変化と進化④(他の皆)
おはようございます。このまま飛び出して狼か犬を探しに行こうか迷っているオルドです。
洞窟から外に出て日の光に目が眩み立ち止まって居たら、何かが走り寄ってくる足音が聴こえたので鋸を頭の上に水平に掲げます。
「止まれ!俺はオルドだ!」
「何だって、オルド?」
掲げた鋸にガチッと何かが振り落とされた感覚と共に、グラトの声が少し高い所から聴こえます。
目が光に慣れてきて見えたのは小鬼のグラトの面影が残る俺よりも二回りほど大きな人鬼の顔でした。
長老と若い雌の人鬼の時には起き抜けだったので気にならなかったんですが明るい外で見ると頭から毛が…髪の毛が生えてます。グラトは黒色狼の鉤爪位の長さの赤い髪の毛が逆立ってます。顔は…ゴツいのか?濃い眉と強い目力がなんか威圧感になってますね。身体の大きさに合わないのか上半身は裸でムキムキの筋肉で腰に昨日までの被っていた毛皮を巻いてます。
「そうだ。長老が言うには狼人鬼になったらしい。小鬼と黒色狼が一度に沢山死んだ場所に居たからこんな姿に為ったのかも知れないだとさ」
「ふーん、そうか」
「そうかって…全然驚かないんだな。昨日の突進猪を持ち帰ったときの雌は朝イチで俺を殺そうとしてたぞ」
「昨日の雌…ああ、槍で突いてきた子の事かな」
グラトの後ろから俺よりもいくらか細い人鬼が変な形の棍棒を持ちながら進み出てきました。
「念の為に、僕がワイズだよ。朝起きたら見張りを含めて皆寝ていて焦ったよ。姿まで変わってるからね」
ワイズの外見は…優男?細身なんてすけど弱い感じはしないですね。グラトより細目の眉に澄んだ瞳、眉にかからない位のサラサラの黄色っぽい髪、スッキリした輪郭。何故でしょう…なんか、いや、何でもないです。
ワイズと話始めるとグラトは飽きたのか皆が何かで穴を掘っている方へと行ってしまった。
「ワイズは周りの奴等が敵だと思わなかったのか?全然驚いた感じがしないんだが…」
「あー…なんて言ったら良いのかな、周りの皆が何なのか、誰なのかが、見ただけでなんとなく判ったって言えば良いのかな。見た目以上の事が感じ取れたと言うか、そんな感じがしたんだよ」
ワイズは魔物らしくない苦笑いをしてそう答えました。
「匂いじゃないんだな。俺は朝から周りの匂いがごちゃごちゃし過ぎて近付いて覚えないと…あれ?」
そういえば、目で見なくてもある程度近ければ匂いで何が何処に有るか判る…?
「匂いが区別出来るんだね!それは狼の特性かな、便利な能力だから使いこなせるように訓練しておいた方が良い」
「お、おう。何かぐいぐい来るんだなな、昨日までのワイズと違うから変な感じがするがそうするよ」
「ごめんごめん。朝起きた瞬間から知らない物や、使い方を知らなかった物にものすごい興味が湧いてきてね。今も土を掘り起こして耕すのに簡単な道具を作ってたんだ」
ワイズはそう言いながら自分の背後を変な棍棒―杖で指し示しました。そこには棒の先に木の板を蔓で縛り付け先端に平たく削った石が乾くと硬くなる汁―長老に教えてもらった草の汁でくっ付けられた、変な形の物が幾つかと、未だ完成前の棒と板も置いてあります。
「これは…何?」
「名前までは付けてないけど、これなら楽に土を掘れるだろ?何かもっと使いやすい形になりそうなんだけどなかなか思い付かなくて、良いアイデア無いかな?」
俺は鋸を振り下ろして地面に突き立ててから変な形の棒を拾い上げ、引っくり返したり実際に地面を掘ったりして頭に浮かんできたことをワイズに言いました。
「真っ直ぐのまま使うなら、地面に刺すときに力が込めやすいように柄尻に何か掴める物が有った方が良いかな。他は…これさ振り下ろして掘れるように出来ないか?その方が楽だろ」
「確かに!それは思い付かなかった。オルドはその鋸?だっけ、それを振り下ろす動きから思い付けたんだろうなぁ。グラトは同じ動きをするのに思い付かなかったみたいだけど」
「…アイツはそんなの関係なしに力が強いんだろ」
「成る程ね。有り難うまた幾つか作ってみるよ」
「まあ、頑張んな。俺はとりあえず皆に挨拶してくるとするさ」
俺はワイズにそう言いながら皆が集まって居る方に足を向けます。グラトが説明していれば何の問題もなく、受け入れてもらえるとは思うんですけど。
「おーいグラトー、何やってんだ?」
「んー?おうオルド何って昨日採ってきた芋を植えるんだよ。土の軟らかい所に埋めると増えるんだって長老が言ってたからな」
グラトと他の人鬼達はさっきのワイズの作った道具を使って、等間隔に掘った穴に芋をポキポキ折って土を軽く被せて次の穴にまた芋を入れてとかなりの数の芋を埋めています。
「ホントにそんなので増えるのか?」
「長老が言ってたからな。それに前に食い残しの芋を捨ててた場所にも幾つか芽が出てるのが有ったから、埋めればもっと出るだろ」
覗きこんだ俺に人鬼の皆は最初、一歩引いて警戒してましたがグラトがちゃんと話をしていたみたいで何もしてきませんでした。尻尾とか耳とかは引っ張ったりしてましたけど、主にチビ供が。
「やめろ、触るな、引っ張るな!!撫でるな!着てるんじゃなくて直接生えてんだ!!やめろクソガキ!」
「子供らに対してクソガキは無いんじゃないかねぇオルド」
人鬼になった雌3人は見た目はほとんど人間なんですがグラトやワイズに比べて少し短い角が額とこめかみの間に左右一本づつ生えています。髪の毛は3人とも肩にかかるくらいの長さのを蔓か何かで括っています。色は赤っぽい黒かな。昨日は履いていなかった腰から下は蔓を編んだ物を腰に巻いています。
3人の内の胸も態度もデカイ1人が俺の前に進み出て腕を組んで胸を強調…じゃなくて睨んできてます。
「ならチビ達に俺を弄らないように言って聞かせてくれよ」
「仕方ないね。あんた達!やめな!オルドに悪戯するなら飯抜きにするよ!!」
雌の怒声一声でチビ供が俺から離れてワイズの方に走って逃げて行きます。しかもワイズにはちょっかいを出さずに大人しく座って話をし始めました。
全然態度が違うのには少しイラっとしますが、こっちに来ないなら良しとしますか。
「これで良いのかい?」
「…おう。他の奴等は何処だ?一応顔を見せておかないと勘違いされて襲われても困―」
「オルド!」
洞窟から燃えるような真っ赤な髪の人鬼が槍を片手に持ちながら出てきました。
「あいつみたいに」
「私、クインって名前を付けてもらったわ!意味は女王ですって!」
「また五月蝿いのが厄介な名前を…」
頭痛がしてきたのでまた一眠りしたくなってきました。クインの話を聞く前―
「私も狩りに連れて行きなさい!」
―に。…間に合わなかったみたいです。




