時間後テニス部のミーティングが顧問橘先生の担当する英語の専用教室の『イングリッシュルーム』を使う事になっている。少し前に桜井先輩に連れられ小島君が三枝先輩に謝罪をしていた。

まぁ桜井先輩が間に入って居れば何も問題は無いと思うね。ウン。


そして、ミーティングが始まる。


「みんな集まった所でそろそろ始めましょうか。橘先生今日も教室お借りしてありがとございます」


橘先生が軽く神山部長に片手を挙げ答える


「それでは、5月下旬から始まるインターハイに向けて、城川高校テニス部の目標とスケジュールを発表します。」


神山部長が進行始める。

部長の説明によると、夏の全国大会に向け各都道府県による地区予選が始まる。言わば3年生の集大成の場であり、城川高校の実力を見せる花舞台なのだ。当然実力のある2年生や1年生からも団体、個人戦で活躍出来る。

去年は1年生だった男子部員の瀬戸先輩、女子部員の成瀬司先輩・三枝ミチル先輩が個人戦で出ている。桜井先輩はと言うと・・選ばれていない。それも当然だよね!私と一緒の高校デビューなんだもん!

え?!変な意味じゃないよ~(笑)


「幡野さん聞いてますか?」


「あっ!はっい!聞いてます」


おっとそんな事ばかり考えていたら神山部長にお声をかけられてしまった。


一番前の席に座っていた川口キャプテンが振り返り、般若顔負けの様面でこちらを睨む・・

キャプテン・・怖いです・・・・



「・・では去年の男女各団体戦は無惨な結果に終わってしまったけど三年間悔しさをバネに頑張ってきま3年生を軸に実力のある2年生、勢いのある1年生を加えて地区予選を勝ち抜いて行きたいと思います。」


「「「「はい!」」」」


「しかしながら何度かある試合の中で、日々実力がついて来る人には順次選手を変更して行きます。今日メンバーに呼ばれ無くても勝ち続けて行けば補欠も合わせてメンバーに入れます。そのつもりで手を抜かず日々練習頑張って行こう。」


「「「「はい!」」」」


まぁ私達ヒヨッ子一団には関係ないけどね

城川高校テニス部のスターティングメンバーは以下の通りになった。


◆団体戦男子の部◆

2年 瀬戸昴(せとすばる)

2年 桜井奏斗(さくらいかなと)

3年 増田義広(ますだよしひろ)

ダブルス

3年 西本寿(にしもとひさし)

3年 斉藤郁雄(さいとういくお)

ダブルス

3年 宮藤祐希(くどうゆうき)

3年 長山要夏(ながやまいるか)


◆団体戦女子の部◆

3年 佐久間瑠衣(さくまるい)

2年 横山景子(よこやまけいこ)

2年 成瀬司(なるせつかさ)

ダブルス

3年 轟梨沙(とどろきりさ)

3年 神山智美(かみやまともみ)

ダブルス

3年 谷口芳子(たにぐちよしこ)

2年 小泉菜名(こいずみなな)


◇個人戦女子の部◇

3年 川口真彩(かわぐちまや)

2年 三枝ミチル(さえぐさみちる)


男子は人数割れの為、個人戦はいない。弱小部故の現実だ


それから各キャプテンの気合いのお言葉を頂きつつ、練習内容やテニスコートの割り振り等を説明した後、解散してコートへと練習がはじまった。






《市営施設のテニスコート》



ミーティングが終わった後、2年、3年生と別れ桜井先輩の指示に従い、従来の外周マラソンと基礎トレーニングをした後に高校の隣接する市営施設のテニスコートに集まった。


「それじゃみんな、改めて新入生を教える事になりました桜井です。三枝は外れ僕が一任でみんなを試合が出来るぐらいまで伸ばして行きたいと思います。」


「・・桜井先輩もしかして三枝先輩が外れたのは小島のせいですか?」


遠藤君がしなだれている小島君を見つめながら申し訳なさそうに質問する。


「んーどうだろうね、彼女はテニスへの情熱が人一倍大きいから色々と悩んでいたんだよ。今回はたまたまみんなとの件で感情的になっただだけなんだ。・・・・余り気にしない方がいいよ。」


少し沈んだ空気を他所に、桜井先輩は眩しい程の笑顔で応えてくれる。


「それより君達は他人の事を心配している暇なんか無くなっているんだよ!」


「兎にも角にもさっき部長が言っていたインターハイ枠に滑り込み出来る様に急ピッチに上達する事が急務です」


桜井先輩はまたも目が眩む程のナイススマイルで話す。


「まぁ君達からの約束で練習メニューを変える事はみんな了承済みだから問題ないか」


桜井先輩は「ハハハハ」と爽やかに笑った後ニンマリと笑った・・・・



「「「「「 !!! 」」」」」



なぜかヒヨッ子一団の背中に冷や汗がながれたのは内緒なのだ・・・・。



「では先ず始めにテニスの球の速さに慣れてもらいます。」と説明してから練習は始まった。


・・ヒヨッ子一団は四人一組になりテニスコートのアウトラインを(かかと)後ろギリギリに等間隔に並ばされ、ラケットを剣道の面の様に顔前に握ぎり構える。

桜井先輩は対面コートにラケットを持ってボールを弾ますている・・

私は後の組で先の四人を見ている。


「では先ず!テニスのボールの速さに慣れてもらいます。体感を慣らさないと上達しないからね」


「二つ注意がある!一つ絶対に体を動かさない事!二つ目は瞑らない事!」


「わかった?」


皆一様に半信半疑に言われるまま首肯く。


「ではいくぞー」


ニヤリと笑う口角顔とは対象的に桜井先輩の鋭い眼光がヒヨッ子を硬直させる。


二三度弾ましたボールが頭上に上げ、物理の法則を足掻らうように急激なスピードに変えた弾がヒヨッ子一団の隙間に矢のごとく走る。

立たされているヒヨッ子は「ヒッ」「わっ」等あられもない声を出し硬直する。


「ドンドン行くよ!」


「そこ!動かない」


「後ろさがるな!」


「ラケット下げると顔に当たるぞ!」


「ボールを見ろ!」


桜井先輩は次々とボールを打ち放つ。二十球程打ち終えた先輩が残りの四人を交代させ私はライン間際に立つ。



前屈みの桜井先輩が上体を反らしラケットを振り下ろす。『ジュッ』左の耳元に風を切る音!後ずさる。

一瞬体が固まる。

速い!

これがサービスの速さになの?

間近に感じる球の速度!

これに反応するの?


「幡野!」


はっ!


意識が迷走する。


「ライン踏んでるぞ」


いつの間に後ろにさがってた。

すぐさま前に出る。

以前可鈴ちゃんと見たときと違い、この速さは尋常じゃない気がするのだけれど・・

先輩の放つボールは凄まじく速く!力強い弾丸のよう。


左右に打ち抜かれるボールは、一瞬の如く5球づつ放たれた。しかしヒヨッ子一団のカラダに衝撃と感動を残しあっと言う間に終了する。

驚きを残したままに、練習は続く。


次に桜井先輩は見本の素振りをする。

それに習い対面のヒヨッ子一団も見よう見まねでラケットを振る。

スローモーションで振る。

コマ送りに振る。

コマ送りを一時停止して、桜井先輩がヒヨッ子一団を指導する。


「そこ!股上げる」


「遠藤!ラケットはもう少しカラダに合わせる」


「はいその体制で1分」


「幡野!頭動いているぞ!」


要所々々のモーションを維持しながら体に覚えさせる。


ヒヨッ子一団は1セットを10回もした所で体が動かなくなった。小島君等は、地面に座り込んでしまった。


「おいおい!もう少し頑張ってくれよ後5セット行くぞ」


遠藤君の息切れも見て見ぬふりの桜井先輩が笑顔で促す。


「なあみんな!野球のスイングでもサッカー、バスケのシュート、剣道の素振りも然り、全部頭で動かしていても上手くはならない。体に覚えさせて初めて次のステップに行くんだ!だけどね、下手な動きで何十回何百回と素振りした所で上手くはならない。だから各重要な箇所で体に時間をかけ覚えさせて行く。だから今辛い体に筋肉と骨に記憶させていくんだ。始めが肝心。だから自分に鞭打って行こう。」


少しドライな眼差しでヒヨッ子一団を見渡しながら話す先輩。


私は膝に着いていた手を離し、ラケットを持ち替え先輩に首肯く。

ヒヨッ子一団も各々小休止を済ませ先輩の指示を待つ。


「じゃあ残り頑張ろう」

桜井先輩はニヤリと笑い、残りのセットを終え軽く(?)5キロのランキングを流した後、練習は終了した。


この日から桜井先輩のあだ名がドSな桜井先輩で『S先輩』とヒヨッ子一団の中では呼ばれる事になった。


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