Everyone doesn't wanna die
すいません今回ちょっと長めかもしれません…
テンポよく読めたと言っていただければ嬉しいです(>人<;)
「つまり倒れた子たちは共通して2班の作っていたものを食べていたということね」
残ったクラスメート全員はひとまず2班の調理台の周りに集まる。現場は事件が起きた当時のままにしてあった。
全品完成していて後は盛り付けだけだったようで、深い鍋にはスープ、中華鍋には炒飯が入っていた。5人分の白い皿には青椒肉絲が盛り付けられている途中で、一見何の変哲もない調理実習の風景に思える。
「……海斗が盛り付けの最中に、純平と騎士がコンロの近くで倒れてたってことは」
「海斗は青椒肉絲、純平と騎士は炒飯をつまみ食いしてた可能性が高いってことか……」
梓と大河の推理を聞いて、美優の肩が小さく跳ねる。
そういえば……海斗が倒れて救急車を呼びに教室を出るまで、炒飯を炒めていたのは美優だったよな。いやでもよく考えてみてくれ。あの美優が毒を盛るか?容姿端麗で誰に対しても平等に接する女神みたいなあの美優がだぞ?寝言は寝てから言えって……
「安心せぇや美優!ワイが無実を証明してやるで!」
不安そうな美優を気遣い、蓮が中華鍋から炒飯をよそって口に入れた。その場にいた全員の視線が蓮に集中する。
「なんやぁ〜美味いやん!ご飯と卵が上手く絡み合ってぇっ!?」
さっきまで威勢の良かった蓮の顔がみるみるうちに青ざめていく。気絶しないだけまだマシなのかもしれない。
––––––––いやちょっと待て!あの鍋には一体何が入ってるんだ!?
「……先生、蓮を保健室で休ませてやって下さい。美優も付き添いを頼む」
「そうしようかね……あんたたち、分かっているとは思うけど安全が確認されるまでは何も触れるんじゃないよ」
「うん……分かった!蓮、大丈夫?」
梓の指示で先生と美優が蓮と一緒に家庭科室を出ていく。これで1番犠牲にしたくない人物を遠ざけることが出来た。
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「……大河、そろそろ教えてやってもいいんじゃないか?」
すると梓は隣にいた大河に話を振った。溜め息をつきながらも大河は渋々と話し出した。
「美優はな……究極の料理下手なんだよ」
「「「んだとぉっ!?」」」
嘘……だろ?この事件の黒幕が美優だって、そう言いたいのか?
「俺は信じないぞ!」
「そうだ!流星の言う通りだ!」
皆思っていることは同じらしく、美優を援護する声が四方八方から上がる。美優が人を平気で死に追いやるような女の子でないことは百も承知だ。絶対に真犯人がいるはずだ!
「じゃあ聞く、どうして美優が作ったものを食べた奴らは死にそうなんだ?」
「「「そ、それは…………」」」
確かに美優が作っていた炒飯を食べて尊い犠牲者が出ているから、否定できる材料は見当たらな……
「なぁ、青椒肉絲は美優が手を加えてる訳じゃないよな?」
俺はふと気になって2班の残りのメンバーである栄人、翔、慎一郎に尋ねてみた。炒飯はともかく、青椒肉絲は海斗が盛り付けをしていたから大丈夫だと思ったのだが……
「そーいや俺、美優が青椒肉絲に隠し味的な何かを入れてるの見たわ」
「「「なぜ止めなかった!?」」」
「いや別に美優だからいいと思って」
栄人の衝撃の一言にクラスメート全員が総ツッコミをする。分からなくもないが、美優が容疑者となっている今それは目の前で万引き犯を見逃してるようなもんだぞ!?
「とりあえず……これからどうするよ?」
俺たちは調理台に並ぶ地雷源と化した料理を前に立ちすくむ。緑川先生は何も手をつけるなと釘を刺していたから放っておくのが最善の策だろう。
だが美優はどう思う?おそらくこのままではせっかく作った料理が廃棄されてしまう……しかも他人を呼吸停止に陥らせると知ったら、ショックのあまり最悪不登校になるかもしれない。そうなればクラスどころか学校の雰囲気も悪くなり、生きる糧を失った俺たちは血で血を洗うような高校生活を送らざるをえなくなる。それだけは何としてでも避けたい。
「「……食うしかねぇだろ」」
その時、梓と大河が一歩前へ出て小皿に炒飯と青椒肉絲を盛り付け始めた。