帰郷と驚愕
こんばんは、そうです、ちょっと変な小鬼です。
日が沈む前になんとか巣までたどり着きました。
うちの巣の縄張りまで来た所で見回り番の仲間と会うことが出来ました、2匹居た仲間は黒色狼の毛皮を着た俺に最初は気が付かなかったみたいですが、俺が毛皮を引き摺る音が聞こえたようで此方に向き直り警戒心丸出しで棍棒を構えました。
「オレだ。敵じゃない、ソレよりもこれを持ってくれ」
仲間達は至近距離まで近付いてからようやく同族だと判ったようで俺の姿にビックリしてました。
そりゃそうですよね、暗闇から黒色狼の毛皮を着た何者かがズルズル脚を引き摺る音をさせながら近寄ってくるんですもん、俺なら問答無用で即刻逃げますね。
「他ノ皆ハドウシタ!?」
「ソウダ、アンナニ大勢イタダロ?マサカ…」
「その話は巣に帰ってから皆に纏めて話すよ」 いい加減、緊張の糸が切れかかっているので話もそこそこに切り上げて巣に向かうことにしてもらいました。勿論毛皮は2匹に渡して俺は棍棒(釘バット風)だけ持ってます。
遂に懐かしいのか微妙な感じの生まれ故郷である我が巣に到着しました。中(結構大きな洞窟)に居たのは醜い上にしわくちゃでヨボヨボで棍棒の代わりに杖をついた長老と、胸が剥き出しのやっぱり醜い雌達が3匹、その後ろに小さくて目がクリクリとしたそれでも醜い赤ん坊達6匹と成体の小鬼を一回り小さくした姿の醜い子供達10匹。雄衆は見回り番の2匹と俺以外は全て黒色狼との戦いで、死に絶えています。
総勢22匹、これが今の俺の居る巣の現状です。
正直言うと、かなりのピンチです。ぶっちゃけるとこの巣の存亡の危機的な。
巣の中の地べたに腰を下ろして一息ついた俺は、全員に雄衆の現状を説明すると、ある者はすすり泣き、またある者は今の巣の現状に気付き死の恐怖に震えてと、反応は大体がマイナス方向です。
「皆ノ者、怯エテイルダケデハ死ヲ待ツダケジャ。戦エル者ハ武器ヲ持テ」
「ソレなんだが長老、俺が持ち帰った黒色狼の鉤爪がかなり切れ味の良い刃物になる。それと毛皮は大抵の刃物ならば通さない程強靭だ。変わりに今は黒色狼の鉤爪でしか切れない、しかも毛並みに沿ってしか切ることが出来ないけど」
俺は自分が着ているボス個体の毛皮を立ち上がって改めて皆に見てもらう。
「フム。殺セタトイウコトハ、棍棒ハキイタノジャロ?火ハドウナンジャ?」
「あ…試してないな、そもそも火が無かったし」
そういえば試してないですね火。火起こしする道具も無いし暖をとる必要も無かったし。此処は洞窟だから少し肌寒いので洞窟の真ん中に常に火が大きな石を丸く円を描く感じに二段積んだ中に燃やしてある。俺は雄2匹に運んでもらった毛皮の束から1匹分を外し、火から先端が赤々と燃える薪を引き抜き毛皮の尻尾の先に押し付けます。すると毛がチリチリと焦げていきます。
「ソレナラ、行ケソウジャナ。切リ離シタイ所ノ毛ヲ燃ヤシテ鉤爪カ石包丁デ切レルジャロ」
びっくりです。こんな簡単に問題解決するなんてやっぱり長老には年の功が有りますね。これで戦える者の装備を作ることが出来そうでひとまず安心出来ますね。