脱出
気付くと、ここにいた。
何もない世界。
ただただ暗く、太陽もなく、海もなく、大地もなく、………そんな何もない世界。
物音も一つとしてない。
そんな世界にいた。
その世界で、考えた。
「どうしてここにいるのか?」
「ここは何処なのか?」
「どうして何もないのか?」
「どうして一人なのか?」
どうして、どうして、………………そして、
「俺は、何なんだ?」
気付けばこの疑問だけを、考えるようになった。
わからない、いや分かるはずなどない。
誰も教えてくれないし、自分だけではきっと答え何て出ない。
答え何て出ない、いやそもそも無いのかもしれない。
考え、考え、考えた。
そして、一つの「想い」に変わった。
それは、ただただ知りたいという純粋な「知識欲」である。
それは、突然であった。
真っ暗な何もない世界で、一つの光が見えたのだ。
今までにこんなことはない。
焦り、恐怖、驚き、そして期待、様々な感情が心に生まれた。
中でも「期待」、あの光のもとに行けば何か変わるのかもしれない、という本能的な期待は俺を突き動かした。
ただひたすらに走る。
いや違う、そもそも足もなければ、体もない。
なので、光のもとに行きたいそんな気持ちだけに動かされた。
自分が進んでいるのか、それとも光が自分のもとより離れているのか分からない。
いっこうに縮まらない距離に、心に「諦める」感情が生まれた。
しかし、諦めることはなかった。
その理由は簡単だ、俺には光のもとに行く以外にこの世界から出れる可能性がなかったからだ。
「この世界から出たい」その気持ちがいつしか心の中に生まれていたらしい。
どのくらいの時が経っただろう。
いつの間にか、その光は目の前にあった。
手を伸ばせば届きそうな距離に。
俺は一心不乱にその光に手を伸ばす。
俺の手がその光に触れると、世界は音を立てて崩れた。
真っ暗な世界は崩壊し真っ白な光に飲み込まれ、俺は意識を失った。
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