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ゴブリンノート  作者: アルト
第一章 始まり
6/17

新装備の威力と結果

 おはようございます、巣から追い出された小鬼ゴブリンです。


 俺と赤ん坊以外の全員はすでに起きて、黒色狼ブラックウルフの毛皮の(雌達が作った)装備を身に付けて確認していました。


 俺が起きたのを見た年かさの雌に狩りをしてこいと巣を追い出されてしまいました。


 巣の食糧も(雄50匹で大規模な狩りに出るほど)少なくなっていたし、サイクルが早い小鬼ゴブリンには食糧不足は死活問題で2日満足に食えないと直ぐに痩せ細りガリガリなのに腹だけ膨らんだ食鬼イーターという喰鬼グールの近縁種に変化してしまいます。


 コレに変化してしまうと、どんなに食べても満足せず近くに居る生き物に手当たり次第に襲いかかり殺されるまで眠らず休まず食い続けるんです。強さはあまり変わらないんで直ぐに倒されますけど。


 そんな自我も無く同族ですら躊躇い無く手に掛ける哀れな怪物に成らないために小鬼ゴブリンは毎日相当量の食糧が必要で、それこそ死に物狂いで狩りをして少しでも余裕を持つようにしているんですよ。


 なので狩りをしないとかなりまずい事になってしまいます。一~二日なら俺達が使っている蔓が採れる芋が縄張りの中に何ヶ所か自生しているのでしのぐことは出来ますが満足できる量ではありません、根こそぎ取り尽くすと次に採れる芋が無くなってしまいます。


 アテも無いので芋を自生地から少しずつ採って回りながら獲物を探すことにした俺と雄の成体2匹(見回り番)の3匹は芋を蔓で括って纏めながらキョロキョロと周囲を警戒していました。


「もっと探さないと、これじゃあ足りないな。他にも芋場有ったか?」

「ナワバリノナカノイモハ、コレダケダ」

「芋はってことは他に何か有るのか?」

「アトハ、イノシシノ、スガ、チカクニ、アッタハズダ」

「イノシシハ、イマ、コドモヲ、ツレテルカラ、チカヅクト、オソワレルゾ?」


 この2匹が話しているのは、うちの縄張りのギリギリの所に巣作りして子育てしているという突進猪タックルボアという名の凶暴な猪です。繁殖期になると雌1匹に雄が2~5匹が交尾して子供が産まれると、交尾した全ての雄が子供達と雌を守るという習性があるので、子育て中の群に遭遇すると黒色狼ブラックウルフでも2、3匹なら軽く追い払ってしまうくらい強い猪なんです。


 雄の猪1匹を仕留めて巣に持ち帰れれば、芋と合わせて7日位は余裕が持てます。


 ま、命の保証は出来ないですけどね。


 確かに防具も新しくなって奴らの牙でも防げそうではありますが…突進と名に付くだけあってかなり打たれ強いんです。新しい棍棒(鉤爪付)でも急所に当たらないと鉤爪が刺さるかどうか判らないです。

前のただの棍棒だと成獣1匹にこっちが10匹掛かりでタコ殴りにしてやっと倒せるくらいですから。


「しょうがないが、ダメ元で行ってみるか?」

「イッピキ、ヒキハナセレバ、ナントカナルダロ」

「ソウダナ、モシカスルト、コドモノ、ホウカモシレンガ」

「よし、猪の巣の近くまで行ったら芋は穴を掘って隠しておこう。流石に片手が塞がってる状態で猪狩りをする気にはなれない」

「ナラバ、スニチカヅイタラ、オシエル」

「頼む」


 流石に見回り番をしていただけあって2匹は巣の場所を知っているそうです。このまま3匹並んで芋を背に猪の巣に向かいます。



 早足で周囲を警戒しながら歩くこと一時間位、見回り番の2匹が警戒しながら立ち止まりました。近くまで来たみたいです。静かにナイフで穴を掘り始めたので俺もアレを背中側から出して手伝います。


「オマエダケ、ナンデソンナモノヲ、モッテルンダ?」


 2匹が俺のアレをマジマジと見て、1匹が声を潜めながら問いかけてきました。


「仲間達の死体を埋めるのに、使える物がコレだったんだよ。かさばるから他のはおいて来ちまったからな…」

「ソウカ、オマエダケデ、トムライマデ、シテキタンダッタナ…スマナイ、イヤナコトヲ、オモイダサセタ」

「気にするな。俺達は昨日よりも今日の飯、だろう?」


 アレとは黒色狼ブラックウルフの頭蓋骨です。


 今は声を潜めながら話しているので気が沈んだような雰囲気の俺ですがこの2匹ほど落ち込んでいるわけではありません。


 あの、頭がすっきりした瞬間から同族との仲間意識が薄れていて何故か解らないのですが違う種類のモンスターの事のように感じています。どうゆう事ですかね?


 気が付いたら芋を埋めるのに十分な穴が掘れていました。あの会話から考え込んでいた俺を2匹は、俺が落ち込んで居るもんだと思ったようで話しかけてきませんでした。話すことも少ないから都合がよかったですね。


 俺達3匹は芋を穴に埋めて、気持ちを切り換えるように狩りの相談を始めます。


「芋の場所を忘れないようにしよう。もしはぐれたり他の2匹が死んだ場合は芋を掘り返して巣に持ち帰ること。これで良いか?」

「アア」

「オウ、ソレデイイダロウ」


「なら、始めるか」


 確認を終えた俺達は猪の巣の風下に回り込み巣が見えるギリギリまで近付き、三方に分かれました。俺は巣に向かって左側他の2匹は巣を挟んで正面と風下の俺から見て右側です。


 俺と正面の1匹で群の注意を分散させて風下の奴が適当な1匹の気を引き巣から引き離して、十分引き離したら俺か正面の奴が加勢して仕留めるという、作戦ですらない方法です。


 俺が大体の位置に着き茂みに屈んで巣の方を見てみると大きな猪3匹を挟んで反対側の茂みの中に仲間が居るのが微かに見えました、相手も俺を確認できたようで小さく棍棒を振ります。俺はソレを見て立ち上がり大声を出しながら棍棒を振り回し猪達の注意を引きます。それとほぼ同時に正面の奴と風下の奴が姿を現し3匹の注意を引きます。


 運悪く俺の方に一番大きな1匹が突進してきました。慌てて背を向け逃げます。相手は俺の三倍ぐらい大きいんで、俺も死に物狂いで必死になって逃げます。ちらっと見たら他の2匹の方にも1匹ずつちゃんと分かれたようです。


 少しの間右に左に逃げ回っていましたが追い付かれそうになってしまったので、諦めて猪に向き直ります。俺が立ち止まったのを見て相手の猪も止まりました。奴は後ろ脚で土を何度か蹴ると俺めがけて一直線に突進をしてきました。


 俺は奴とぶつかる瞬間鉤爪付棍棒を振り抜きながら横に跳んで間一髪で避けました。ゴロゴロと転がり、急いで立ち上がり振り返ると奴は鼻面からドクドクと血を流しながらも、こちらに向かい再び突進をしています。俺は後ろを一瞬確認してギリギリまで引き付けてからまた横に跳んで避けました、俺が地面と熱い抱擁をした瞬間、ズドンと重い音がした後ドサリと何かが倒れる音が続けて聞こえました。


 俺が地面に打った顔をさすりながら立ち上がり音のした方に振り返ると猪が大木に顔から突っ込んだせいで脚を突っ張ってひっくり返ってピクピクと痙攣しながら気絶していました。


 俺は奴を起こさないように静かに近付き鉤爪のナイフで喉の柔らかい所を一気に引き斬りました。


 猪は痛みで気が付いたようで喉から血を噴き出しガボガボと濁った鳴き声で吠えながら少しの間バタバタと足掻いて直ぐに静かに成りました。


 俺が仕留めた猪を見ながら立っていると後ろからズルズルと重たい物を引き摺る音がしたので振り返ると仲間の2匹がそれぞれ1匹づつ引きずりながら歩いて来ます。


「今の音はソイツか、大きな突進猪タックルボアだなぁ」

「そうだな、この群のボス個体のようだな…どうした?」

「いや…何か喋り方が流暢になってるからびっくりして…お前等こそどうした?」

「猪を殺した時からなんだか頭がすっきりしてな、考えることも苦じゃなくなったんだよ」

「オレも同じだ。コイツを仕留めた時から何故か解らんがお前達への仲間意識って言うのか?コイツ等は同族だって感じが強まった」


 いや、こいつ等の言ってる事俺もそうだったから判るけど……え?こいつ等も、そうなの?


2014/06/24 初感想を頂きました。ありがとうございます、励みになります。


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