意味の無い言葉
慣れた駅の改札前に、立っている。
雑踏の中に君を、見つけたくて。
学校帰りに最寄り駅で佇んでいるのは、君が一人で歩いているのを確かめたかったからだ。日もとうに暮れて、バスロータリーに目をやれば繁華街の電灯が目を刺した。
「見つかるわけも、ないんだけど」
5回は読んだ小説のページを無意味に捲り、私は呟いた。そうは言うものの、実は私は、見つけたくなかったのかもしれない。
雑踏の中にいるのは、君の足音を聴くのが怖かったからなのだろうか。
きっと、そうだ。きっと、君は私に気づくこともなく、誰かと歩いているのだろうから。
もう、帰ろうと思った。
それなのに、振り返った瞬間に、私は君を見つけてしまった。思った通り、君は一人じゃなかった。
そして私は、君がくれた本を閉じ、改札に切符を通す。切符に開いた穴は、落胆どころか失恋した私の心のようだった。
一人なのは、私自身。
「君の苦手なことは、自分を信じることだろう?」
数ヵ月も前に君が私を励ました言葉が、蘇って、小さく弾けた。
はじめまして、桜の樹です。
日記の言葉の羅列からなるお話になっています。
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