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瞬きもせずに ・・  作者: 脱兎のシン
ー1年生飛躍編ー
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第5話 桜井先輩VSヒヨッ子一団

決戦場所は荒野風吹く砂埃・・・ペッぺッ口に砂が・・

土曜の放課後、晴天に見舞われた5月の高い空の下。整えられたグラウンドの真ん中でヒヨッ子一団は各々軽く準備しながら桜井先輩を待つ。

今回の鬼ゴッコは部活動の前になった。全体練習後だとヒヨッ子一団が疲れて全力を出せないだろうと桜井先輩が提案してくれた。


「皆いいな!昨日話し合った通りやるんだぞ」


リーダー遠藤君の言葉に一様が頷く。

昨日思案した『鬼撃退大作戦』を思い出す。まずヒヨッ子一団8名を二組に分ける、足の早い者体力に自信が有る者と体力に自信が無く中学で体育会系の部活じゃなかった者を4・4で分ける。体力に自信が無い4人は後者グループで前者グループの壁となり鬼の追撃を阻止する。

そして列はなるべく長く伸びさせ、先頭と最後尾の距離を作る。元陸上部の遠藤君の立案だ。

私は女子だけど前者逃げきり集団に入っている。手首足首と間接部位を念入りに解す。

久しぶりに中学時代のバスケの試合張りに緊張してくる。


程なくするとテニス部の上着を羽織って軽く走ってくる桜井先輩が駆け寄る。


「みんなお待たせ!」


「「お疲れ様です」」


ヒヨッ子一団は先輩に挨拶する


「みんな準備はいいのかな?」


先輩は爽やかな笑顔で一同を見渡す

ヒヨッ子一団は頷く。一様に強ばっている。


先輩は少し待っててと伝えて、校庭の隅でこちらを見ている1人の制服を着た男子生徒を手招きする、するとその人はトボトボと歩いてくる。


「一応正当にジャッジをしてもらう審判を部外者から来てもらった二年の米田君です」


「悪いね時間貰って」


「奏斗には色々世話になってるからな、良いよ空いてるのは俺位だし」


「直に終わるからさ」


その米田と言う先輩はガムを噛みながらヒヨッ子一団を凄みの()()で見渡す


「お前等!根性見せろよ」


・・何かの集まりとお間ち違えではありませんか?・・


「・・・・」


「・・・ふん!」


私たち一年ヒヨッコ子一団は米田という先輩の返事に返答出来ずに固まっていると鼻で一笑された。

当然である米田という先輩は見た目がすごい!一昔の不良風な制服ズボンを腰で履き茶髪の髪型で風に揺れる前髪の隙間から4個の銀色に輝くピアスがチラついている。眉毛は女性の私たちよりも細く睨む程に眉毛の両端は天に上がる。その風貌はまさに『ザ・ヤンキー』であります。兎に角眼力が怖い・・怖すぎです。ヒヨッ子一団は蛇に睨まれたヒヨッ子その者であります。


「まぁそれじゃやりますかね」


桜井先輩は何が楽しいのかわからないけどクスクス笑いながらそんな私達を他所に爽やかに話を進める。

桜井先輩と米田という先輩は既に話がついているらしくいつもの指定位置につく。


私たちヒヨッ子一団も打ち合わせ通りに各々覚悟を決め位置に着く。


「じゃあー始めんぞ!一年気合入れろよ!」


グラウンドに響き渡る大声を上げるヤンキー先輩


「よーい!!! いけー!」


米田という先輩の号令でヒヨッ子一団は矢の如く走った。

ヒヨッ子一団は一列に並びラインギリギリに走る。

昨日の下校途中大きな公園で練習した陸上部の技「即席ジェットストリーム」だ。先頭を走る遠藤君を盾に以下のヒヨッ子の空気抵抗を抑え力を温存しながら俊足走行をする。

もう後がないヒヨッ子からして見ればこの後の練習など考えずにここで全ての力を出し尽くすのだ。


桜井先輩は私たちを伺いつつジリジリト距離を詰めて来る。

1週目を過ぎ案の定ヒヨッ子一団は徐々に後方の4人がペースについて行けず、2組に分かれて行く。

2週目、遠藤君と男子A君が先頭を変わる。私は先頭集団の3番目に位置する遠藤君は3人の後ろに着く。

2週半を過ぎた辺りで桜井先輩は後方集団の殿に迫っていた。


「小島ー!」


遠藤君が先輩を見ながらタイミングを見計らい叫んだ!

すると小島君のスグ後ろに迫っている桜井先輩を背後に狙いを定め、イカにもという感じで手を大きく広げ後ろにコケる!


「わぁっ」と声のほうを見るがその声は小島君の声で、すんなりと桜井先輩は回避していた。


しかし遠藤君は空かさずヒヨッ子B君とCさんに号令する。

両名は両腕を大きく広げ約3コース分の壁を作る両名の速度が落ちるのと同時に距離が離れる遠藤君が「よし!」と歓喜するも束の間二人の大外巻きしながら巻くって桜井先輩が疾走してくる。マジかよ・・遠藤君の呟きが風にのって後方に流れる!


3周目私は先頭集団の二番手に位置。

そして桜井先輩は後方集団の1人に追い付いた。肩を叩かれすんなり撃沈されている


しかし距離は100㍍差がまだある。

4周目私が先頭だ。風の抵抗が凄い!即席とは言えジェットストリームは侮れない事を思い知る。1㎞をダッシュの如く走るのはやはり凄い。しかし桜井先輩はジリジリと距離を詰めてくる。先輩は元陸上部?スプリンターの様に散った皆が作った距離がミルミル無くなりすぐそこまで鬼の魔の手が迫りくる!

5周目私が下がろとした時遠藤君が叫ぶ!


「幡野!そのまま行けー」


チラッと後ろを振り向くと遠藤君が真後ろにいて後の二人は既に桜井先輩の後方にしゃがみ込んでいる。


遠藤君の後ろの桜井先輩がニンマリ笑顔でこちらを見据える


恐怖!

一瞬に疲れが吹っ飛び一目散とはこの事とは知らず無我夢中で走る。


後ろでバタバタと足音がする。手を振る反動で瞬間遠藤君を見るとジグザグに走って桜井先輩の行く手を遮る。鬼じゃないのに鬼の形相で走る遠藤君。

その肩にドンと鬼のその手が遠藤君を投げ飛ばす!

ひえっ!桜井先輩は化け物ですか?!


ヤンキー先輩が居るゴール地点まで約半周100㍍桜井先輩とは僅か10㍍も無い


遠藤君の声がするけど何を叫んで居るのかわからないけどその声に後押しされる様に走る。


最終カーブのコーナーを曲がれば一直線!


後ろから桜井先輩の足音が聞こえてくる、もうすぐ近くだ!

後30㍍・・


もう体か重い・・

後20㍍・・


息づかいも背後で弾む!

もう手が上がらない。

後10㍍・・


「一年!」

「「気合いを入れろ!」」


前と後ろから同時に声がした。

体に力が入る。腹筋を絞り右足を、左腕を引く!


ヤンキー先輩を通り過ぎる。

やったー逃げ切った

片手を挙げ私はガッツポーズしながら「ヘナヘナ」と地べたに経たりこんだ。


グランドを見るとヒヨッ子一団は再度腕を高く突き上げ勝利した私を確認すると、一様にヘタレこんだ。


「幡野!頑張ったな」


桜井先輩が私の頭をポンポンとたたきいつものニンマリ顔で笑ってくれた。

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