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私の父は英雄の親友でした。

作者: える

今から20年前魔王が現れこの世界を滅ぼそうとしたのです。

その時立ち上がったのが父の親友でした。

勿論父も一緒に戦ったそうですが一般人の域を出なかった父と違い英雄は凄い能力の持ち主で最終的に魔王を倒してしまったのです。

こうして世界は平和になりました。


めでたしめでたし…っとならないのが現実です。


20年経った今でも戦いの爪あとは残っているし、父はその時の怪我が元で10年前に命を落としました。

そう私が3つの頃です。

私の中でおぼろげに残っている父の記憶はいつも穏やかで優しい人でした。


もう、その顔すらも、もやがかかったように思い出せなくなってきています。

声も少し高めだったような気がするけれどそれすらも私の記憶違いかもしれません。


私の父も英雄のパーティに一応入っていましたがそれは父が親友だから戦力外でも入れてもらえたのだともっぱらの評判です。

信じられませんがあまりに仲が良かったので男色の噂まであったとか……

こんな話をその娘に聞かせてくる心無い人は案外沢山居るのです。


英雄さんと違ってあまりイケメンでもなかったようでその血を継いだ私も人並みの容姿。

逆に英雄さんは10人が10人共認めるような美丈夫で年齢を重ねた今もまるで王子様のようだ。

魔王を倒した後は王様から土地を賜って今では立派な領主さま。


私の父もこの小さな我が家が建てれる位のほんの少しの報奨金をもらったようです。

お風呂と台所の他にご飯を食べる部屋と寝る部屋が2つ、これが我が家の間取りの全てです。

町の外れに立っているので買い物とかは少し不便だけど…

でも私は今の自分で十分満足です。


父が亡くなっても人並みの生活を送れているのですから。

感謝しなくてはいけないと思う。


英雄さんは父が亡くなった後も月に1度のペースでうちにやってきます。

我が家ではとても買えないような物を手土産に持ってくるので母も私も毎度恐縮しっぱなしです。

だって一ヶ月の食費全部使っても買えないような高価な果物とか、母の給料2か月分はする石鹸だとか…

大したお礼も返せない立場でとても辛い。


そして私はこの英雄さんが少し苦手なのです。


「エトナも大きくなったな」


そう言って私の頭を撫でる英雄さんの目はとても優しい。

実の息子より私に甘いと言っても過言ではありません。

私の後ろに父の姿を見ているのも別に良いのです。

けれど…


「もういつでも嫁に来れるな」


ああ、また始まった。

英雄さんには私の1つ上の息子さんが居ます。

彼はどうしても息子さんと私を引っ付けたいみたいなのです。


それがまぁその息子っていうのが王子様みたいな超イケメンで運動神経も良く頭も良くて優しいっというまさに乙女の夢を詰め込んだような存在。

正直憧れはしても結婚するとなれば荷が重いと私は思うのです。


「え…いやぁ、そのぅ」


そ~っと目を逸らす。

お世話になっているし英雄さんを無碍になんか出来る訳が無い。


「お前、そのへんにしとけよ」


困ってる私を見かねたのが英雄さんを止めてくれたのがこちらも同じパーティだったアーバンさん。

英雄さんとは当時犬猿の仲だったらしくいつも2人の間に入って仲裁するのが父の役目だったとか。

少し喧嘩っぱやい所もあるけれどなんだかんだで優しい人だと思う。

やっぱりアーバンさんも月に1~2回はうちへ様子を見に来てくれる。

ケーキとかクッキーとか甘いものを良く持ってきてくれるので実は甘党だったりするのかな~なんて内心思ってます。


「エトナいくぞ」


そう言って私の腕を引っ張るのはアーバンさんの息子のミナト。

私より一つしただけどいっつも元気で明るいそして優しい子だ。

今だって私が嫌がってるのを察して連れ出してくれようとしてる。


うんと頷いてその場を離れようとした私の反対側の手を掴んだのはスルガ。

噂の英雄さんの息子のイケメン王子だ。


「今日は僕と出かけよう、ね?」


っとにっこり笑って首を傾げる。

イケメンスマイルの破壊力はその気の無い私にだって顔に血が上っていくのがはっきり解るくらい効いてしまう。

2人は父と一緒に必ずうちへ来る。


「エトナにさわんな!」


ミナトが怒鳴り声をあげる。

ああ、しまった面倒なことになった。


長年の付き合いで私は解っている。

傍目から見たら「私の為に争わないでー!」っていう夢のシュチュだ。

2人共タイプは違えどイケメンでしかも「あの」英雄の息子達。

こんな風に好かれて取り合いされてみたいと考える人もいるだろう。


でも実際は全く違う。


2人は私になんてさほど興味はない。

ただ相手に負けたくないだけなのだ。

その証拠に視線はお互いからピクリとも動かない。


この2人も親の代からの因縁を引き継いでライバル関係。

なんでもかんでもお互いに負けたくないとただ張り合っている。

っと言っても2年の差は大きく戦えば勝つのはいつもスルガ。

悔しがるミナトを慰めるのが私の役目だ。


「痛い……」


2人に掴まれた腕が痛くて抗議の声を上げるけど私の声は全く2人に届いてない。

手が離れる所かますます力が入っていくのは何故? 


視線もお互いから離れることは無い。

むしろ逸らしたら負けだと思ってるんじゃないのかな。


「あの、今日はミナトと約束してるからお出かけはまた今度にしましょう?」


スルガに声をかけると笑顔で「明日」の約束をさせられた。

その時の瞳の奥が全く笑ってなくて私には頷く以外の選択肢が無かった。


ほんとに何でも張り合うクセはいい加減直してくれたらいいのに。

ミナトと手をつないで家の外へ出ると泣きそうな顔で謝られた。


「エトナ、ごめん…俺、スルガにだけは負けたくなくて…」


落ち込むミナトの頭をよしよしと撫でる。


「2年の差は大きいんだから、まだまだスルガに勝てなくたって普通なんだよ。今勝てなくても最後に勝てばいいじゃない!」


そう言って励ますとミナトは少しだけ笑顔になった。

ハイスペック王子のスルガだけどミナトもすっごい器用だし努力家だしいつかはきっと勝てると私は本気思う。

その何時かが明日なのか来年なのか10年後なのか私には解らないけど。


「うん、俺頑張る」


その返事に私も笑顔で頷き返す。

なんだかんだ言ってもミナトは可愛い。

私には兄弟なんて居ないけど弟が居たらこんな感じなのかな?って思う。


同じ幼馴染の枠に入っていても負けてばかりいるミナトに肩入れしてしまう気持ちは多分他の子にだって解ってもらえる筈だ。

勉強は元よりかけっこから早食い、果てはかくれんぼに至るまで100%勝てないのです。

普通一つや二つ苦手な事ってあるかと思うんですがスルガにはそれが見当たらない所が凄い。

ミナトは頭を使うことよりも体を動かす事の方が得意そうなのでそちらを伸ばしていけばあの完璧超人にも勝てるんじゃないかな。


昔は3人でもよく遊んだのですが最近はどちらかとしか遊びません。

スルガにすぐ突っかかっていくミナトを毎度止めるのも疲れるし、解っていて煽るスルガを嗜めるのにも気を使います。


「今日は川に行こう!」


元気が出たのかニコニコと私の腕を掴んで走り出す。

引っ張られるように私もそれに合わせて走り出した。


難しい事はまた後で考えよう。

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